人材確保・育成

建設産業の人材確保・育成に係る現状と課題〈中間報告〉

建設産業の人材確保・育成に係る現状と課題〈中間報告〉

一般財団法人建設業振興基金
建設産業共同教育訓練協議会
職業訓練法人 全国建設産業教育訓練協会
富士教育訓練センター

 当基金は、次の趣旨により、今秋に建設産業界としての体系的な建設技能労働者・技術者の確保・育成に関する方針をとりまとめるため、「建設産業人材確保・育成方針策定会議」(平成25年2月設置)し、これまでに3回にわたる議論を実施。また、都道府県建設業協会等関係機関の人材確保・育成に係る現状について、意見交換を実施し、中間報告としてとりまとめた。

 

 
富士教育訓練センターの概要

施設概要

位  置 静岡県富士宮市根原492-8
     (富士山の西麓。標高900m。)
面  積 敷地:約51,000㎡ 建物 : 約10,000㎡
実習施設 屋内:約1,500㎡  屋外 : 約25,000㎡

訓練実績


工業高校生を対象とした実習等 296名+出前講座 ※11校770名(平成23年度)
 ※工業高校に出向き2~6時間の鉄筋・型枠施工等の体験や安全衛生教育を実施
工業高校教諭を対象とした研修 14校26名(平成23年度)
東日本大震災の被災離職者を対象とした教育訓練 建設機械運転・除染作業従事者教育 約500名(平成23・24年度)
海外技能実習生の教育訓練 中国・ミャンマー・ベトナム 約150名(平成23・24年度)

まず「人間づくり」から始め企業の求める人材を育成

 富士教育訓練センターは、業界ニーズ、即戦力、安全管理を三つの柱とする教育訓練に特徴があります。平成9年4月から平成23年3月末までに全国で累計122,127名が教育訓練に参加しており、全国規模の「広域的職業訓練施設」として活用されています。単なる職業訓練としてではなく、現場に即した技術・技能はもちろん、社会人としてのマナー教育なども含めた「人づくり」プランとして利用者に好評です。
 完全機械化が困難な建設業界が求める人材は、高度な人的能力が欠かせません。また、単独作業よりも集団作業が主になるためコミュニケーションスキルやリーダーとしての統率力も必要になります。そのため長期間の合宿、共同生活を通してのコミュニケーション能力や、朝礼、挨拶訓練、5分前行動まで、建設技術者・技能者としての能力だけではなく「人間力」を形成するための教育訓練に取り込んでいます。

定着促進を進める動機付けの教育に注力

 はっきりした目的意識を持って建設業に入職する若者は稀少です。そのため、せっかく入職しても離職するケースが多く、教育訓練では第一に「動機付け」の教育から始まります。入職したばかりの若者に「仕事をしよう」「しっかり働こう」と、やる気を促す最も有効な方法は、自信を持たせることです。
 また、教育訓練における特徴の一つが、実習比率の高さです。技能コースの場合は70%以上に上り、まず自分の選択した職種で、徹底的に模擬実習を繰り返します。この段階で「安全に作業する」ことと、「お客様からお金を頂く、仕上げの大切さ」を学びます。これを経るに従い「自分でもやれるかも」と自信らしきものが芽生え、さらに実習終盤にはコース終了作品の作業に取り掛かります。
 この段階まで来ると、訓練生たちは「やる気満々」の顔つきになり、終了作品が完成すると、達成感で満たされます。「ものづくり」の面白さを知り、「自分でもやればできる」といった自信が湧いてくるのです。

 

 

 

さまざまなコースを設け職種に応じた専門能力を育成

 多能工育成のため、平成9年に「基幹技能者・多能工等育成基金」を創設しました。「建築基礎多能工コース」の場合、訓練日数は98日間、対象は実務経験0〜3年の初心者、とび・鉄筋・型枠施工の基礎知識を学び、仮設、鉄筋、型枠、コンクリート打設、鉄骨建方、足場、リフォームなどに関する技能を修得し、小規模の建設工事なら十分な人材が育成されます。
 土木施工管理コースでは2~3カ月に及ぶ訓練期間に、施設内で水路擁壁の土木施工管理基礎実習を行います。新入社員教育では土木工事の原点ともいうべき施工測量実習も必ず行います。訓練期間が終わると、実習で作った水路は壊してしまうのが一般的ですが、実習生からは自分たちの作ったものを壊さず残してほしいという意見もあり、リニューアルやリフォームをしながら残すことにしています。実習生にとってここでの実習は仕事の原点であり、現場に出て数年経ったときに、これを見ることで原点回帰にもなるのです。
 とび・鉄筋・型枠・内装施工多能工の技能コースは、長期にわたり実際の現場に近い環境で、景観や騒音を気にすることなく作業実習を行うことができます。
 近年は内装関係や設備関係のニーズも多くなり、内装施工多能工の受講者も増加しています。営業マンに対して、トラブルが多い水周り関係の技術教育を希望する企業も少なくありません。サイディングの下地や水周りの構造、これらを修繕するための方法や概算見積もりの出し方まで、さまざまな実習が用意されています。


それぞれの企業における同センターの活用事例

 カリキュラムの構築から人材育成まで、多様な企業ニーズに対応するので、さまざまな企業で同センターが活用されています。

鹿島建設株式会社

 土木系社員のポテンシャルアップと企業体質の強化を狙い、研修の事前課題に必然性を持たせ、班別演習・実習・発表に重きを置いたカリキュラムを作成。現場・設計・管理部門間のジョブローテーションに加えて、OJT・研修・資格取得を組み合わせることで、5年次までに基礎力を、10年次までに応用力を養成し、その後は管理能力を高める三段階の教育体系としています。「新入社員研修(土木技術実践研修)」として同センターで2週間、測量、CAD、作業計画~足場・鉄筋・型枠組立~写真管理の一連の工程を実習で学び、班別での実習や他社も含めた共同生活を通して社会人としての自覚を養います。

株式会社鈴木組/鈴木職業訓練校

 鈴木組は、大林組の協力会社として、主に建設現場における架設工事全般を請け負っています。平成6年4月に東京都知事より認定された「建築施工系とび科」の企業内訓練校「鈴木職業訓練校」を運営し、建設現場へ人材を送りだしています。4月の入社日に鈴木職業訓練校に配属され、1年間で計1,600時間、給料を受けながら自社の訓練校で、約500時間の学科で座学と、1,100時間の実技を受けることができます。そして翌年の卒業後、技能士補を取得してから現場に配属されます。同センターを利用することで集団実習や集合の研修など、同じ志を持つ仲間との生活を通してコミュニケーションも学ぶ機会になっています。

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