人材確保・育成

建設業の給与上昇 技能労働者の適切な賃金水準の確保

厚生労働省等行政施策の紹介・解説

 厚生労働省が毎月発表する毎月勤労統計調査から、建設業に就業している人の給与が上昇していることがわかりました。従業員5人以上の建設業の事務所が昨年支払った現金給与総額は月平均で37万1,213円と前年比で1.5%増(全産業では0.0%増)となりました。1月から12月までの毎月の推移を見ても、3月以外はすべて前年同月を上回る水準。国土交通省が業界に技能労働者の賃上げを求めてきた成果が出始めているようです。

他産業を上回る率で給与を引き上げ

 同調査から関連データを抜き出すと、00年以降、建設業の現金給与総額が前年を上回ったのは、00年、04年、06年、07年、11年で、13年は前年の1.9%減から一転、再び増加となりました。
 13年1月から12月までの間、建設業では3月を除いてすべて前年同月を上回りましたが、製造業では1月から6ヵ月連続、さらに8月も前年同月を下回りました。建設業や製造業を含めた全産業の合計では、2、3、5、7、8、9、10の各月がマイナス。これらのデータから、建設業では、他産業を上回る率で給与を引き上げている現状が見て取れます。

技能労働者への適切な水準の賃金の支払い

建設業の現金給与総額(月額平均)

 建設就業者の中でも特に現場で施工に従事する技能労働者に支払われる賃金をめぐり、国土交通省では13年4月公共工事の予定価格の積算に適用する公共工事設計労務単価を過去最大幅(全職種全国単純平均で15.1%、東日本大震災の被災3県<岩手、宮城、福島>で21.0%)引き上げるとともに、太田昭宏国交相が業界団体トップに対し、技能労働者の賃上げの実行を直接要請。その後も現場へのポスター提示を行うなど、引き上げた単価が現場の末端まで浸透するようさまざまな対策を講じてきました。
 厚生労働省の調査結果は、こうした取り組みの成果が表れ始めたことを裏付ける格好となりました。特に、職別工事では、給与の伸び率が業種平均を上回っており、東日本大震災を経て鉄筋や型枠といった専門職種では、不足する人材を賃上げを通じて確保しようとする動きが見てとれます。

建設業の発展のためさらなる賃金の引き上げを

 国土交通省は、この2月からさらに設計労務単価を全国平均で7.1%、被災3県で8.4%引き上げました。これに合わせ、予定価格の算定に最新単価を用いるよう公共発注機関に要請。民間工事の発注者にも、技能労働者への適正水準の賃金支払いに協力するよう求めています。また、建設業団体には、単価の上昇が確実に技能労働者の賃金引き上げにつながるよう、以下の措置を講じるよう要請しました。

1.技能労働者への適切な水準の賃金の支払い
2.インフレスライド条項の適用に伴う請負契約の金額見直し
3.法定福利費の適切な支払と社会保険等への加入徹底に関する指導
4.新労務単価フォローアップ相談ダイヤルの活用
5.若年入職者の積極的な確保
6.ダンピング受注の排除
7.消費税の適切な支払い

 技能労働者への適正賃金の支払いは、政府が最大の課題の一つとしている円滑な事業執行を確実なものとする上で不可欠です。また将来の建設業の担い手確保のためにも、再度引き上げられた設計労務単価を浸透させ、全産業平均を大きく下回る建設業の給与水準を適正化することが必要となります。

現金給与総額の伸び率(対前年同月比)※厚生労働省毎月勤労統計調査より作成

ページトップ

最新記事

最新記事一覧へ