基金の活動

活力と魅力ある建設産業の実現へ

若手職員が聞くこれからの基金に向けて

INTERVIEW|学生に「本物を伝えること」が大切 そのために本物を知る機会を

語り手:千葉県立市川工業高等学校 定時制 建築科 教諭 小島 聡 氏
聞き手:建設業振興基金

 一般財団法人建設業振興基金は1975(昭和50)年に設立され、本年7月16日に創立40周年を迎えます。当基金と関係の深い16名の有識者の方にインタビュー形式でこれまでの基金、これからの基金について貴重なご意見を賜りました。ご多忙を極める中、快くお引き受けいただきましたことに心から感謝申し上げます。40周年の先にある新しいステージを目指して、役職員一同、従前にもまして業務に励んで参ります。今後とも関係各位の一層のご指導、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。

将来の自分をイメージできる出前講座は「職業選択の日」

聞き手 先生には、当基金が事務局を務める協議会などへも出席いただき、人材確保・育成の分野でご尽力いただいております。


小島 聡 氏

小島 東総工業高等学校在職中に「出前講座」の相談をしたのが基金でした。この時、鹿島建設㈱の技術者より東京スカイツリー工事の話や、工事写真の紹介をしてもらいました。生徒たちも目を輝かせ、喜んでいました。それが基金とお付き合いをするようになったきっかけです。
 以降、出前講座で職業をリアルに体験できることを確信した私は、基金の紹介で当時のキャリアレッスン支援事業を活用させてもらい、その後も鉄筋、左官、地質、とびと、多くの団体・企業の出前講座を続けてきました。これらの報告書を届けた際に、内田理事長ともお目にかかることができました。これまでの出前講座で、印象深かったのは鉄筋の出前講座です。富士教育訓練センター(以下、富士)から鉄筋教材としてミニチュアモデルが届きました。これが組み立てられずに、千葉県鉄筋業協同組合に助けを求めた事から鉄筋組立の出前講座が始まりました。ミニチュアでの経験ではなく、実物大の鉄筋教材を使った1/1の体験は、生徒が職人と直接触れあいながら、より現物に近い工作物で、重さや質感、つくる工程やチームワークも体感できます。生徒たちにとっても将来の自分の仕事をイメージしやすくなり、出前講座は"職業選択の日"なのです。
聞き手 小島先生の活動を機に、インターンシップが広がっていったのですね。
小島 これだけの職種を校内で体験できる学校は他にないだろうと自負しています。
聞き手インターンシップの結果、生徒が経験を積み上げ、資格も取得し、親御さんもより安心できますね。

 

本物の素晴らしさを伝えたい 熱意ある先生を支援してほしい

 先生自ら、行政・業界団体と連携を図っておられますが、この5、6年の基金の印象はいかがですか。
小島 教育として、基金が人材育成への支援を行うのであれば、「教育現場」というのは訓練校も含めなくてはならないと思いますし、どこまでを職業訓練校と認識しているのかを感じるようになりました。
聞き手 先生は富士にも何度か足を運んでいただいておりますが、富士についてはどう感じておられますか?
小島 富士で見た向井建設㈱の新入社員研修、これには感銘を受けました。高校を卒業したばかりの30人が延べ3カ月余りの研修を受けるのですが、夏には立派な職人の顔になっている。年齢が近い先輩たちの「かっこいい姿」を見て高校生たちが訓練していました。基金職員が富士に出向するというのもいい。建設業界に必要な人材育成の現状が、より分かるのではないでしょうか。
 建設業は"人と人が交わり、ゼロからモノを作っていく"仕事だと思います。これは教育の現場も同じで、建設業と接点がない学校、建設現場を知らない先生がいくら熱意をもって生徒に教えても伝わりません。しかし、先生が建設業界を知ろうという熱意に、学校側の理解は低く、交通費を含めて費用は自己負担になってしまう。しかし、それでも富士へ出向く先生もいますが、そのやり方では広がりません。先生方への支援を仕組みとして確立できないでしょうか。これでは、生徒たちに本物を教えられないと思うのです。

 

担い手は工業高校だけではない 入職促進は視野を広げたアプローチを

聞き手 建設産業の入職者が少ない中、基金がお手伝いできることは何でしょうか。
小島 全国的にも工業高校の数が少なくなっている現状にあります。また、工業高校生でも、建設業に就職するのは半分程度、全員が就職するわけではありません。業界全体を考えたとき、入職促進の視野を広げてはどうでしょうか。例えば、普通高校生の1%でも建設業に目を向けてくれたら分母が大きい分、反響も多いはず。基金には、広報活動を工業高校に限定するのではなく、広い視野を持って考えてみていただきたいと思います。
 親御さんへ向けたプログラム構築も必要だと思います。小さい子どもたちは素直ですから、重機に乗れば「かっこいい!」と喜ぶ、その中にはオペレーターになりたいと思う子どもも出てくるはず。そういった"きっかけ"づくりのできるプログラムや、広報をしていくべきです。
 それから、これは余談ですが、建設現場で働く30~40代の職人の奥様達に、ぜひインタビューをして本音を聞いてほしい。本当に土日の休日がいいのか、勤務時間はフレックスでもいいのか。"女性の活躍"という側面として「職人を支える妻達」を取材してみると、いろいろな現実が見えてくるのではないでしょうか。建設現場を側面から取材するのも面白いと思うのです。
聞き手 今日は貴重なお話をありがとうございました。

 
千葉県立市川工業高等学校 定時制 建築科 教諭 小島 聡


略歴:工業高校建築科を卒業。大学で中学校・高校の教員免許を取得後、中学校の技術家庭科に着任後、海外青年協力隊としてガーナへ。ものづくりの本質を教えたいという気持ちが強くなり、1992年に専門学校の講師に。2000年より工業高校の教員となり、現在は市川工業高校の定時制で教鞭。全国高等学校建築教育連絡協議会事務局長として全国の工業高校と建設産業団体等とのパイプ役を担う。

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