基金の活動

活力と魅力ある建設産業の実現へ

若手職員が聞くこれからの基金に向けて

INTERVIEW|全員が経営者。結果を創造できる組織として 官民が連携を取れる活動に期待

語り手:(一社)全国建設業協会 会長 近藤 晴貞 氏
聞き手:総務部 総務課(取材当時) 内田 浩美

 一般財団法人建設業振興基金は1975(昭和50)年に設立され、本年7月16日に創立40周年を迎えます。当基金と関係の深い16名の有識者の方にインタビュー形式でこれまでの基金、これからの基金について貴重なご意見を賜りました。ご多忙を極める中、快くお引き受けいただきましたことに心から感謝申し上げます。40周年の先にある新しいステージを目指して、役職員一同、従前にもまして業務に励んで参ります。今後とも関係各位の一層のご指導、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。

夢のある建設業の再生のために『健全な経営環境』と『継続性』を確保

内田 昨年5月に、全国建設業協会(以下、全建)の会長にご就任され、1年が経ちますが、全建として現在、力を入れている事業や今後、広く展開しようとしている取組み等をお聞かせください。
近藤 東京建設業協会の会長時代には「社会貢献」と「継続性」を、また全建会長就任後は「夢のある建設業の再生」を根本とし、「そのためには...(どうするのか)」を考えてきました。国の方針、また国民の願いは、安全・安心の実現、そして国土強靭化です。このためにハードとソフトの両面にわたる社会資本整備が必要であるとともに、建設業が地域の安全・安心を守るという役割を果たすことが重要であり、建設業がその役割を果たすためには、『健全な経営環境』と『継続性』の確保が大切になります。


近藤 晴貞 氏

 担い手3法が改正されたことにより、理念の上では『健全な経営環境』は確保されたと思います。
 その上で、全建では、担い手3法の運用状況について、特に地方公共団体を含め対応について注視したいと考えています。これが今年度の全建の大きなテーマです。
 例えば、今年2月に国土交通省で積算基準を改訂していただきました。その中で一般管理費率について、非常に細やかな見方をしてもらい、大型工事だけではなく、地方の会員が該当するような小さな工事についても、比率を上げていただきました。全建では、地方公共団体の発注工事についても積算基準が適用されているか、運用状況について注視していかなければなりません。「経営環境の改善」は少しずつ進んできていると思います。
 もう一つの命題である『継続性』の確保については、我々の会員が自主的に活動していかなければなりません。中長期的に担い手を確保していくためには、技能労働者だけではなく技術者も含め、確保と育成の両方を考えなければなりません。そのために、今年度は「労働環境の改善・整備」について取り組んでいます。
 今年3月に全建は「将来の地域建設産業の担い手確保・育成のための行動指針」、「建設業における女性の活躍の場の拡大へのロードマップ」を策定しました。これに基づき着実な活動をしていきたいと考えています。

 

大切なのは「確保、育成、定着」入職をサイクルとして考えるべき


内田 浩美

内田 昨年10月に「建設産業担い手確保・育成コンソーシアム」が組成され、当基金が事務局として、人材確保・育成の取り組みを推進しています。この取組みにおいて、当基金に期待されることをお聞かせください。
近藤 建設業には、元請、下請、総合工事業といったすみ分けがありますが、基金には、その垣根を飛び越えて、それぞれをつなぐ潤滑油のような存在になってほしい。大いに期待しています。
内田 担い手の確保と人材育成についてはどうお考えになりますか。
近藤 「担い手確保」と「人材育成」、この2つは区別して考えるべきです。「担い手確保」は今現在の話、「人材育成」はすぐ将来に対する話ですから、両者に時間的ギャップがあることを認識した上で検討を進めることも必要です。
 まず「人材育成」があって、次に「定着」、その次には「地位の向上」なども入ってくるでしょう。これが新規入職者の増加につながるのであり、「担い手確保」へのサイクルになります。
 こうしたテーマの会議になると、年長者、役職者の集まりになりがちです。若い人がどのように考えて、どのように行動しているかが見えてこない。そこは基金の機動力を活かして意見を集め、実践的な取組みにしていただきたいですね。
内田 建設業が若者から敬遠される原因の1つに労働条件の悪さが挙げられますが、製造業並みの待遇となったら、若者は建設業を選択すると思われますか。
近藤 若者が建設業の将来に夢を持ち、建設業が将来を託せるような仕事になることが先決だと思います。労働条件が他の業界より劣る点もありますが、それだけの問題ではありません。国民に建設業がなぜ大切で、国の命題を実現する重要な仕事で、建設業が地域に対してどのように貢献しているのか、このようなことに理解を深めてもらえるように努力する。労働条件だけの問題ではありません。それと同時に、地域の活性化を促す役割をどのように果たし、企業はいかに合理化していくのか......。さまざまな課題を解決していくことが、建設業従事者の継続につながるはずです。そこは皆で意識を共有して取り組むべきだと考えています。
内田 基金は今年新卒の募集をしていますが、志望理由に「社会貢献」や「お役立ち」という言葉をよく聞きます。若い人が社会の役に立ちたいという意識は感じます。
近藤 そうですよね。労働条件だけではなく、そういったところも考えないと定着はしないでしょう。それと同時に地域の活性化につなげるためどのように続けていくのか、将来ずっと同じ予算で続けていくのか、また企業は合理化していけるのか。さまざまな課題を解決して継続できるようにしていかなければいけませんね。

 

基金に集まるデータは宝 持ち腐れないよう活用してほしい

内田 当基金は、関係者に信頼され、満足度の高いサービスの提供を目指しています。組織として、これらを実現させるための課題や努力すべきことをお聞かせください。
近藤 基金は、設立当初の資金調達などの趣旨から徐々に事業を拡大し、現在は、担い手の確保・育成にまで関与されています。会議などを実施する事務局を務めることも多いですね。各分野の意見をよく聞き、官民政学との接点としての役割を果たし、つなぎ役になってもらえるよう期待しています。
 特に地域の建設業との連携は大切ですから、うまく連携が取れる体制を築いてほしいですね。今後もさまざまな問題が生じると思いますが、それぞれの業界、それぞれの立ち位置の人たちと議論を交わす過程では、折を見て内容を精査した上で、情報をデータとして開示することを続けてほしいと思います。データや情報は宝のようなものですから、宝の持ち腐れにならないようにお願いしたいですね。
 ただ、最終的に物事を動かすのは、それぞれの立ち位置の人であることをよく踏まえる必要があります。作ったものを、実際に運用できるものにしていくことが大切です。どんなに立派な「箱」を作っても「魂」が入っていなければ意味がありません。

 

官民が連携を取れる活動に期待 全員が経営者の一人という感覚を

内田 一人ひとりが、建設産業界に対してお役に立てる人材であるためには、どんな姿勢であるべきでしょうか、期待されることをお聞かせください。また、近藤会長の思われる魅力のある組織、理想の人材像などもお聞かせください。
近藤 基金は、建設業の振興に寄与するために設立された団体ですから、業界の声をよく聞いていただき、実情や思いを把握した上で、皆さんの知識、技術を活かしてもらいたい。大本の趣旨はしっかりと守っていただけるようにお願いしたいですね。
 私自身が思う理想の人材像をお話ししますと、個々人はコマではありません。全員が経営者の一人という感覚で仕事に対処してほしいですね。そのような人材が多く育っていけば、「活動結果を実感できる組織」になれると思います。基金としても、是非そういった組織を形成してほしいですし、それが理想の組織ではないかと考えます。
内田 基金では現在、「お役立ち度UPキャラバン」を実施しています。基金と全建および各都道府県協会との関係について、私たちのあるべき姿や協力体制はどうあるべきかお聞かせください。
近藤 地域によって、かなりバラツキがあるのではないでしょうか。それぞれの地域のニーズに対して、きめ細やかな対応が必要です。「お役立ち度UPキャラバン」は素晴らしい取組みだと思っています。これを通じて、きめ細やかな対応に一層磨きをかけてもらえるといいですね。ぜひ続けていただきたいと思います。
内田 当基金は、官(行政)と民(建設業界)の橋渡し的な立場にありますが、期待されることをお聞かせください。
近藤 官民の連携、意思疎通というのは、非常に大切なことです。しかし、直接的な話は難しいと思います。基金には、官民の接点としての立ち振る舞いをしていただき、官民が連携を取れるような活動をしていただけるとありがたいです。大いに期待しています。
内田 本日は貴重なお話、ありがとうございました。

 
(一社)全国建設業協会 会長 近藤 晴貞


略歴:(一社)全国建設業協会会長/西松建設㈱代表取締役社長 執行役員社長
1978年東京工業大学大学院総合理工学研究科社会開発工学専攻修了、西松建設㈱入社(首都圏建築現場勤務)。2008年同社取締役常務執行役員関東支店長を経て2009年同社代表取締役社長執行役員社長。2012年東京建設業協会会長(2014年退任)、2014年より全国建設業協会会長。

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