基金の活動

活力と魅力ある建設産業の実現へ

若手職員が聞くこれからの基金に向けて

INTERVIEW|継続できる職業訓練体系の構築に 経営者は人を育てる覚悟をするべき

語り手:(職)広島建設アカデミー 理事長 福井 正人 氏
聞き手:経営基盤整備支援センター 由井 和也

 一般財団法人建設業振興基金は1975(昭和50)年に設立され、本年7月16日に創立40周年を迎えます。当基金と関係の深い16名の有識者の方にインタビュー形式でこれまでの基金、これからの基金について貴重なご意見を賜りました。ご多忙を極める中、快くお引き受けいただきましたことに心から感謝申し上げます。40周年の先にある新しいステージを目指して、役職員一同、従前にもまして業務に励んで参ります。今後とも関係各位の一層のご指導、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。

由井 当基金を知ったきっかけをお聞かせください。
福井 20年も前のことですが、当時の「後継者研修(現在の経営者研修)」に参加しました。昨年は同研修において講演もさせていただきました。


福井 正人 氏

 私たち職業訓練法人広島建設アカデミーでは、専門工事業者が協力して職業訓練法人を立ち上げ、実習施設等を保有しなくても会員企業の加工場等の活用や、公共施設の会議室等の借用等により、地域でも継続が可能な職業訓練を実施しています。恵まれた施設を有する富士教育訓練センターのような職業訓練法人は全国各地にありませんが、地域ごとに汗をかく覚悟を持った経営者等がいれば、全国どこでも同じように十分な職業訓練の仕組みをつくることができるわけです。基金は、そんな当アカデミーの取り組みに関心を持っていただき、昨年は『建設業しんこう』の取材やヒアリング等も受けました。

 

社員は自分の子どもと同じ 親父なら教育にお金を掛けるべき


由井 和也

由井 当基金では、昨年「建設産業担い手確保・育成コンソーシアム」を立ち上げ、全国に地域ごとの教育訓練体系の構築(地域連携ネットワーク)を進めています。今後、当基金はどのように関わっていくべきでしょうか。
福井 担い手確保・育成について、経営者の皆さんも何らかの危機感を持っています。当アカデミーの方針・運営体制等について機会があるごとに説明をするのですが、自分が何をすればいいのか、どう汗をかいたらいいのかも分からない経営者も少なくはありません。やはり最初の一歩が難しいようです。そこを基金が背中を押してあげてほしい。
由井 基金としても先進的な取り組みに関する情報発信や交流の場の構築等、さまざまな支援を拡充して取り組んでいかなければなりませんね。
福井 職業訓練の効果を、経営者がどう理解しているかも重要です。
由井 全国の公共職業訓練施設では、特に野丁場の技能者育成メニューがほとんど実施されなくなってしまいました。これを補うためには、民間の教育訓練体系の構築が喫緊の課題だと思います。そのためには、送り出す企業側にOFF-JT職業訓練の重要性、効果を理解してもらって、各地域に合った教育訓練の実施方法を検討していくことが必要ですね。
福井 若い社員は、経営者にとって自分の子どもと同じです。親父が教育にお金を掛けるのは当たり前のこと。当アカデミーでは、「地元の担い手は、自分たちで育てる」という思いを持った経営者が集まって職業訓練をしています。それが採用した会社の責任であり、やはり経営者自らが汗をかこうと自主的に動かなければ、前進はしないでしょう。
 個社で継続的に職業訓練を実施することが難しくても、10社20社が集まれば、毎年、新規採用者が何人かはいるはず。教室なんかは各地区の公共施設等で賄えます。お金を掛けない形でやればいいだけです。
由井 アカデミーのような取り組みが全国に広がるよう、我々も地域の意欲ある取り組みを支援してまいりたいと思います。
福井 地域連携ネットワークのような仕組みを全国に広げていくべきです。ただ、これが1、2年で終わってしまうのではなく、地域で継続的に運営されていくよう、しっかりと支えていくのが基金の役割だと思います。期待しています。

 

技能者を育てている企業に 適正な評価をしてほしい

由井 人材育成という観点で見ると、入職時の職業訓練と併せて、技能者の評価制度も重要ではないでしょうか。
福井 技能者にとって目指すべき目標の一つが登録基幹技能者であり、基金には同制度を事務局として運営してもらえているのはありがたいですね。ただ、業界内でも登録基幹技能者の本当の意味を分かっている方は少なく、厚生労働省の技能士資格とごっちゃになっている人もいまだに多い。登録基幹技能者の本当の活用方法を明確にできるよう、基金にも国土交通省へ働きかけていただきたいです。
由井 昨今、徐々に評価する発注者、工事も増えてきましたね。
福井 先ほども申し上げましたが、社員を育てていくことは経営者の責務です。一方、社員自らも一人前になるよう学習を継続していかなければなりません。企業が人材を育成するにも、スキルアップを図る技能者に対してそれに見合った処遇をするにもコストが掛かります。これを発注者や元請に理解いただき、彼らを育て、抱える企業が適正に評価される仕組みが必要です。それができない企業は、残念ですが退出いただくしかないのではないでしょうか。基金には、これらのことを踏まえ、行政と企業との懸け橋になることを期待しています。
由井 本日は、貴重なお話をありがとうございました。

 
(職)広島建設アカデミー 理事長 福井 正人


略歴:昭和45年、広島県生まれ。躯体工事、建築一式工事をメインとする福井建設㈱の三代目社長。多職種の専門工事業者が共同で教育訓練を実施する職業訓練法人広島建設アカデミーの理事長として若手技能者の育成に努める。同アカデミーでは地元の工業高校とも連携し、熟練技能者を学校に派遣し、生徒に対して実技指導する出張教育も実施している。他に協同組合中国建設専門工事業協会理事長、中国建設躯体工業連合会会長も務める。

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