基金の活動

活力と魅力ある建設産業の実現へ

若手職員が聞くこれからの基金に向けて

INTERVIEW|相続や事業承継問題の相談窓口開設など さらなる"お役立ち度"アップへ

語り手:顧問弁護士 浜中 善彦 氏
聞き手:金融・経理支援センター 金融支援担当部長 宮嵜 徹

 一般財団法人建設業振興基金は1975(昭和50)年に設立され、本年7月16日に創立40周年を迎えます。当基金と関係の深い16名の有識者の方にインタビュー形式でこれまでの基金、これからの基金について貴重なご意見を賜りました。ご多忙を極める中、快くお引き受けいただきましたことに心から感謝申し上げます。40周年の先にある新しいステージを目指して、役職員一同、従前にもまして業務に励んで参ります。今後とも関係各位の一層のご指導、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。

基金との関わり


浜中 善彦 氏

宮嵜 まず、基金とのお付き合いの経緯からお聞かせください。
浜中 銀行に30年勤務して、定年退職後弁護士に転身しました。金融と法律に明るいという理由から、1999年に基金が「下請セーフティネット債務保証事業」を立ち上げる際、契約書や説明書などの作成をお手伝いしました。それがご縁で、それ以来基金の顧問弁護士も務めています。
宮嵜 建設業との接点はいつごろからですか。
浜中 銀行員のときは、大企業、さまざまな業界、業種との取引を経験しました。しかし、建設業とは接点がなく、弁護士になってから基金の仕事を通じて建設業に関わる相談を受けるようになりました。それと、東京地方裁判所の調停委員を6~7年務めましたが、そこで扱う案件で最も多かったのが建設関係の事件でした。

 

下請セーフティネットの継続を


宮嵜 徹

宮嵜 「下請セーフティネット債務保証事業」について、いかがお考えですか。
浜中 融資までの複雑な流れをシンプル化したよくできた構造だと思います。これまでなかなか融資が受けにくかった中小建設企業も、金融機関から融資が受けやすくなりました。銀行の融資基準からすると、中小建設業というのは大変融資しづらい業種なんです。例えば、スーパーゼネコンならストックがありますから、一定の信用が得られ融資が受けられます。ところが中小の場合、決算書があまり信用できないし、担保になる設備等もないため、債権保全面で問題があるため融資が難しいんですね。貸し手も借り手も、お互いに慣れていないというのも大きいと思いますが、企業は「どんな書類を用意して、何を説明すればいいのか」手順が分からない。銀行は、「決算書が信用できないのに、どうやって企業の実態をつかめばいいのか分からない。そんな状況で、融資などできるわけがない」。これがこれまでの状態でした。セーフティネットは、「基金が保証してくれるなら」と金融機関が安心して、建設業者に融資してくれるようになったのです。とてもいい制度だと思います。今後も何らかの形で継続してくれたらと思います。
宮嵜 建設業界と金融業界の実情をよくご存じの先生ならではのご意見をありがとうございます。

 

金融機関と中小建設業とをつなぐ 中継機関としての活躍に期待

宮嵜 今後、基金は金融支援事業をどう展開していくべきか、期待されることをお話しください。
浜中 セーフティネットは銀行だけでなく、金融機関の対象を増やしたことで、さらに使い勝手が良くなりましたね。長年制度に携わってきましたが、以前よりも本当にお金が入用な企業にお金がいくような制度になってきましたし、今後も何らかの形で残してほしいと思います。というのは、建設業は大手があればいいという業種ではなく、地方の中小建設業者は、なくてはならない地域のインフラだからです。
 また、下請債権保全事業につきましては、補償の審査委員会の委員長も務めさせていただいています。元請が破綻した場合にファクタリング会社が下請に対して保証し、その損失補填分を助成するという制度ですが、この仕組みがあったために連鎖倒産を免れたというケースがずいぶんあると思います。
 やはり金融と中小建設業の接点に基金が立って何らかのサポートをするというシステムは、今後も考えていく必要があるんじゃないかと思います。

 

若手だけでなく 高齢者問題にも対処してほしい

宮嵜 長年基金と関わってきて、あるいは弁護士さんとして、建設業界では今後どんなことが問題とお考えでしょうか。
浜中 そうですね。弁護士や調停委員の仕事を通して強く感じるのは、業界の高齢化にどう対処していくかということです。中小建設業の大半はオーナー企業ですが、オーナーの高齢化で、いろいろな問題が生じてきています。例えば「相続や事業承継問題」などです。「持ち株を誰に、どう相続させるか」、「後継者をどうするか」など、これまでなかった新しい問題が出てきています。こうした悩みを、一体誰に相談したらいいのか、困っている人が大勢います。
宮嵜 高齢化の進行に伴って、事態はどんどん深刻化していますね。
浜中 基金がこういった新しい問題に対して具体的な道筋を示してあげることも必要だと思います。例えば、基金が相談窓口を設けてはいかがですか。メールなり電話なりでアドバイスができるようにしてあげてほしいと思います。具体的な道筋を示してあげられるような組織になれば、基金が標榜する"お役立ち度"は一層高まると思います。これまで、基金では若手の確保・育成に力を入れていらっしゃるようですが、若手だけでなく高齢者の問題にも対処してほしいですね。昔に比べて基金の役割も随分大きくなっています。すでにいろいろ取り組んでいらっしゃることは重々承知していますが今後も一層力を入れて取り組んでいただきたいですね。
宮嵜 本日は基金への貴重なご意見をいただき、改めて建設業に対する基金の責任の重さを感じます、ありがとうございました。

 
下請セーフティネット債務保証事業
 
公共工事の請負代金債権等を担保に、事業協同組合等が中小・中堅建設企業に対し簡易・迅速に融資を実行

保証人・不動産担保なく、かつ工事途中において融資を受けることが可能であり、中小・中堅建設企業の資金繰り改善に寄与
 
 
顧問弁護士 浜中 善彦


略歴:1959年東大法学部卒、富士銀行入行。1994年同行定年退職。同年、司法試験に合格し、以来弁護士として活躍。取扱事件は会社法、企業金融、債権保全、労働法。

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