歴史資料

温故知新 人の心に芸術を|大原美術館

写真提供:大原美術館

大原美術館

 昭和五年(一九三〇年)、昭和恐慌の真っ只中に、日本で最初の西洋近代美術館である「大原美術館」は誕生した。
 美術館の開館は、倉敷を拠点に活躍する事業家・大原孫三郎が、志を共にした画家・児島虎次郎の死を悼み、故人の作品と生前に収集したエル・グレコの「受胎告知」やモネ、ゴーギャンなどの作品を公開したいという友情を記念するものであり、また「広く社会に意義あること」を願ったものでもあった。
 白壁の蔵屋敷が並ぶ倉敷美観地区に溶け込むギリシャ神殿風の建築は、薬師寺主計(やくしじかずえ)の設計によるもので、粉砕した石灰石を着色したセメントに混ぜて塗る人造石塗りの手法で、不況の中でもコストを抑えた工夫が施され、耐久性に優れた重厚な建築物となった。
 開館当初はゼロの日もあったという来館者も、開館八〇周年の際には約三三〇〇万人に達し、今もなお二人の志は、芸術を通して多くの人の心を育み、生きる力を与えている。

正式名称/大原美術館
所在地/岡山県倉敷市中央1-1-15
設計/薬師寺主計
構造/鉄筋コンクリート
竣工/1930年(昭和5年)

 

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