地元ゼネコン数社が連携して導入
取引先企業のCI-NET利用拡大を模索
㈱本間組
安全品質環境部
ISO室長
渋井 鉄司氏 |
㈱本間組
管理本部経営企画部
情報システム課長
吉川 直明氏 |
新潟を本拠地に、全国各地で建設工事を請け負っているのが、中堅ゼネコンの㈱本間組である。同社がCI-NETを導入・稼働させたのは2012年9月。地元のゼネコン2社と連携しての導入だったが、現在はどのような状況であろうか。今回は、導入の検討スタート時から導入までの担当であった同社安全品質環境部ISO室長の渋井鉄司氏、現在の担当者である管理本部経営企画部情報システム課長の吉川直明氏、さらには取引先を代表して㈱高助の建材事業部課長の揖斐孝浩氏にお集まりいただき、導入効果や課題、展望などについて伺った。
本間組本社(新潟市)
CI-NET事前講習会
新潟の中堅ゼネコン3社が連携してCI-NETを導入した背景には、地方においては取引先が共通することが多く、連携することで得られるメリットが大きいと判断したことが1つに挙げられる。導入を要請する取引会社の選定については、現状を把握するため他社と合同で2012年3月、128社に絞り込んでアンケートを実施した。アンケートは、社内の電子商取引の現状やCI-NETに関する認識、導入の意思などを探ることが最大の目的だった。アンケート結果を分析して見えてきたのは、以下の通り。
CI-NETを「導入済み」と回答したのは全体の42%。大手ゼネコンと取引のある会社が大半であり、その約80%がスーパーゼネコンと取引のある会社だった。利用していない業者で「今後、導入の意思がある」のは5%。95%は「未定」と回答。「未定」の理由としては、「元請から要請・依頼がない」49%、「仕組みが分らない」21%、「必要を感じない」7%、「システムがない、ITに精通する者がいない」6%、「費用対効果が不明」2%。
㈱本間組 渋井室長
本間組が初期導入時の取引会社に選んだのは14社だった。渋井室長はこう振り返る。
「まず、建築系の外注協力業者で当社と比較的取引の多い会社を14社選定しました。既に導入済みの会社が10社、導入していない会社が4社です。建築系の業者で始めた理由は、躯体から仕上げ、設備などの業種が多いこと、それと私が建築出身ということもあって、建築分野のことを把握していることも理由の1つでした。より多くのメリットを得るカギは電子化率の拡大にあると捉えているため、現在は土木系の取引会社も加えて計35社になりました」
導入に先立っての事前講習については、連携した3社で共同開催とし、既に導入済みの会社と、新しく導入する会社を区別して行った。それぞれ2回ずつで、45社71名が参加。特に重視したのが、これから導入する会社に対する教育。「CI-NETとは何か?」「操作法」「導入に関する手続き」など。講習会への案内は各社が独自に行い、参加を促していったそうだ。
そして、実際にCI-NETが稼働したのが、2012年9月。それまでと同じ紙ベースの契約とCI-NETを利用した電子契約が混在する結果になったが、その点は、やりにくい面はなかっただろうか。吉川課長にお聞きした。
「申請部門の業務のやり方はこれまでと大きな変化はありません。電子契約に利用するデータは、CI-NET対象の取引先を自動判別しASPサービスに送信できるよう基幹システムに機能を追加しました。また、社内控えとして紙でも出力して保管しています。混在していますが、特に問題はないです」
㈱本間組 吉川課長
導入するに当たって、不安はほとんど感じなかったそうだ。
「CI-NETについては、以前より情報として見聞きしていたので興味がありました。一歩踏み出せなかったのは、導入メリットに関してはおおよそ理解していましたが、自社にとっての具体的なものが見えてこなかったから。スーパーゼネコンさんの導入事例はありましたが、金額の単位が違うのであまり参考になりません。
今回は地元の中堅ゼネコン3社が連携して導入しましたが、1社だけでは躊躇したかも。1社では広がっていかないものでも、複数の会社が連携すればスケール感が出て、付加価値が生まれやすい。1プラス1が3にも10にもなる可能性があります」(渋井室長)
導入メリットについては、「コンプライアンス」や「経費の削減」など多々あるが一言で言えば「生産性の向上」だろう。
「始めて軌道に乗るまではいろいろ苦労はありますが、一度導入すれば、後はそのメリットをいかに拡大させるか。現実的に途中で止めることはあり得ないので、前進あるのみ。時代の流れから見ても電子化の流れはどんどん速まると思うので『いつかは導入するものなら早めにやった方がいい』と思いますね」(吉川課長)
㈱高助 建材事業部課長 揖斐孝浩氏
では、取引会社はCI-NET導入をどのように思っているのだろう。新潟県で建材を扱う高助の揖斐課長はこう語る。
「私どもが導入したきっかけは、スーパーゼネコンさんから要請があったからです。実際、CI-NETを導入した後も完全にペーパーレスになったわけではなく、CI-NETを導入していない会社とのやり取りもありますから、今も紙と混在する形です。数社のゼネコンさんが使っているそれぞれの仕様書や請求書に合わせるなど、これまでのやり方を変えざるを得ない状況もあります。ただ、自社の判断だけでは導入していないと思いますので、依頼主さんからの要請での導入は正解だと思います。これからの新たな展開の軸としてパワーアップしていきたいですね」
最後に、本間組のお二人に、今後に向けて振興基金に対する要望、期待について伺った。
「ASP(アプリケーション提供業者)に対して、より安価な料金プランを検討してもらえるようにお願いしたい。特にデータの保管料金が安くなれば経費の削減効果をより実感できると思うのでぜひ実施してほしいですね」(吉川課長)
「せっかく電子化するなら、ほかの付加価値も合わせて提案してもらえると、もっと導入企業が増えると思います。安全関係や施工体制台帳など…。現在、振興基金のサイトで会社の企業コードが掲載されていますが、社名と住所、電話番号くらいしか情報がない。これはもったいないですよ。これに加えて会社の概要とか、得意な分野の情報などの付加価値があるといい。当社は県外の仕事も多いので、そういった情報があれば頼りになります」(渋井室長)