全国建設業協会の社会保険加入促進計画の推進状況
(一社)全国建設業協会 労働部
当協会では、適正な賃金水準の確保や社会保険加入促進を推進するための「取り組み強化キャンペーン」として、以下の活動を行っている。
1.取り組み強化キャンペーンの実施について
「全建社会保険加入促進計画」の推進及び「適切な賃金水準の確保」の趣旨の徹底を目的として、以下の取り組みを実施した。
①取り組み強化セミナー等の実施
全国建設労働問題連絡協議会等において、セミナーや説明会を3回実施
②取り組み強化キャラバンの派遣
本会の役職員が各都道府県建設業協会を訪問して要請
③取り組み相談窓口の設置
本会労働部に取り組み強化キャンペーンに係る相談窓口を設置(平成25年7月20日)
④取り組み強化キャンペーンのホームページの開設
本会のホームページ内に開設
2.取り組み強化のための調査等の実施
昨年9月に社会保険の加入状況についてアンケートを行い、①健康保険の加入状況、②年金保険の加入状況、③雇用保険の加入状況について、会員企業、一次下請企業、現場労働者のそれぞれの加入状況を調査。
現場労働者の加入状況をブロック別でみてみると、雇用保険の場合、大都市部を含む「近畿」「関東・甲信越」「九州」「東海」で比較的低く、その他の「中国」「北海道」「東北」「北陸」「四国」では、高い加入率となっている。
3.今後の取り組み
本会では、平成27年2月に「将来の地域建設産業の担い手確保・育成のための行動指針」を策定し、社会保険加入促進に関し、より積極的に加入を進めていくこととしている。
[調査規模等]①44都道府県建設業協会から回答
②下請企業を含めた現場労働者数 約45,000人(3保険平均)
③調査依頼企業数1,410社、回答企業数1,064社(回答率)75%
[調査時期]平成26年8月1日現在の状況
[回答企業の事業内容]土木380社、建築76社、土木建築596社、その他12社
雇用保険の加入割合(現場労働者ベース)
【地域ブロック別比較】
「社会保険加入促進要綱」について
(一社)日本建設業連合会
日本建設業連合会(日建連)はこれまでも建設技能労働者の処遇改善には社会保険未加入対策が不可欠であるとの認識のもと、平成24年4月に他団体に先駆けて「社会保険加入促進計画」を策定し、社会保険加入促進に積極的に取り組んできたが、国土交通省が目標年度とする平成29年度までの5年のうち既に半分が経過した現在、特に民間事業の加入率については依然として低いと想定され、さらには地域、職種による格差が大きいなど、未だ芳しい状況にはなっていない。
また、政府の経済財政諮問会議においても民間議員から、建設技能労働者の社会保険の加入率は極めて低く、こうした労働環境の是正を早急に進めるべきであるとの指摘がなされたところである。
こうした状況から、日建連は担い手確保・育成対策の一環として、新たに「社会保険加入促進要綱」を策定し、平成29年度以降に工事現場における全ての労働者が社会保険に適正に加入している事を目標として、今年4月から適用。これまでの取り組みをさらに加速させることとした。
民間発注工事においても、法定福利費を適正に計上した金額での見積及び契約締結を徹底する。一次下請に対し、法定福利費を内訳明示した標準見積書の提出を求めることや、本年度以降は社会保険未加入の一 次下請とは契約しないこと、来年度以降は一次下請に対する指導を通じて未加入の二次以下の下請とも契約させないこと等も盛り込んだ。
社会保険への加入を促進するためには、行政、元請企業、下請企業等の関係者が一体となってそれぞれの役割を果たすことが肝要であり、日建連会員企業は、建設業界のリーディングカンパニーとして、足並みをそろえ本要綱に基づき積極的に取り組むものとする。
▶ 社会保険加入促進要綱
「標準見積書作成支援ソフトウェアの配布について」
(一社)日本型枠工事業協会
【法定福利費別枠表記】
型枠工事標準見積書作成用ソフトウェア
日本型枠工事業協会では、若年層の入職促進策の一つとして社会保険未加入対策を捉え、社会保険加入に必要な法定福利費を内訳明示した標準見積書の活用の徹底を図るため、会員企業がより分かりやすく標準見積書を作成できるソフトウェアを開発し、今年2月に全会員に配付をした(会員外の希望者には販売)。
本ソフトウェアはごく少ない入力項目(労務単価、労務日数)から事業主の負担する法定福利費を算出し、個別工事項目と数量、工事項目を実施する歩掛り(又は人工数)から当該工事に係る法定福利費を算出し、別枠で表示される見積書を作成するものである。
協会では平成22年から毎年雇用実態調査を行っており、昨年の調査で今後10年間の就労者数をシミュレーションした結果、中心年齢層が50歳以上へ移行。65歳以上が現在の1.2倍、割合も12%に上昇し、平均年齢は48歳から52歳に上がると予測している。
若年層の取り込みが進まなければ、調査を開始した当初、1社当たりの平均就労者数を100とした場合、10年後は66.3まで減少する見通しとなった。
調査では、標準見積書の活用状況についても質問したが、元請に標準見積書を提出していた企業は35%にとどまり、法定福利費を確保できた現場が一つもないと答えた企業は51%に上った。
協会では今回開発したこのソフトウェアを通じ、来年度の調査ではせめて標準見積書の活用率を現在の35%から大幅に引き上げることを目標に掲げ、標準見積書活用の徹底を図っていきたい。