企業経営改善

建設業の経営多角化

建設業の経営多角化 先進事例

株式会社 山本組 山本 斉 社長
株式会社 小坂田建設 小坂田 英明 社長
瀬戸建設 株式会社 瀬戸 良幸 社長

 建設投資の減少や景気低迷など、建設業を取り巻く経営環境が厳しさを増す中で、新分野への進出によって経営多角化を進める企業が増加している。国による新分野進出支援は1990年代後半から始まり、2003年には、建設業の農業分野への進出事例が国土交通省の「地域における建設産業再生のための先導的・革新的モデル事業」として取り上げられた。2004年には、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、環境省、国土交通省を構成員とした「建設業の新分野進出を促進するための関係省連携会議」が設置された。
 こうした経緯の中で、当基金でも建設業の新分野進出・経営多角化を支援している。今回は、「農業」「地域サービス業」「介護福祉業」への進出を果たした3つの企業の先進事例を紹介するとともに、その現状と課題を考えてみたい。

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時代のニーズを先取りし
2002年より「介護・福祉施設」事業に参入

瀬戸建設 株式会社 神奈川県小田原市、1955年設立、資本金9,000万円、従業員数63名(介護関連13名含む)
http://www.setoken.co.jp/

事業の背景

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 約15年前から始まった売上高の減少、競争の激化など厳しい経営環境下の連続による状況から、瀬戸建設では、新分野進出の検討を始めた。2000年に「介護保険制度導入」が決定したのを受け、介護施設関連の訪問とヒアリングを実施。小田原市内での土地企画提案のプレゼンテーションにおいて、グループホームを提案した。実際に参入したのは2002年から。医院+デイサービス+高齢者専用賃貸住宅の「在宅支援ハウス」だった。在宅支援ハウスとは、賃貸共同住宅の中で、介護施設や老人ホームと同等のサービスを提供する事業のこと。見守り・入浴サービス、ヘルパー支援、掃除・洗濯・買物代行などの内容でありながら賃貸住宅並みの価格で提供し、地域住民の支持を得たという。
 「なんでもやる建築分野から事業を絞り込む中で『商品力の模索』を行い、そこから医療・福祉・介護分野への研究課題に取り組み始めました。」(瀬戸良幸社長)

事業の概要

 現在、老人ホームなどで提供されている介護サービスには、デイサービス、宿泊、医療、給食などがあるが、瀬戸建設は、賃貸の共同住宅においても同種のサービスを受けられるシステムを構築し、高齢者向けの住宅の企画・提案・運営・総合建設事業に取り組んでいる。住宅建設で培ったノウハウや設計事務所での経験をもとに開放感のある心地よい施設づくりに活かしている。瀬戸社長はこう語る。
 「介護制度ができて12年、私どもは11年間この事業をやってきました。当時は施設もケアマネージャーと一緒になって作り上げてきました。現在は、営業職(企画・開発担当)が中心となって事業計画書を作成しています。金融機関・運営面でのリスクなども包括して、地主・運営・設計・施工者4者の合意形成が重要だと思います。」

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今後の展望

 近年は、土地の有効活用の中で、農業休耕地・業種転換のほかにも、既存の保養所・寮・旅館から介護関連施設への提案が増え、規模に応じた用途、地域ニーズ分析からの提案例があるという。既存の空き店舗を、活用した子供のデイサービス・グループホームなどへの施設転用を神奈川県内で開始している瀬戸建設。介護・福祉の拡がりを推進していく意向である。

◆取材ノート

 住宅メーカーの下請、公共土木工事、採算の見込めない低価格入札から手を引く、経営危機に直面した瀬戸さんの決断です。そして、折しも導入された介護保険制度に高齢者福祉市場の成長を確信し、高齢者福祉施設の企画提案と施工請負という分野に経営の狙いを絞ったとのこと。住宅も手がけ、民間建築で磨いてきた技術力、建築設計者としてのデザインへのこだわり、地域社会や金融機関の信用など培ってきた建設業としての資源をすべて投入する。一方で、福祉施設運営の現場に社員をおくりこみ、次の企画のヒントを集めさせる。経験の少ない福祉分野で独自の企画・提案力を磨く工夫も怠りないようです。成長分野で「副業」を経営するのでなく、そこに「本業」の建設業として乗り込んで行く。これが最も勇気のいる瀬戸さんの決断だったのではないでしょうか。


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