はじめに
「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」(平成21年法律第96号。以下「金融円滑化法」といいます。)が平成24年度末に期限切れとなります。金融円滑化法対象の金融債務を有する企業においては、金融機関から引き続き円滑な資金調達を行っていくためにも、早い段階から実抜計画(実現可能性の高い抜本的な経営再建計画)の策定等により計画的に経営改善を進めていく必要があります。
法律の概要について
金融円滑化法は、平成20年秋以降の金融危機・景気低迷による中小企業の資金繰り悪化等への対応策として、平成21年11月30日に可決・成立しました。当初は、平成22年度末までの時限立法でしたが、その後、2回に渡って延長され、平成24年度末まで延長されました。
具体的には、金融円滑化法に基づき、金融機関は、中小企業又は住宅ローンの借り手から申込みがあった場合には、貸付条件の変更等を行うよう努めることとされております(法第4条及び第5条)。また、金融機関は、その責務を遂行するための体制を整備することが義務付けられております(法第6条)。加えて、金融機関は実施状況の開示(法第7条)と当局への報告及び体制整備状況等の開示(法第8条)が義務づけられております。
金融円滑化法の期限切れにより、これらの金融機関への義務づけがなくなることとなります。
法律の効果について
金融機関が実行したリスケ等は計280万件強となっております。また、金融円滑化法により条件変更等を受けた事業者は30万~40万社、そのうち、要管理先又は破綻懸念先は5万~6万社と言われております。(なお、建設企業に対し、金融機関がリスケ等を実行した件数については、公表されている数字はございません。)
倒産件数は2009年前半がピークであり、金融円滑化法が成立した2009年12月以降徐々に減少しております。(08年度は3,556件、09年度は3,325件、10年度は3,077件、11年度は3,021件の建設業倒産が発生。)
資金繰り判断は2009年1-3月を底として、金融円滑化法が成立した2009年12月以降徐々に回復しております。
金融円滑化法の期限切れ後は、以上の状況が急激に変化する恐れもあります。
今後の対応について
金融円滑化法の期限切れへの対策として、内閣府・金融庁・中小企業庁は「中小企業金融円滑化法の最終延長を踏まえた中小企業の経営支援のための政策パッケージ」を4月20日に策定しました。本パッケージの内容は、「金融機関によるコンサルティング機能の一層の発揮」、「企業再生支援機構及び中小企業再生支援協議会の機能及び連携の強化」及び「その他経営改善・事業再生支援の環境整備」です。
詳しい内容はこちらをご参照下さい
http://www.fsa.go.jp/news/23/ginkou/20120420-2/01.pdf
また、帝国データバンクの調査によると、金融機関の姿勢が「厳しくなっている」とする企業が35%となっており、徐々に期限切れが近づくことの影響が出始めていると思われます。
金融円滑化法対象の金融債務を有する企業においては、実抜計画の策定等が必要とされておりますが、金融円滑化法により貸付条件の変更等がなされた債務者のうち、5割が未だ策定できていないと言われております。金融円滑化法の期限切れに伴う金融環境の変化に対応し、引き続き円滑な資金調達を行っていくためには、建設産業に携わる企業の皆様におかれましても、実抜計画の策定等により、計画的に経営改善を行っていく必要があります。
経営改善計画の策定に当たっては、各種の支援等を活用していくことができます。具体的には、平成24年度には以下の通り国が実施する支援施策がありますので、是非ご活用下さい。(各支援施策の具体的内容については、参考HPをご参照願います。)
平成24年度 国が実施する支援施策