人材確保・育成

建設業経営者インタビュー

男女分け隔てのない採用で街づくりを担う人材を育てていきたい/建設業経営者インタビュー|豊蔵 享一さん(石川県)

株式会社豊蔵組
本 社 石川県金沢市長土塀
創 業 昭和27年2月
設 立 昭和39年12月
社 長 豊蔵 享一
社員数 80名

No.04:若手経営者インタビュー

社長 豊蔵 享一 氏 当社は昭和27年にスーパーゼネコンで仕事をしていた祖父が独立して創業しました。いまはゼネコンという位置づけですが、それまでは大手ゼネコンの下請けとして事業を行い、少しずつ事業を拡大させていきました。最近は土木の仕事が減ってきましたので、現在の売り上げは建築7に対して土木3ほどです。建築分野は官庁6に対して民間4の割合で、オフィスビルやマンションなど、全般的に請け負っております。依頼があれば一般住宅も行います。
 社員数は約80名。女性社員は技術者と事務職が各3名、計6名が在籍しています。
 私は15年前までサラリーマンでした。畑違いでしたが、家業を継承することに決めてから2年間は大手ゼネコンに勤め、その後長岡市にある銀行の電算センターで現場と営業を経験しました。2000年から当社で働き始め、社長に就任したのは2011年のこと。異業種交流会でネットワークを広げつつ、経営に取り組んでいます。

美しい建物の創造に携われる誇り

 現在、当社が請け負っているのは、金沢駅西口にあるシェルターの工事、商工会議所の新設工事、金沢市役所耐震改修工事など。
 ここ金沢では、古い町並みの保存を目的としたさまざまな建築制限が設けられています。たとえば、城を見下ろす高さの建物は許可されませんし、伝統的な景観を損ねる色づかいもダメ……。制限が多い一方で、美しい建物の創造に携われる誇りや、街づくりの一翼を担っている実感があります。これは何ものにも代え難く、社員一同仕事にも張り合いが出ます。金沢におけるこの特異性は、今後建設業に携わっていく若者が夢を抱きやすいし、他の地域よりも優れていると思いますね。

男女分け隔てのない採用へ

 公共事業縮減の影響で7~8年採用がストップしておりましたが、3年ほど前から再開しました。後輩の不在を長く経験した世代が、自分はいつまで下っ端でいなければならないのか、そう不安に感じてしまうのは問題に思ったのです。そのため、次年の採用者は早めに決定していきます。現在は新入社員教育も働き盛りの35~45歳の社員が行っており、長年の経験で身についた高い技術力を継承できています。
 現在、女性技術者は3名在籍していますが、初めて女性技術者を雇用したのは20年ほど前のことです。当時は設計で、現場への女性登用を始めたのは3年前ほど前から。2名は入社したばかりで、1人は2年前に高専から入社しました。昨年入社した女性も同じ高専からですが、合同企業説明会で話をしたことがきっかけになりました。ご実家が建設関係の仕事をされているようですから、昔から建設業は身近な存在だったのでしょうね。採用に当たっては、女性専用の更衣室やトイレを現場に設置しました。コストも大してかかりませんよ。
 実を言うと“建設現場で女性が働く”そのことに最初はためらいがありました。でも、今ではその優秀さに驚かされています。むしろ同期の男性よりも意欲的なほど。男性には負けないという意欲で本当によく働いてくれます。現場が華やぎ、男性もやる気が出るようです。女性の手前、男性も弱音を吐きづらいという効果もあると思いますよ。
 サラリーマン時代の経験から、とにかく社員の気持ちを理解するよう心がけています。公明正大に、公平に社員と向き合うことが大切です。

組織として求心力の高い情報発信を

 私は業界経験が浅いので、私と同年代の協会青年部の役員の方からいろいろと勉強させていただいています。
 この業界にも仕事の減少はあります。しかし、建設はすべての国民にとっての生活の基盤であり、その性格上仕事がゼロになることはないでしょう。だからこそ、業界全体のイメージアップと若い世代の育成は大切です。たとえ10年後の仕事の保証がなくとも、希望が持てる仕事というのは確かであり、そのことを若者に伝え、業界全体のイメージアップを図る方策を講じていかなければなりません。また、資格取得の時間短縮を進めることで、先が見えずに離職してしまう若者を減らせるのではないでしょうか。だからこそ、自社さえよければ良い、そういう考え方は持たないようにしています。建設業界一体を盛り上げていきたい。そのためにはまず、自社の根付く地域を盛り立てていくべきだと思っています。しかし、自分一人の発信力などたかが知れている。そこで協会のような大きな組織が必要になるのです。地場の企業がたくさん集まる。するとそれは大きな力となり、求心力は高まる。だからこそ、大きな組織を持つということには大きな意味があるのです。

宇野紫織さん

宇野さんは昨年の入社直後に、金沢駅西口シェルターの工事現場に配属になったそうだ。

 

現場での一日

株式会社豊蔵組 宇野紫織さん
 わたしの場合は父が建設業で働いていたこともありましたし、1つ年上の親戚が女の子なのに男子ばかりのイメージの工業高専に入学して、なんかカッコイイなぁって思って、それで工業高専に入って建築学科を専攻しました。
 学校の合同企業説明会で豊蔵組のことを知ったんです。父を見ていたので建設業の仕事はだいたい知っていました。でも、女性にでもできる仕事なのかは少し不安はありました。内定が出てからも不安でいっぱいでした。なので豊蔵社長がたくさん相談にのってくれました。それに会社に女性で3つ年上の先輩がいましたので、ずいぶん気持ちも整理できましたよ。
 えっ、もちろん〝男性には負けられない〟って気持ちはありますよ!(笑)

 会社に入ってからは先輩や職人さんがとても優しくしてくれますし、社長も応援してくれます。建設業の現場って、泥だらけで汗だくなイメージがあったんですけど、働いてみると事務所もキレイだし、イメージと違ってました。
 今はまだ、資格も無いですし出来ることもすくないので、仕事と勉強をする毎日です。とてもやりがいがあります。父も喜んでくれています。

 

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