人材確保・育成

建設業経営者インタビュー

質の高い仕事をつづけ、やりがいのある環境をつくる/建設業経営者インタビュー|田中 勝久さん(京都府)

株式会社田中工務店
本 社 京都市南区上鳥羽八王神町
創 業 明治39年4月1日
設 立 昭和22年4月26日
社 長 田中 勝久
社員数 37名

No.05:若手経営者インタビュー

社長 田中 勝久 氏

 当社は創業107年、京都ではいわゆる老舗の建築総合請負会社です。年商は30億円前後で、工事の割合としましては民間9割で、公共1割ほどです。民間工事では主に住宅を中心に法人や企業、マンション、寺社など多種多様です。公共工事の大半を学校や体育館が占めています。
 社員は総勢38名。ほとんどが監理者、技術者で、うち女性は事務職員が3名です。最近は多忙な日々が続き、社内にも活気が出ています。
 幼少の頃は、実家の三軒隣に会社がありました。もともとは大工さんで発祥した会社ですから、会社裏には加工場があり、カンナを研いでいるそばで遊んだり、木材で遊んだり、大工さんにはよく遊んでもらいましたね。近隣の仕事が多く、ご近所さんとのお付き合いや建物が出来上がっていく過程を目の当りにしてきましたから、今思えば当時から幼心に建設への使命感を持っていたような気がします。
 そういった環境で育った影響でしょうが、建築への漠然とした憧れを長年持ちながら、金沢工業大学へ進学。その後全国の大手ゼネコンで5年ほど現場を経験しました。2011年の6月に社長に就任。私で5代目となります。
 京都府には老舗と呼ばれるお店や会社が多く、4年に一度京都府が開催する「京の老舗表彰」では毎回100社ほどが表彰されています。建設業界ではこれまでに10社ほどが表彰され、神社や仏閣を施工する会社が多いのですが、2009年に当社も表彰されています。

社風は企業をつくる、それと同時に人もつくる

社是

愛用の手帳にも社是を入れる田中社長。お守りのような大切な存在という。

 近年はお客様のなかにもコスト重視の傾向がありますが、それでもあえて“クオリティ重視のこだわり派”でがんばっています。
 『お客様に喜んでいただくよい建設物をつくろう』というのが先代、先々代とずっと言い続けてきた言葉で、私の祖父がつくった社是なんです。今でこそ顧客志向とか顧客本位とか言われますけど、それは祖父の代から言い続けてきた、というのが我々の強みなのです。
 難易度が高いほど達成感もありますし、社員のモチベーションや技術力を引き上げることができると思うのです。難しい仕事は手間暇かかりますが、「みんなの思いがつまった建物をつくる」というのは私のポリシーです。
 社風は企業をつくり、同時に人もつくります。「質の高い仕事をきちんと選び、やりがいのある仕事環境をつくる」
——それは、私の目指す経営者としての在り方です。

 当社では民間工事が多いこともあり、お客様の反応を直接的に実感することができます。うれしそうな笑顔や温かい言葉を頂戴したり、保育園の仕事では園児がお礼の手紙を書いてくれることもあります。やはり反応が返ってくるというのは大きく、それが誇りにつながり社員のやる気につながっていると思います。
 お客様にアンケートをいただいたり、定期的に建物の維持管理の点検をさせていただいています。社員自ら率先してやってくれるような空気がありますので、担当した社員とお客様の距離はきちんと保てています。その点では非常に心強く思っておりますが、やはり人間ですからお客様との相性もあります。担当した社員とお客様が良好な関係を築けているか、個々の状況を把握できるような体制づくりが必要ではないかと感じています。そのあたりを会社としてどのようにしてバックアップしていくのかが課題ですね。
 また、木造や鉄筋コンクリート、鉄骨造など色々な物件を担当していますので、幅広い能力を身につけるには最適の環境だと思います。講習も含め色々と経験してもらい、責任者になった日にぜひ活かしてもらいたいものですね。

 

建築が好きかどうか

 毎年1~2名、大学や専門学校から技術者を採用しています。昔は父の出身校という縁もあって、伏見工業高校から数多く採用していました。今でも毎年インターンシップには来ていただいていますし、つながりはとても深いのですが、近頃は工業高校の学生さんも大学へ進学される傾向にありますので、就職の話はめったに来なくなりました。入社しても途中で辞めてしまう子もいます。働き始めてから5年程は、どうしても職方さんの下で下働きを経験しなければなりません。この時期に「理想と現実のギャップ」に耐え切れず、辞めてしまうようです。あるいはお客様とのコミュニケーションが苦手な子にとっては、「合わない」と感じるのかもしれません。
 結局は『建築が好きかどうか』だと思います。興味があればすごく面白い業界なので、辛いことだって耐えられるのです。
 去年一昨年と、小旅行として近場の温泉宿に一泊して忘年会をしました。現場終わりに皆で集まって、酒を酌み交わすのです。
泊まりでは来られない方もいらっしゃったので、今年はホテルの一室でゲーム大会をして遊びました。AチームとBチームに分かれ、それぞれのチームに忘年会担当者を指名。社員自らが宴を企画するのです。
 ゲーム内容は「叩いて被ってジャンケンポン」など。僕に遠慮している社員には容赦なく「手加減するな!」の声が浴びせられたりして、非常に砕けた場になりました。僕自身も非常に楽しめましたね。また「社員が選ぶナンバーワン ―今年の活躍者」の企画では、社員投票の結果選ばれた方にプレゼントもあげました。年配の方で大変頑張って活躍してくれた方でしたが、皆さんちゃんと見ているものだなぁと胸が熱くなりました。
 また5年に1度、社員のご家族も集めてパーティなどをしており、100周年にはUSJに行きました。次も何かしたいなと思っています。

業界のイメージアップを一緒に頑張りたい

 JC時代のつながりで、全国の建設業には同世代の友達がたくさんいます。時々集まっては食事したり、情報交換をするなかでしんどい話もたくさん聞きますが、環境に負けず、皆さん頑張ってらっしゃる方ばかりです。
 若い人たちに魅力ある業界として映るように、建設業者のイメージアップを続けることが大事だと思います。

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