岡田 康晴さん
昭和42年、石川県生まれ、石川工業高等専門学校土木工学科卒業後、石黒建設入社。平成5年7月に酒井工業に入社し、平成23年8月に代表取締役社長就任。
酒井工業株式会社
本 社 石川県金沢市
設 立 1957年
社 長 岡田 康晴
社員数 26名(平成24年4月現在)
●会社概要
当社は前身となる酒井建設工業株式会社の石川支店長を務めていた祖父が、支店閉鎖に伴い事業を引き継ぐ形で独立創業したのが始まりです。私は酒井工業株式会社の社長としては4代目となります。建築もやりますが、土木専業といっても過言ではありません。仕事は国や県の仕事がメインで、特に官庁が多いですね。
●現在の状況
当社の場合、国交省の仕事は主に加賀方面と能登方面となっています。現在は加賀、能登、海側と1本ずつ仕事をしています。
金沢市内から能登へと続く現在の道路は、海沿いをぐるりと回るので遠回りとなり、少し雨が降っただけでも通行止めになってしまい不便なため新たな道路計画が進んでいます。加えて、金沢市には山側幹線4車線化として金沢バイパスと今町をつなぐ4車線化の仕事があり、トンネルの仕事もあります。新幹線開業でアクセスが改善し、観光都市として集客が見込まれます。山側幹線の利用により、街中への車の流入を回避させる狙いがあります。金沢は道幅も狭く、街中に車が流入すると非常に歩きづらいのです。
富山県との道路交流も多く、海側幹線の延伸や金沢と富山を結ぶ金沢湯涌福光線や金沢井波線などの工事や、平成27年3月の新幹線開業もあるため、金沢市内の各所で工事が見込まれていますが、金沢駅の開業以降の工事については不透明な部分も多くあるのが現状です。
●入札制度について
金沢市では、昨年までは10円単位での入札が行われていました。今年から県に合わせ入札価格も1000円単位になったものの、最低価格は1円単位で出ていました。市内にはAクラスの会社が50~60社あり、年間100本近くあるAクラスの仕事を、1社当たり平均1~2本取れる計算ですが、Aクラス間での競争激化によって偏りが多い現状です。
また、県は総合評価方式を採用し、3000万円以上の入札については基礎点が高い会社が落札するために、評価点の高い十数社に偏ってしまう傾向にあります。
当社の場合、国土交通省の仕事も受注し、去年は表彰されました。国の工事については評価点も高く、安定した受注が見込める現状です。しかし、毎年表彰がとれるわけでもなく、制度として見た場合、総合評価と指名競争のどちらがいいのか、難しいところだと思います。ただ「入札価格を下回るべきだ」という考え方は少し違うと思います。あくまで標準的な金額で市場と合った価格なのかを知っていただく必要があると思います。
工事が増える一方、人材は減少しています。そのため重機などの工事用機材や人の取り合いになって入札価格以上に費用がかかってしまう状況も予想されます。調達価格の高騰を建設会社側だけで吸収するよう元請けに要求されるケースもあり、これが一番苦労することでもあります。
●採用について
年々公共工事が減少するなか、毎年採用は難しく不定期になりがちですが、3年前に高卒者を採用しました。以前は工業高校や金沢工大にも求人を出していましたが、今はもう出していません。私は石川高専の土木科出身ですが、今は倍率も比較的高く、大学への編入も可能です。金沢工大の土木工学科は、昔は年間200人程の卒業生を輩出していたのですが、現在は40人程と聞いています。
●大切にしていること
たった一度の失敗で信用は急落する世界ですから、現場での安全管理や品質管理を徹底し、誠実に仕事をこなすことが重要です。それに加えて地域住民の方とのコミュニケーションも大切にしています。 当社は金沢市内だけでなく、県内の至るところで仕事をしています。地域ごとにさまざまな事情があり、難局に際しては日頃のコミュニケーションが役立ちます。 この2つを大事にすれば、地元や役所の方から信頼を得られると考えています。
●社員教育
石川県建設業協会加盟企業の新入社員は、富士教育訓練センターでの研修対象者ですから希望者を派遣しています。
また、社内では月に1度の工事講演を開き、積極的に社員と話をするように努めています。私自身も現場に足を運びますし、様々な社内イベントを通し、できるだけ社員とコミュニケーションをとるようにしています。
昨年は局長表彰、一昨年は安全管理の表彰をいただきました。こういいた表彰が、評価として社員の意欲を高めるもののひとつになっていると感じています。
●災害対応、地域貢献
金沢市内は融雪装置が発達し、県と市が除雪の契約をしていますが、稼動は2~3年に一度大雪が降るときくらいですね。金沢は水はけのいいところが少なく、大きな川も多くないので、警報が出たらパトロールや土嚢積みといった形での災害対応を行っています。
災害が起こる前に防災や減災への取り組みが必要です。我々だけでなく役所も、なぜ災害への対策が必要なのか、世間にもっとアピールするべき。国交省が液状化に関するハザードマップを公表しましたが、大半の地域住民はこれも見ていないのではないでしょうか。
私が所属する県の青年会では、市や小学校のバザーといったイベントに参加し、重機などの体験会を開催しています。子どもたちは先を競って乗りたがり、先生方もめったに経験できないことなので嬉しそうに乗っていますね。みなさんは建築用の重機に対しては悪いイメージがないようです。
●振興基金に望むこと
業界団体だけでなく、地域社会へのアピールもお願いしたいですね。我々自身が地域社会にアピールする方法も提案してくださればと思います。震災対応など、世間に誤った認識を持たれていることもありますから、正確な情報を伝えるためにはどうすればいいのかといった、全国的に共通で抱える問題への解決策が知りたいです。振興基金さんには、真面目な経営者が、きちんと経営をやっていけるような環境づくりのためのサポートをしていただけたらと思います。
経営のポイント
●安全管理と品質管理を徹底し、誠実に仕事をこなすこと
●良い工事と地域コミュニケーションは継続的な仕事として評価される