Ⅲ
事業の取組事例の紹介 (各建設業団体等が地域の実情に応じ工夫を凝らして実施)
全国の公共職業訓練施設で野丁場の技能者(型枠・鉄筋・とび等)を養成するためのコースがほとんど実施されなくなっている中、建設業振興基金、総合建設業団体、専門工事業団体ではそれぞれの地域の実情に合わせて様々な既存の訓練施設等を活用するなどして訓練コースを設置し、知恵と工夫を凝らして本事業を実施しています。
今回はその取組状況についてご紹介します。
一般財団法人 建設業振興基金(中央拠点)
富士教育訓練センターと連携、今後は首都圏で直営方式を拡大
●実施コース :重機オペレーターコース(5回)、躯体系技能者(建築)コース(2回)、土木系技能者コース(1回)、仕上系技能者(内装)コース(4回) ●訓練場所 :富士教育訓練センター、高度ポリテクセンター、IHI技術教習所東京センター ●技能講習講師:富士教育訓練センター、全国建設室内工事業協会
取得資格
・重機オペレーターコース
1.車両系建設機械運転技能講習(整地・運搬・積込・掘削) 2.車両系建設機械運転技能講習(解体) 3.不整地運搬車運転技能講習 4.ローラー運転特別教育 ・躯体系技能者(建築)コース ・土木技能者コース
1.小型移動式クレーン運転技能講習 2.玉掛け技能講習 3.足場の組立て等特別教育 4.丸のこ等取扱作業従事者安全衛生教育 ・仕上系技能者(内装)コース
1.自由研削砥石取替え等特別教育 2.玉掛け技能講習 3.フォークリフト(1t未満)運転特別教育
基金(中央拠点)では、重機オペレーターコース(5回)、躯体系技能者(建築)コース(2回)、土木系技能者コース(1回)、仕上系技能者(内装)コース(2回)の全10回を 富士教育訓練センター (静岡県富士宮市)において、オーダーメイドにより合宿型で実施しました。加えて、直営により仕上系技能者(内装)コースを(一社)全国建設室内工事業協会との連携により、通学型で 高度ポリテクセンター (千葉市)(座学・実習)、 IHI技術教習所東京センター (技能講習等)を活用して2回実施しました。
全体の1コースの定員は、概ね10~15名、ほぼ躯体系職種で、27年度参加者は重機オペレーターが全体の5割、内装が2割、建築1~2割、土木が1割となっています。今後は募集人員の増加に伴い、首都圏での直営方式による開催拡大を予定しています。
一般財団法人 みやぎ建設総合センター
ポリテクセンター等の職業訓練施設が近接 (効率的研修)、国の施設も活用
●実施コース :躯体系技能者(建築・土木)コース(3回) ●訓練場所 :ポリテクセンター宮城、日立建機教習センタ宮城教習所、国交省東北地方整備局東北技術事務所 ●技能講習講師:東北広域技術技能連合会
取得資格
1.足場の組立て等特別教育 2.丸のこ等取扱作業従事者安全衛生教育 3.小型移動式クレーン運転技能講習 4.玉掛け技能講習 5.車両系建設機械運転技能講習(整地・運搬・積込・掘削)
(一財)みやぎ建設総合センター内に設置された拠点では、 ポリテクセンター を中心に、国の施設(国交省東北地方整備局東北技術事務所)、教習所を組み合わせることにより、躯体系職種(建築・土木)について3回実施しました。これらの3施設はいずれも近接(多賀城市)しており、宿泊施設も併せ徒歩圏内にありますので、効率的な研修を実施することができました。
なお、うち1回は、東北で震災復興のもと人手不足が続いている状況から、これに対応すべく、3月に東北3県(宮城、秋田、福島)の高等学校新卒者を対象に8日間にわたって社会人としての心構えやマナー研修等を実施し、資格取得(車両系建設機械・小型移動式クレーン・玉掛け)は3コースに分け日立建機教習センタ宮城教習所で実施しました。
一般社団法人 全国クレーン建設業協会神奈川支部
「かながわクレーン塾」という資格+ビジネスマナーを兼ね備えたブランド
●実施コース :クレーンオペレーター(ビギナー)コース(2回)、クレーンオペレーター(マスター)コース(2回) ●訓練場所 :クレーンメーカー工場、神奈川建設重機協同組合会員企業モータープール、サンピアンかわさき、富士教育訓練センター、KANTOモータースクール(川崎校・溝ノ口校)、湘南センチュリーモータースクール、IHI技術教習所(神奈川センター)、コマツ教習所(神奈川センタ)、コマツ教習所(東京センタ) ●技能講習講師:会員企業の現役オペレーター、上記モータースクール、上記教習所
取得資格
1.玉掛け技能講習 2.大型特殊 3.移動式クレーン運転士(5t以上)
(一社)全国クレーン建設業協会神奈川支部内に設置された拠点では、座学は市の施設( サンピアンかわさき )、クレーン操作の実習は会員企業、資格取得は 富士教育訓練センター をはじめ、 モータースクール 、教習所等様々な訓練施設を組み合わせ、2コースを実施しました。
訓練の企画段階から様々な検討を行い、魅力ある資格設定(移動式クレーン運転士(5t以上)等)、訓練センターによる集団生活(5日間)、企業代表者やベテランオペレーターとのコミュニケーションに加え、ビジネスマナー研修にも徹底して力を入れ、マナーを備えた使えるオペレーターが育つと業界で評判となるなど、クレーン業界では「かながわクレーン塾」というブランドが今話題となっています。なお、他の支部でも水平展開しようという動きが全国的に拡がっています。
27年度末時点、訓練生(25名)の半数は拠点の紹介で就職。募集段階からハローワークの紹介等もあって定員を大幅に上回る希望があるため、28年度は年間50名の育成を目標として掲げています。
建設産業専門団体中部地区連合会
国の施設(国交省中部地方整備局中部技術事務所)の活用、多くの定時制高校生が訓練に参加
●実施コース :建設業基本技能コース(2回)、建設機械オペレーターコース(1回) ●訓練場所 :国交省中部地方整備局中部技術事務所、住友建機教習所愛知教習センター、愛知建設業会館 ●技能講習講師:全国建設室内工事業協会中部支部、日本型枠工事業協会東海支部、愛知鉄筋業協同組合、日本機械土工協会中部支部、愛知県左官業組合連合会、日本塗装工業会中部ブロック、東海建設躯体工業会、ハタコンサルタント、住友建機教習所愛知教習センター
取得資格
1.足場の組立て等特別教育 2.車両系建設機械運転技能講習(整地・運搬・積込・掘削)
建設産業専門団体中部地区連合会内に設置された拠点では、国交省(中部地方整備局)のご協力により、座学・実習とも国の施設(国交省中部地方整備局中部技術事務所)を活用して、7職種(鳶、型枠、鉄筋、重機土工、塗装、内装、左官)体験型の建設業基本技能コースを2回実施しました。
また、県内の定時制高校生を中心に7日間にわたって、資格取得(車両系建設機械運転技能講習)を目的とした建設機械オペレーターコースを 住友建機教習所愛知教習センター (愛知県刈谷市)において実施しました。
訓練生の確保に当たっては、愛知県は工業高校生の製造業への人気が高いため、国交省のご協力のもと定時制・通信制高校・普通科高校の校長会、教頭会に積極的に出向いて本事業のPRに努めました。その結果、13名の定時制高校生が訓練に参加され、現在求職活動を支援しています。
28年度も基本技能コースを中心に開講し、未経験者の方が自分に合った職種を探すきっかけにしていただく取組を予定しています。今年度も中部技術事務所と調整中ですが、その他新たに建設現場見学等の機会も設定予定です。