内田 京都の建設市場は、他の地域に比べて一段と厳しいと聞きましたが、実態はどうなっていますか?
岡野 京都府域の建設投資額は、民間工事も含めてピーク時の半分、公共投資額は平成24年度で増加傾向にあるものの、ピーク時の3分の1程度です。平成25年度の工事発注額は対前年度比95.1%。西日本で前年度を下回っているのは京都府域だけであり、全国でも最下位にあります。
内田 災害対応についてはどうでしょう。昨年の台風18号による被害はテレビでも大きく報道され、びっくりしました。
岡野 府下全域に大雨特別警報が出され、北部の由良川、南丹・京都市域の桂川などが越水する大災害となりました。私の会社も8カ所で緊急に対応しましたが、それが限界でした。
内田 協会会員の体制はどうだったんですか。
岡野 対応できるところ、できないところがあって、京都市内各区で2社くらいでしょうか。技術系の社員で災害に不慣れで、修繕作業も不十分なところもあります。私たちの若いころと違って、府内の災害対応体力の衰えを感じています。とくに北部地域の除雪体制は、建設業者の倒産・廃業により他地域からの応援に頼る場合も多々あり、早急に建設企業の再生が必要です。
内田 地域を守る建設業という認識が定着してきているだけに、喫緊の課題ですね。
岡野 公共事業は無駄って言いますけど、もし桂川上流のダムがなければ、さらに越水し浸水地域が広がり約14万人が避難生活を送ることになっていたんですよ。そう考えたら無駄なダムではないし、税金も無駄にしていない。こういうことを発言したら、多くの反響がありました。府内は道路も狭く、災害時は京都から桂川最下流部付近まで、1時間以上かかります。都市整備もまだまだ足りていないし、せめて全国平均的なレベルまで、しっかりとした街づくりが求められます。
内田 おっしゃる通りですね。
岡野 10年先、20年先を見通した計画を各市町村で検討すべきだと思います。
内田 そういう計画が見えてくれば建設業界としても腰を据えて、労働力の確保に当たれますね。
岡野 そうしないと誰も安心してこの業界に入ってこれませんよ。
台風18号での対応 本梅川(南丹市)
台風18号での対応 国道307号(宇治田原町)
内田 コンサルに頼ったりっていう話も聞きます。
岡野 コンサルもいまは人が来ません。だから一般の大学生や専門学校生を入れて教えてます。大手の建設屋さんも仕事を休みにして行っています。
内田 やはり手取り足取りやっても会社に入れたいということなんですかね。それでもコンサル会社の規模としてはそんなに大きくないと思うんですけれど。
岡野 大きくても10~30人です。大体1人2人でやってる会社というより個人です。コンサル辞めたら、そこに頼むんですよ。
内田 コンサル業界もダンピングで苦しんだっていいますからね。
岡野 コンサルだけじゃなく設計事務所もそうですよ。びっくりするくらい安いく残業は多い。うちの協会の会員さんで入札で請け負い、全く合わなく途中で打ち切り精算しました。設計は私の会社でやり直したんです。だからコンサルの技術力が落ちるんでしょうね、。
内田 全部つくりなおさなきゃならない。
岡野 そう、高くつくんです。
内田 結局、技術者を何人もつけなければならなくなる?
岡野 ええ、脱談合でダミコンサルタントをなくしたっていうところもね。それこそ何もできなかった時代が何年間もあったんだろうと思うんですよね。それがまだ取り返せてないというか。
内田 地質調査業界も同じでしたね。ダンピングでろくな調査できてないんじゃないかって。本当に、建設業の、ものつくる仕組みが全部傷んでる。本音言うとやっぱ少し長い期間工期を出してくれないと立て直せないと思うね。
岡野 それとコンプライアンス普及です中小企業なんか絶対そうです。
内田 働き手が不足しているので仕事が十分に消化できずに、公共投資を増やしても思ったほど経済効果がないという報道もありました。
岡野 職人も技術者も足りませんから、仕事を取るのも難しい。バブル以降、職人さんの受難の年が続きました。昔は職人さんを大事にしてきたのにね。
内田 土木工学科がなくなってきていると聞きます。工業高校で土木とか建築があるのは、京都府内ではどのくらいでしょうか?
岡野 舞鶴市の高等専門学校に土木があり、宮津高校に建築が、南丹市の農芸高校に園芸があり、あとは伏見工業に土木と建築ですね。平成11年から京都府内の土木・建築科の高校生を対象に、年に2回ほどの現場見学会を行っています。インターンシップは平成15年度より高校生を対象に実施しています。昔は多いところで1社あたり20〜30人は来ていましたが、いまは2〜3人です。就職フェアも集まらない。明確な目標をもって土木科、建築科に入った若者が少なくなっているんですね。大学を卒業して入社しても、それまでに現場を見てきていないから、3カ月もすれば「こんなはずじゃなかった」と辞めてしまう。いま伏見工業高等学校でも土木業界に就職するのは3人くらいです。 内田 みんな進学するんでしょうか。
岡野 ええ、専門学校が多いですね。
内田 せっかく建設業に就職してくれても、大卒で3年以内に3割、高卒だと4~5割近く辞めるという問題もあります。先日、大阪にある専門学校の先生に話を聞いたのですが、卒業生の就職後の定着率が高いと言っていました。先輩が同じ会社に何人もいて、いろいろ相談できることが大きいとおっしゃるんですよね。先輩の存在は大切ですが、ベテランの技術者、職人さんたちの後輩への指導力はいかがですか?
岡野 明らかに落ちていますね。それに加えて職場内のコミュニケーションも少ないですね。人と人とは顔を見て話さないと何も伝わりません。最近はパソコンばかり眺めている...。
内田 いつごろからですか?
岡野 ここ5年くらいでしょう。
内田 マスコミの中には「労務費が高騰している!」と書くところもあるようです。これは、今まで低すぎた賃金が少しずつ戻っている状況なんですよね。
岡野 職人さんは、今もまだ1万円代でしょ?職人さんの年収が一番安い。職人が減れば仕事を消化できなくなってしまうんですよ。だから手当は少しずつでも増やさないと本当に誰もこの産業に入らなくなってしまう。人が集まらなければ人も育ちませんよ。
内田 切実な問題です。
岡野 公共事業に対するマスコミや世間の風潮を意識するあまりに、発注者としての本来の責任を置き去りにした取り組みが多かったように思います。
長年の建設投資の削減で企業体力は消耗しています。それに並行して、私たち建設業協会も体力が落ちています。振興基金さんには、引き続きの支援をお願いしたいものです。
内田 建設業団体への支援は振興基金の基本的な使命です。知恵を出していきたいと思っています。本日はありがとうございました。
合同求人説明会
高校生現場見学会
本部、京都支部合同で、近隣府県20校の大学、専門学校に案内し、求人説明会を平成22年度より実施しており、
平成23年度は、参加企業15社、訪問学生52名延べ136名、就職者7名であり、公共事業費の増額を当て込んだ募集か、団塊の世代の退職に伴う補充か、採用数も多い方だった。
平成25年度は、参加企業17社、訪問学生24名延べ78名、就職者3名予定となっており、学生も大手企業、役所等を選択し、地域中小建設企業を敬遠しているのではないかと思われます。会員企業は、独自に職員募集もしているが、学卒者は非常に厳しい状況、中途採用は世代交代の補充、工事受注量の増加等に伴い、相当数あります。京都府は、平成24年度中途採用、社会人枠8名の技術職員を採用し、そのうち3名の土木技術職員を会員企業から採用しました。
平成17年度から、市民と工事のふれあい事業として「親子で学ぶ京都の建築・土木事業」を行い、工事現場を親子でふれてもらえる機会をつくりました。平成23年度からは、地元KBS京都テレビの全面的な後援を受け、バス4台にそれぞれ人気女性パーソナリティが同乗し工事現場の紹介をして、視察後は食事、近接した人気施設を見学を行っております。毎回定員に達しており、京都縦貫自動車道では180名の定員に応募者1,759名の応募があります。
また、建設業を正しい理解してもらえるよう、地元KBS京都テレビの夏季の人気番組、阪神戦「エキサイトナイター」中継の中で、協会と建設業界のイメージアップのため、社会貢献活動を通して地域に貢献しているコマーシャルを放映しています。