お役立ち・支援

関東地方整備局が中間前払金制度アンケート「中小企業の8割が必要」資金調達手段として期待の声

地域の建設業者の資金繰り改善に寄与することを目的として、平成11年2月から地方公共団体発注工事での、「中間前払金制度」の導入が可能となっている。銀行による貸出額の抑制傾向が強まるなか、工事期間中の資金調達を多様化する手段として有効性が高く、建設会社側も資金繰り対策として大きな期待を寄せている。関東地方整備局管内において都県では既に全て導入が済み、市区町村でも近年導入する団体が増加している。しかし、制度の利用は進んでいるものの、平成23年10月1日時点では、432団体のうち122団体の導入に止まっていた。

中間前払金制度の概要
  • ○中間前払金とは、当初の前払金に加え、工期半ばで請負代金額の2割を追加して行う前金払いのことをいいます。
  • ○当該工事の請負契約約軟等に中間前払金の条項があり、次の要件を満たしている場合(発注者の認定が必要です。)、請求することができます。
  • ■当初の前払金が支出されていること
  • ■工期の2分の1を経過していること
  • ■工程表により、工期の2分の1を経過するまでに実施すべき作業が行われていること
  • ■工事の進捗出来高が請負金額の2分の1以上に達していること
発注者のメリット
  • ○建設企業の倒産のリスクを軽減し、的確な工事完成が期待できます。
  • ○部分払いに比べ、出来高検査はなく、事務手続が軽減されます。
建設企業のメリット
  • ○中間前払金を利用することにより、資金繰りが改善されます。
  • ○低廉なコスト(保証料率 一律0.065%)で資金調達が図れます。

中間前払金制度の導入状況

 地域の建設業者の資金繰り改善に寄与することを目的として、平成11年2月から地方公共団体発注工事での、「中間前払金制度」の導入が可能となっている。
 銀行による貸出額の抑制傾向が強まるなか、工事期間中の資金調達を多様化する手段として有効性が高く、建設会社側も資金繰り対策として大きな期待を寄せている。関東地方整備局管内において都県では既に全て導入が済み、市区町村でも近年導入する団体が増加している。しかし、制度の利用は進んでいるものの、平成23年10月1日時点では、432団体のうち122団体の導入に止まっていた。

整備局が制度の実態調査へ

column_1.jpg

こうした状況から同局では、地域の中小建設業の資金繰り円滑化を促進するため、管内各市を直接訪問し、制度の導入について要請を行った。そのなかで、「建設業者から制度導入の要望がない」との声があったことを踏まえ、制度に関する企業のニーズを把握し、制度普及のための基礎資料とするため、関東地方整備局管内の中小建設企業を対象に、東日本建設業保証(株)と共同で制度に関するアンケート調査を実施。この度、その結果を公表した。
 アンケートは、関東甲信地区(1都8県)に本店を有する前払金保証契約者のうち、土木・建築業で資本金1億円以下の建設企業694社を無作為抽出。東日本建設業保証(株)の各支店を通じ、郵送またはFAXで調査票を配布し、508社(回収率73.2%)から回答を得た。

8割が必要! 制度へ期待の声

 工事における前払金以外の資金調達手段では、自己資金と金融機関からの借り入れが最も多く5割を占め、借り入れだけで3割となった。このうち完成工事高1億円以下、資本金1億円以下の企業では、金融機関から資金調達する傾向が顕著であった。

column_2.jpg

 最近の金融機関の融資姿勢では、全体で5割が「特に変化なし」だったのに対し、3割強が「厳しくなっている」と回答。完成工事高1億円以下の会社では、約5割が融資が厳しいと答えるなど、調達の厳しさに直面している傾向が強く出ていた。
 制度については、利用したことのある会社は56%。その理由は「資金繰りに役立つから」が47.8%。このうち金融機関の融資姿勢を厳しいと回答えた会社は44.9%を占め、金融機関以外の資金調達手段として利用されている状況が表れている。制度を利用しなかった理由として、約4割が「出来高認定を含む申請手続きが面倒だから」と回答した。
 また、導入の必要性では「資金繰りの選択肢が拡がるので必要」と答えたのが49.6%、「常時利用できる制度としては必要」としたのが28.3%と高い数値を示した。こうした結果から同局では、「市区町村での制度普及は、中小企業の資金繰り対策として有効に機能することが期待される」と分析し、本調査結果を踏まえつつ、今後も引き続き管内市区町村における制度の導入促進を図っていくとしている。
 こうした地方整備局の取り組みを高く評価したい。

詳しい調査結果については「国土交通省関東地方整備局」ポータルサイトでご覧戴けます。
http://www.ktr.mlit.go.jp/kisha/kyoku_00000502.html

ページトップ

最新記事

  • 経営に活かす管理会計 第10回|管理会計の利用と人材育成の方法を変える

    経営に活かす管理会計 第10回|管理会計の利用と人材育成の方法を変える

    中小企業診断士・社会保険労務士 手島伸夫

    競争の時代には、戦略的に№1になることが重要になります。市場では、価格と品質が良い1社しか受注できないからです。したがって、自社の「強いところ」をさらに強くして№1になるように経営資源を重点的に投下する「選択と集中」が重要になります。...続きを読む

  • 経営に活かす管理会計 第9回|建設企業の資金管理

    経営に活かす管理会計 第9回|建設企業の資金管理

    四国大学経営情報学部教授/㈱みどり合同経営取締役 藤井一郎

    資金管理とは具体的にどのような活動なのでしょうか。『ファイナンス戦略』などと言われる資金調達手法の検討、投資効果の話を聞く機会が多いかもしれません。もちろん、それも正しい考え方の一つですが、...続きを読む

  • 金融支援事業の利用事例

    金融支援事業の利用事例

    金融支援事業のメニューである「下請セーフティネット債務保証事業」「地域建設業経営強化融資制度」などは、それぞれに利用メリット等の特徴があります。本頁では、制度をご利用いただいている企業および団体に制度利用の背景などについてお話を伺いました。...続きを読む

  • 金融支援事業

    金融支援事業

    国土交通省 土地・建設産業局 建設市場整備課 建設市場整備推進官 後藤 史一氏
    聞き手:建設業しんこう編集部

    建設業振興基金は、昭和50年、中小建設業者の金融の円滑化や、経営の近代化、合理化を推進し、建設産業の振興を図る組織として設立され金融支援事業の一つである債務保証事業はこの時スタートしました。...続きを読む

  • 経営に活かす管理会計 第8回|マネジメント・コントロール ―部門業績と組織業績の斉合性―

    経営に活かす管理会計 第8回|マネジメント・コントロール ―部門業績と組織業績の斉合性―

    慶應義塾大学商学部教授 横田絵理

    大規模な組織になり、その中の組織単位(部門)に大きな権限委譲がなされればなされるほど、組織全体の目標と組織内組織の目標を同じ方向にすることが難しくなります。...続きを読む

最新記事一覧へ