企業経営改善

経営多角化の現状と課題

経営多角化の現状と課題

建設企業のための経営戦略アドバイザリー事業 南関東エリア統括マネージャー 中小企業診断士  藤原 一夫 氏
1000年の森を育てる地域支援資源活用事業組合 事業管理者:宮沢建設株式会社
株式会社大同ポリマー 吉田 幸治 社長

 

1206_9_tokusyu2_title.jpg

森林整備を支援し、
水源の森を育てる資源活用事業

1000年の森を育てる地域支援資源活用事業組合
事業管理者:宮沢建設株式会社(栃木県那須塩原市)

事業の背景

1206_9_tokusyu2_2.jpg

 水源林を保全するために間伐遅れの人工林(民有林)の間伐を支援し、材を破砕(チップ化)し、地域で使うことによって採算の合う施業を行える地域事業モデルを農家・農業団体と連携し構築するのが、本事業である。連携体団体の事業管理者は、宮沢建設。
 那須野ヶ原は、栃木県の北部に位置する広大な複合扇状地(約4万ha)だ。かつては水の乏しい瓦礫の原野であったため、明治時代から那須そ水の開削工事が行われ、平成6年に約1世紀を経て、悲願の那須野ヶ原用水が完成。栃木県第1位にランクされる豊かな農村地帯になったが、近年は間伐の遅れによる水源林の荒廃が顕著であり、今後は水の持続・安定的な利用と循環が困難になる恐れがある。ちなみに那須野ヶ原水源林は、下流域に暮らす19万人の命を支えている。

事業の概要

 水源林を保全するために、建設業としてのノウハウを活かし、重機で林地残材を搬出して破砕(チップ化)し、農業資材(敷料、チップボイラーの燃料、マルチング等)などの商品化を目指す。これを地消することで、間伐材の伐採・搬出・運搬コストを吸収し、採算の合う施業を行える地域支援の事業モデルを、森林所有者・農家・農業団体・大学などと連携し構築していく。
 これまでの取り組みでは、林地残材を収集し、チップ化の実証実験を行った。また、地域での理解を得るために、「道の駅」などで林地残材をチッパーで破砕する市民向けイベントを2回開催し、約600名の参加者を集めた。さらに、チッパーで破砕したチップを木質バイオマス発電のボイラーの実証試験に試験提供。この発電システムは、環境省の除染技術実証に採択されたため、今後もチップの試験提供を行い、燃料としてのチップの性能調査を実施する見込みである。

今後の展望

1206_9_tokusyu2_1.jpg

 ただし、申請段階では予想していなかった状況――東日本大震災による福島原発放射能汚染事故が起こった影響で、那須野ヶ原地域の森林の樹皮から、許容値を超える放射性セシウムが検出され、さまざまな変更が余儀なくなれた。放射能汚染対策は今後の大きな課題となっている。
 今後は除染技術の開発を行っている団体と連携し、汚染された間伐材・林地残材であっても活用できるような木質バイオマス発電システムの導入を検討する。導入したチッパーは竹の粉砕にも優れており、この利点を活かして、24年度は竹の伐採・粉砕・利用を森林整備の主テーマに取り組む。

ページトップ

最新記事

  • 5. 未来のi-Conを占う

    5. 未来のi-Conを占う

    建設ITジャーナリスト 家入 龍太

    当面のi-Conでは、トップランナー施策として上げられたICT土工やコンクリート工、施工時期の平準化に主眼が置かれているが、今後は建設フェーズ全体の最適化を図るため、...続きを読む

  • 4. IoT、ロボットとの連携で建設業が成長産業に

    4. IoT、ロボットとの連携で建設業が成長産業に

    建設ITジャーナリスト 家入 龍太

    約20年間にわたって下がり続けてきた建設業の労働生産性(1人当たり、1時間に生み出す価値の金額)をよく見ると、ここ数年はわずかに回復基調に転じていることが分かる。...続きを読む

  • 3. i-Conの効果は「実物」と「情報」の一致にあり

    3. i-Conの効果は「実物」と「情報」の一致にあり

    建設ITジャーナリスト 家入 龍太

    i-Conの効果には、いろいろなものがあるが、代表的なものを挙げると次のようになるだろう。(1)‌着工前に現場や構造物の姿を3Dモデルによってリアルに見られる...続きを読む

  • 2. ICT土工を中心にi-Conが急拡大

    2. ICT土工を中心にi-Conが急拡大

    建設ITジャーナリスト 家入 龍太

    従来の労働集約型工事とは大きく異なるi-Con工事だが、国土交通省の強力な推進体制により、発注数は当初の予想を大幅に上回るペースで拡大している。...続きを読む

  • 「i-Construction」は 建設現場をどう変えるのか?|1. i-Constructionとは何か

    「i-Construction」は 建設現場をどう変えるのか?|1. i-Constructionとは何か

    建設ITジャーナリスト 家入 龍太

    建設現場にパソコンやインターネット、デジタルカメラなどのICT(情報通信技術)機器が導入されて久しいが、屋外の現場で作業員が鉄筋や型枠を組んだり、バックホーで土を掘削したりする風景を見ると、1964年の東京オリンピック時代とあまり大差は感じられない。...続きを読む

最新記事一覧へ