しっかりとした長期事業計画の
立案が不可欠である
建設企業のための経営戦略アドバイザリー事業
南関東エリア統括マネージャー 中小企業診断士 藤原 一夫 氏
建設市場(従来型の新設・新築工事)の縮小が進む現在、建設業各社にとって苦難と挑戦の時代が続くことになるだろう。同時に、新分野進出に活路を求める企業はこれからもどんどん増えていく。生き残りをかけた戦略としての「経営の多角化」である。もちろん、それがどの分野・業種が望ましいかは一概には言えず、それぞれの企業が置かれた状況、企業特性、得手不得手などで選べばいい。例えば、就業者の高齢化、就業人口の減少が進行している一方、国民から再生の要望が強い農業や林業に進出する建設業は少なくないが、新たな制度システム(自主的な販路開拓等々)の構築、規制の緩和や強化などによって、今まで眠っていた需要を掘り起こす、新規需要を創出することも十分に考えられるはずだ。あるいは時代のニーズである再生可能・自然エネルギーへの挑戦もやりがいのある事業であり、潜在する需要は計り知れない。
ただし、経営多角化の課題として申し上げておきたいのは、思いつきの出たとこ勝負ではなく、「しっかりとした長期事業計画を立案した上での参入が不可欠」ということ。それ相応の経営資源(投資)が必要だし、芽が出る(営業利益の確保)まで最低3年はかかると思っていただいたほうがいい。そのためには本業である建設業の経営上のリストラ(単なる人員削減ではなく、無駄の見直しや赤字部門の切り離し等=事業内容の再構築)を進め、従来の売上体質から利益体質に改善させてから、新分野への参入を決めるべきだ。本業が赤字のまま、右も左も分からぬ新分野に入ってくるのは自殺行為といっても過言ではない。また、海外進出にしても、日本で利益を出せないものが海外で受け入れられる(成功する)はずがないのである。
夢は大きく、
必要なら国交省の施策も活用して臨む
私はこれまで国交省の「建設企業の連携によるフロンティア事業」審査選定委員会の委員を務め、現在は「建設企業のための経営戦略アドバイザリー事業」の南関東エリア統括マネージャーとして活動している。それらの経験をもとに言わせてもらえれば、経営多角化を成功させた(あるいは成功させつつある)企業とは、経営者が決断し、長期計画を考えて戦略的に、段階的に、確実に一歩一歩、事業を進めてきた企業である。その覚悟がなければ成功はおぼつかないと思う。夢は大きく持って、必要とあれば国交省の「建設企業のための経営戦略アドバイザリー事業」を上手に活用し、経営多角化を成功させたいものである。
「建設企業の連携によるフロンティア事業」
国土交通省は当基金を補助事業者として、平成23年より、「建設企業の連携によるフロンティア事業」を実施しています。この助成事業の目的は、2つ以上の建設企業が連携を図ることでリフォーム、エコ建築、耐震など、成長が見込まれる市場の開拓につながるビジネスモデルを育成すること。助成条件としては、①少なくとも2つ以上の建設企業の連携体で、②予定する事業期間の過半を超える期間において、新たに技能者、技術者、若年者その他の事業実施に必要となる者を1名以上雇用し、事業期間終了後も継続して雇用する見込みがあることとなっています。当初予定で、概ね100件を選定し、助成額は1連携体当たり上限1,000万円です。
さらに今年1月12日から20日までは助成金の追加交付の公募が行われました。その目的は、採択事業者の中で、特に、事業の熟度が高く、当初の事業計画以上に成果が上がり、他への波及効果が高いと見込まれる連携体に対して、その活動を支援することです。応募件数は71件、追加交付助成対象事業として32件を選定しました。
>詳しくはこちらをご覧ください http://www.yoi-kensetsu.com/frontier/
「建設企業のための経営戦略アドバイザリー事業」
中小・中堅建設企業の新事業展開、事業承継、企業再編・廃業など建設企業が抱える経営上の課題を広く受け付ける「経営戦略相談窓口」を設置し、「エリア統括マネージャー」の統括のもと、各分野の専門家から構成される「建設業経営戦略アドバイザー」によるアドバイスを実施します。特に新事業展開、企業再編、転業、廃業に関してはアドバイザーによる支援チームを組成、目標達成まで継続的に支援します。
>詳しくはこちらをご覧ください http://www.yoi-kensetsu.com/advisory/