1970年、宮崎県生まれ。帝京大学卒。
大手道路会社で6年間修業し、平成11年同社に入社。
平成20年より現職。
旭洋建設株式会社
本社 宮崎市大塚町池ノ内1166番地
創業 1949年
社長 児玉清和
社員数 30名
●会社概要
私の父であり、会社の会長である児玉盛次が1973年に個人会社として創業し、1976年に清永建設と児玉総業が合併し、改組して旭洋建設株式会社設立になりました。私は二代目社長です。地域密着型の土木・舗装工事会社を標榜し、仕事の9割は、県や市から受注する公共工事になります。売り上げは年間6億円ほど。
当社の一番のセールスポイントは、各種機械類とそれを操縦できる人材(各種資格保有者)を豊富に揃えていることだと思います。これによって下請け業者に頼らない直接施工を実現し、これは同業他社に勝るとも劣らない強みです。それから従業員の平均年齢は35歳前後なので、若さにあふれる社風も特徴だと思います。
●現在の状況
公共工事の減少に伴ってピークに比べると現在の売り上げは3分の2ほどに落ち込み、我慢の時期に直面しています。政府が掲げる経済政策、いわゆる「アベノミクス」の政策により、特に公共工事の予算がつくのではないか、といった見方が出てきました。中でも道路の維持・管理・修繕ですね。その意味では、県と市からの受注が多い弊社にとっては、ようやく明るい兆しが見えてきました。もちろん実際に予算がついて発注が増えるまでは安心できませんが、ぜひ良い方向に進んでほしいですね。ただし、今年がいいと来年が悪いといった話になるので、そんなに大喜びはできません。できることであれば工事の平準化を望んでいます。
●入札制度について
宮崎県が一般競争入札になったのは前知事に変わってからですが、かなり厳しい状況でした。落札できた時は、もちろん喜びはありますが、その半面「取ったはいいけど、この先どうやって利益を出していこう」といった悩みもあって……。価格的には無理して取ったわけですから。このような状況が続き、協会の中でも辞められたり、廃業したりする人は多かったです。
●異業種参入に対する考え方
以前は異業種に興味があり、農業参入を検討したことがあります。父は建設業を始める前、農業に従事していたんです。しかし、自由化やら何やらで、農業ではなかなか食べていけずに建設業を立ち上げた経緯があります。それなりに農業に関するノウハウはあるので、農業進出の話が出たのですが、父の「そんなに甘いものではない」という一喝で立ち消えになりました。
現在は、異業種よりも本業である土木建築業に伸ばしていこうと、下水道や道路の舗装・修繕・維持管理がトータルにできる会社を目指しています。
●新規採用について
前述しましたが、当社の社員の平均年齢は35歳前後です。今はみんな働き盛りですからいいのですが、年々平均年齢は上がっていきます。これから20年後、30年後を考えると若い人も定期的に採用していきたいのですが、なかなかそうも行きません。実際には新規採用は3年に1回くらいですね。
新規採用については、「宮崎県産業開発青年隊」※で人材を紹介してもらっています。青年隊が残っているのは全国でも宮崎県だけらしいですね。青年隊は、土木建設分野において即戦力となる技術者の育成をメインとし、高卒から入隊できるシステムなので、土木に対して志の高い人材が集まっています。実際、当社に入社した青年隊出身者は何名もいますが、みんな辞めずに頑張ってくれています。
【宮崎県産業開発青年隊※】
「友愛、希望、協力」をモットーに「働きながら学ぶ」という教育理念の基、全寮制による規律ある集団生活と訓練により「心身の教育」を行い、併せて測量学や土木施工等の講義や実習等の実践的な学習により、土木建設に関する専門技術の勉強を行い「土木建設技術者」を養成するというユニークな教育機関として、時代の要請に即応した「人間教育」を行う。平成22年度からは、県から指定を受けた指定管理者である学校法人宮崎総合学院が運営。
●人材育成について
当社には決った教育プログラムはありませんが、新入社員には「○歳までに1級土木施工管理技士を取りなさいよ」といった教育はしています。以前は会社のほうで金銭的に資格取得の支援をしていました。しかし、資格を取得した人が辞めていくことが続いたため、今では自費での取得にしていますが、資格をとることでの手当として給料に反映させています。せっかく資格を取っても辞めていかれたら何にもなりませんからね。
若者の離職率の高さは、何も本業界に限ったことではありません。40歳代の私たちの時代には「建設業は、やりがいがある業界だ」と思っていましたが、最近の若者にとってはそうでもないようです。離職する若者に理由を聞くと、「自由な時間が欲しかった」「(年度末とそれ以外の)忙しさの差が激しい」「定時に終わる仕事に就きたい」といった話で、どうも我々世代の意識とギャップがあるんですね。苦労して入ってきても、すぐに辞められては元も子もありませんし、業界全体で考えていくべき問題だと思います
●建設業の広報
3・11の復興支援でも自衛隊ばかりが目立って、建設業者の活動が見えてこなかったというマスコミ報道もありました。建設業界はもともと「人のため、地域のためにこんな活動をやっています」などと自慢するような業界ではなく、仕方がないのかなと思う反面、もう少しやりようがあったのかなと思うこともあります。
宮崎県では、「宮崎県「土木の日」実行委員会」の活動として、毎年11月から12月にかけ、市民のみなさんに土木を身近に感じていただき、土木の仕事とその役割について知ってもらうためのイベント活動を行っています。大学、行政、民間企業が協力し、組織を運営しています。
昨年は地元の小学校で、テレビ局や新聞社にも来ていただき、側溝の掃除等のボランティア作業、レンガを積んでの橋づくりや重機の体験試乗が行われ、わたくしは生徒へ『土木座学』を講演いたしました。こういった小学校や中学校に向けた若年教育が、早い段階からの担い手育成になっているかもしれません。
県民性なのでしょうが、宮崎県は外に向けてアピールすることがあまり上手くありません。ただ、自分たちがやっている活動を外部に伝えることは大切です。これは今後の課題になるでしょう。
●今後の展望
より技術力アップを図って、お客様(発注者)に喜んでもらえたら本望です。地域に欠かせない「町医者プロジェクト」の一翼を担う存在として、「旭洋建設に任せばすぐにやってくれるし、仕事も丁寧で頼りになるね」と言われたいですね。そのためにも技術力のレベルアップが不可欠だと思うのです。
人材育成の具体的な方法としては、これまでは管理者と作業員の仕事は分けて考えていましたが、今後はどちらの仕事でも従事できるような“オールマイティな”人材育成を目指します。そのため、若い人たちもどんどん機械の免許を取得してもらうように仕向けています。指導役の人を立て、その人を中心に「町医者集団を目指す」イメージ。これからの時代に重宝される人材を多く育成したいですね。
経営のポイント
●下請け業者に頼らない、自社の特徴を活かした直接施工
●会社を元気にする定期的な雇用
●維持・管理・修繕のマーケット
●町医者集団を目指したオールマイティな人材育成