企業経営改善

建設業経営者インタビュー

企業内教育機関「鈴木職業訓練校」で毎年多くの優秀な人材を育成/経営者インタビュー | 鈴木 央さん(東京都)

株式会社 鈴木組
鈴木 央 氏

企業内教育機関「鈴木職業訓練校」で
毎年多くの優秀な人材を育成

 

 

●指導員について

 現在は、訓練校の卒業生でもあり、現場でも優秀な技術者が指導員になって運営しています。実際に現場で活躍している先輩社員が指導員なので、訓練生にもいい目標になっているようです。また、こんなエピソードもあります。私どもの二次業者が、後継ぎがいなかったために廃業することになり、その社長(70歳)が指導員になったのです。経験豊富な人ですから説得力があり、訓練生に人気があるようです。座学の教科書の選定や、授業の進め方など、指導員にはある程度の権限を与えています。

この仕事では、人間関係=コミュニケーションがもっとも大切です

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 私は平成8年入社で、指導員になって3年目です。私の同期は11人でしたが、今人残っているのは8名です。最近は、鳶職に憧れて、鳶がどんな仕事がわからないまま、高いところで作業をする職業、といったイメージで入ってくる若者は多いですよ。私自身も高校の普通科を卒業して、当時は何も分からないまま訓練校に入りました。指導する上で大切にしているのは、仕事の醍醐味や喜びですね。面接は会社で集団面接を行います。私も出席し、応募してきた若者たちの適正を見るようにしています。 訓練校の指導員は5人です。常に指導員が付き添う形で勉強をしているので、食事は決まった時間に食堂で全員で食べます。訓練生といっても普通の正社員ですから、週末は休みとなります。同僚や友人と外出したり、部屋でDVDを見たり、実家に帰ったりと自由に過ごしています。
 授業は、座学と実技です。安全関係、建築関係のテキスト(教科書)は、前年の授業をもとに、毎年指導員が選定するようにしています。必要な資格は一般企業の講習で取得し、11月に2週間だけ富士教育センターで、より本格的な鉄筋の実習を行います。
 離職が多くなるのは入社3年目くらいです。最近では「辛かったら帰っておいで」という親もけっこういるようです。少し前までの親子関係は「家を出たら帰ってくるな」だったような気がしますが、その辺の価値観が変わってきましたね。
 社員の多くは地方出身者です。訓練生と同じ学校の先輩、後輩の関係が続いているため、比較的コミュニケーションを図りやすいと思います。この仕事では、人間関係=コミュニケーションがもっとも大切だと思いますよ。しかし、コミュニケーションを言葉で教えるのは難しいので、現場で学んでもらうしかありません。そのため面倒見の良い先輩がいる必要があるのです。弊社の良い点はそれができていることですが、その流れを断たないことが重要です。仕事では話せないこと、悩んでいることなど多いと思います。時には一緒に酒を酌み交わす「ノミニケーション」なども使って、訓練生の心のケアにも心配りができる指導員を目指しています。


●訓練生の募集、求人について

 企業はある程度知識を持った人材を採用する傾向ありますが、私どもは高校、専門校の若者を、建築科に限らず農業科や普通科の卒業生でも雇用し、訓練校で座学、実技を中心に1年かけて学んでもらいます。
 学校訪問は実績が有るところに行きやすいので、昔は10~15校程に絞っていたのですが、現在は40校ほどの学校に足を運びます。私が福島、専務が青森、課長が東京、埼玉、神奈川を回り、指導員も学校へ行って説明してきました。学校とのつながりは徐々に太くなりつつあるようです。
 今年は5人の募集枠に7人の応募があり、全員を採用しました。できるだけ振るいにかけることはしたくないので、面接では指導員を交えて職業上の適正を見極めます。
 社員に対して、入社を希望する友人・知人がいたら声を掛けるようお願いしています。育てるということをしていると、他の協力会社の方もやろうという気になってくれます。同じ志をもつ仲間がいてくれることは心強いものです。

●給与について

 私どもの会社では面談で「何をやりたいか?」を話し合います。大企業と違って段階的なキャリアアップの構造がようやく整備されたばかりで、どちらかというと現場での目標設定に試行錯誤を重ねております。その中で現在の能力に合った目標を立て、資格を取るようなアドバイスをするようにしています。資格取得が直接的給与に関わってくるわけではありませんが、職長には手当をつけております。
 請負として質の高い工事が提供できなければ仕事が回ってきませんし、建設投資が少なければ当然仕事も減ります。過去に採用が滞ってしまうこともありました。だいたい35歳位での給料は、労務費の上限になります。つまり全員が職長クラスでは労務費は足りなくなるのです。若者が労務費を標準化してくれているのです。社会保険や税金のことも含め、ある程度の年齢の従業員には理解してもらっています。その上で、将来指導員になる道、職長になる道、いろいろな道が見えてくると思うからです。
 高卒入社では、だいたい訓練校2年目で2級施工管理技術士、27歳頃に1級施工管理技術士といったケースが一般的でしょうか。職長を目指すなら、各種講習会を受講することが必要です。受講料は会社で負担し、有休を使って出勤扱いで受講させています。
 当社では基幹技能者を数年前から採用しています。今年は大林組のスーパー職長に5名が認定されました。うち3名が訓練校の卒業生です。スーパー職長の手当は直接当人に支給され、本人が確定申告する仕組みです。

●離職してしまう若者へ

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 私たちも給料を支払って教えていますから、離職への不安は常にあります。特に3年くらいで離職してしまう若者たちが多く、会社としても、ホームページで訓練生の地元に向けて頑張っている姿を発信するなど、できる限り励みになることはしています。しかし、家業を継ぐなどさまざまな理由から、親に相談して離職を決意し、引き止めるわけにもいかない場合もあります。そんな彼らに言いたいのは、「そこを乗り越えればもっと楽しいことがある」ということです。ぜひ知ってほしいと思っています。






経営のポイント
人は育てなきゃいけない
新人教育は、訓練施設を活用して実践的な実習をさせることが有効

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