企業経営改善

建設業経営者インタビュー

安心と評価の見える社風づくりで社員のチカラを最大限に発揮/経営者インタビュー | 永井 康貴さん(岐阜県)

永井建設株式会社
永井 康貴 社長

安心と評価の見える社風づくりで
社員のチカラを最大限に発揮

 

永井 康貴さん

永井 康貴さん

昭和43年、愛知県生まれ。永井建設株式会社の四代目社長。岐阜建設業協会労働委員、副委員長や岐阜経営研究会会長などを兼務。大日本土木株式会社、県庁の土木部を経て現職。

永井建設株式会社
本 社 岐阜県岐阜市
設 立 1960年
社 長 永井 康貴 
社員数 30人

 

●会社の概要

本社

 明治10(1877)年、木曽川の渡し舟業としてスタートした当社は、時代の変遷とともに土木工事を主体とする建設業へと移り変わり、本年で創業136年を迎えました。創業から数えれば私は六代目社長です。
 仕事の内訳は、堤防護岸や舗装をはじめとする土木工事が8割、個人住宅や介護施設などの建築が2割になります。過去に国交省の評価点を落としてしまった教訓を活かし、少数精鋭で身の丈に合った経営を心掛けています。仕事の受注を一気に増やすのではなく「ちょっとずつ地道に増やす」をモットーに、着実な成長を目指しています。

 

 

●現在の状況

 社員は30名を数え、その大半が地元出身者です。土木の施工管理技術者が12名、重機のオペレーターも含めた現場の作業員が10名、建築が4名、営業総務が3名となります。一昨年から定期的に新入社員の採用を開始しました。ありがたいことに当社でも、アベノミクスの大型補正予算効果で多少なりとも受注がある状況なので、今年一年だけを見れば見通しもある程度予測できます。一方、民間工事については、消費税の増税による落ち込みが危惧されます。それでも住宅や介護施設の建築にも力を入れていきたいと思っています。

●安心とやりがいをもてる社風へ

H24年度 国営公園各務原地区舗装工事

 民間工事のではお客様とのやりとりのなかでお客様からの感謝の気持ちを感じる場面がありますが、公共工事では感謝の実感を得るのは難しいと感じています
 このため公共工事では、工事評価点をお客様満足度の目安として、仕事のやりがいにつなげるようにしています。
 当社では社員の皆さんが安心して働けるようにと、公共工事に加え住宅などの民間工事にも力を入れています。公共工事は自分たちで仕事を生み出せませんので、社員に会社の将来展望を示すことが難しくなります。民間工事では、自分たちの努力次第で仕事を生み出すことが可能です。ただ万が一私たちが倒産する事態にもなれば、お客様にとっては建物修復時の依頼先がなくなりますので、我が社で建てたものに対する責任を全うするためにも永続経営が重要と考えています。

 

●社員の意識改革「サービス業」という意識付け

 社員の意識が“顧客満足第一”で、「お客様のために自分の持てる最大限の力を発揮したい」と考えるような社内風土をつくろうと、意識の変革に取り組んでいます。やらされている感覚ではなく自分で自分のスイッチを入れることが重要なのです。意欲喚起の方法として、以前は処遇による動機付けにも取り組んでいましたが、物欲による満足は一過性にすぎないので、処遇というより仕事に対する考え方を変えるよう努めています。やりがいや、自分がお客様から必要とされていると実感することが本当に大事ですから。
 4年ほど前から経営の勉強を始め、優れた商品・技術・特許などによって得られるものは一時的なお金儲けにしかならず長続きしないと気付き、それをきっかけに永続する会社について考え始めました。個人的には良い組織風土や社風を持つ会社が永続すると思っています。意識の変革が、結果的には年々良い商品や新しいサービスを生み出すことにつながるはずです。

●災害対応

 岐阜県は山や川が多く、雨が降ると土砂崩れなどの災害が起こりやすい土地柄です。災害対応は社員が世の中に貢献していることを実感する機会にもなっています。会社が出動を要請する前に社員自ら行動できるのは、とても誇りです。重機は必要最低限のものだけを保有し、その他はリースにしています。災害対応は命がけの仕事です。台風は夜に来ることが多く、暗闇の中、堤防が決壊寸前といった状況も少なくありません。水防団や地元の方々が土嚢積みなどをやっている中で、ダンプが一台加わるだけで能率は大幅に違ってきます。私たちは、ダンプを水際まで限りなく寄せて作業をするのですが、暗闇では地面と水の境目もよく見えず、常に危険を感じながらの作業となります。

●地域密着

地場のゼネコンの在り方として、地域の方々に必要とされることは非常に重要だと考えています。地域の方々とのコミュニケーション活動の一環として、毎月第一月曜日の朝7時から、30分ほど道路清掃を行っています。また、一昨年から毎年、地元の厚見小学校の夏祭りに模擬店を出店しています。地元の方々が約1,000人集まるこのお祭りの模擬店は、主にPTAや自治会などの団体で構成されます。我々は、企業として唯一の出店です。1回100円で、お手玉を投げて積み上げた缶を倒す単純なゲームです。1番多く倒せた子どもへの景品はカブトムシです。購入すれば高額となるため、社員が朝5時に山へカブトムシを捕りに行き、8時に出勤するという生活を2週間続け、200匹ほど集めました。今では捕まえたカブトムシに卵を産ませ、繁殖までしています。社員が楽しんでやっているのがいいですね。公共工事の監督や現場の作業員たちはお客様に喜んでいただく姿を目の当たりにする機会が少ないので、このようなイベントへの参加は非常に貴重な機会だとありがたく思っています。

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●今後の展望

有料老人ホーム きらめき茜部

 当社は岐阜市内を中心に営業展開しています。安定した経営のために、今後は土木業だけでなく個人住宅や介護施設の建築も基盤に加え、安定的な売上げの構築を目指します。
 これまでの住宅建築では間取りやデザインなど、お客様の要望通りのものを造ってきました。しかし、お客様から見積もりを尋ねられても図面ができるまで満足な回答ができず、受注のチャンスを逃したこともありました。今後は自社設計・施工の自社商品を持ち、それらを基軸にカスタマイズしていく予定です。断熱や環境性能、省エネルギーなどの要望にも応じます。介護建築に関しては、現在グループホームを年間2棟ほど手掛けており、それをもう少し伸ばしたいと思っています。

経営のポイント
公共工事に喜びを!
まずは組織風土、社風づくり
お客様に自分の持てる最大限を発揮する

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