人材確保・育成

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座談会 建設産業における人材育成の課題

遠藤 和義 工学院大学 建築学部 教授
井上 花子 (社)日本造園組合連合会 理事
石井 直樹 群馬県立前橋工業高等学校 教諭
内田 俊一 (一財)建設業振興基金 理事長
枝川 眞弓〈司会〉 (一財)建設業振興基金 構造改善センター研究部長 〈敬称略〉

4月1日に国の認可を受け、「一般財団法人建設業振興基金」として新たなスタートを切りました。新法人移行を機に、顧客である建設企業、団体などの視点に立った「お役立ち度」を向上させるための各種事業の見直しや具体的方策、これを実現するための組織基盤の強化に取り組んでいます。
平成24年度は、①企業経営改善の視点、②人材確保・育成の視点、③震災復興支援の視点、この3つの視点を「重点的取組事項」として業務を進めていきたいと考えています。 そこで今回は、2つ目の「人材確保・育成の視点」をテーマに座談会を開催しました。

レベルアップを目指して
教職員対象の研修会を実施

――次に、日本造園組合連合会(以下、造園連)の井上理事に伺います。昨年の第49回技能五輪全国大会で、奈良県立磯城野高等学校の生徒さんが造園部門の銀賞を獲得されました。造園連としてのバックアップもあったと聞いております。昨今の造園技術技能者の入職の状況はどうなのでしょうか? また、若い技術者の技能向上を図るための取り組みについてもご紹介ください。

井上 石井先生は生徒を送り出す側ですが、私どもはその生徒さんを受け入れる側になります。実際は、受け入れる業者さんと学校の中間の役割ですね。その立場で申し上げますと、現在の造園業界は景気の低迷もあって、若い人を積極的に受け入れる余地があまりない状況にあります。また、受け入れたとしても人材育成が十分できているとは言えません。それでも造園業に興味を抱く若者は大勢います。そんな彼らの技能向上を目指して、1999年から技能五輪をスタートさせました。当初学生は希少でしたが、最近はだいぶ目立ってきて、平成23年度には高校3年生が銀賞を受賞しました。若い人は競い合うことで伸びていく面もあるので、技能五輪のような大会は非常に有意義だと感じています。

――そのほかの取り組みはどうでしょう?
井上 生徒の技能向上はもちろんですが、その前に先生のレベルアップが必要だろうということで、2年前から教職員対象の研修会を実施しています。実際に、若い先生の中には、石に触ったことがない、樹木の剪定をしたこともないという先生もいます。教科書の知識で造園施工実習を指導する先生もいるのです。今年は約60名の先生方を集めましたが、終了後のアンケートでも「良かった」「自信がついた」といった意見が多く寄せられました。こういった研修会は今後も継続していく考えです。
また、造園連では15年前から映像による「技能継承」事業に取り組んでいます。教科書にはない現場の知恵といったものを映像にしてビデオ教材にしました。当初は反対意見もありましたが、結果的に大ヒットしました。これは“技の見える化”といった狙いもあり、特に若い人たちの教材に最適だと自負しています。

――次は、工学院大学の遠藤先生に伺います。遠藤先生は、基幹技能者制度推進協議会の活動に学識委員として、また共通テキストWG主査として関わっておられます。登録基幹技能者は、10年以上の実務経験、3年以上の職長経験及び特定の資格等を保有する者が受講する資格で、いわば工事現場の要といえる技能者です。建設業の基幹技能者の現状と評価についてお聞かせください。

遠藤 基幹技能者は、個々の専門工事業団体の危機感、つまり内側から立ち上がった資格制度であり、そこに大きな意味があると思います。昔堅気の職人さんの世界にあっての“ブランド”的な存在と言えるかもしれません。これによって処遇の改善が実現できたり、プライドをもって仕事ができたりと、それなりに評価の対象になってきました。とくに若い人たちにとってみれば、登録基幹技能者は、目指すべき技能者像になりつつあると思います。入職促進効果はもちろん、有資格によって、その分野、業種に定着させる効果も少なくありません。有資格者は、28業種3万2,612人(2012年1月31日現在)になります。

若者が技能労働者として
どうキャリアを積むべきか

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――ありがとうございます。内田理事長もご就任以来、技能五輪全国大会や、富士教育訓練センター、千葉県立東総工業高校の実習などを精力的に視察されています。その経験を踏まえて、どのような認識を持たれているでしょうか。

内田 技能五輪の会場で、課題に一心に取り組む若者たちの背中を1日中眺めているうちに、この真剣さに応える責任が大人たちにあると痛感しました。安心して飛び込める環境と腕を磨いて自分の将来を描ける仕組みをしっかりと作っていかないといけない。石井先生からご紹介のあった「地域産業の担い手育成プロジェクト」ですが、各地域で、例えば、「達成感」、「カリキュラムのシステム化」、「技能検定への挑戦」、「地域との連携」などそれぞれ目標を立て、工夫しながら成果を上げています。各地に、熱心な指導者がおられるし知恵もある、これを引き出して、つないでいけば大きな成果に結びつくと思います。当基金のお手伝いの場がここにもありそうです。

――ご存じのように建設業界では、新規学卒者を含む若い技能労働者予備群が建設産業の現場に入って来ない、建設現場の高齢化も急速に進んでいます。このような状況の中で、どのような環境を整えたら、若者が建設産業の技能労働者として就職し、キャリアを積んでいくことができるのでしょうか。何が一番重要なのでしょうか。それぞれのお立場からご指摘いただきたいと思います。

石井 いくつかポイントがあります。1つには、建設業界で働いている人たちと生徒たちがもっと接点がもてる機会を創出すること。これが就職後のミスマッチをなくし、生徒の就労意欲を掻き立てると思います。もう1つは、雇用する側の企業さんの声がなかなか聞こえてこないこと。どのような人材を求めているのか分からないので、我々もどのような生徒を送り込めばいいのか分からない。そこがミスマッチを生んでいます。 それから世間の建設業界に対する理解度が足りないことも問題です。東京スカイツリーのような話題の建設物の建設中に、学生と親御さんの見学ツアーなどが企画できれば、建設業の人たちがどんな仕事をしているのか理解が進みます。まだまだありますが、こんなところをぜひ改善できればと思っています。

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