人材確保・育成

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座談会 建設産業における人材育成の課題

遠藤 和義 工学院大学 建築学部 教授
井上 花子 (社)日本造園組合連合会 理事
石井 直樹 群馬県立前橋工業高等学校 教諭
内田 俊一 (一財)建設業振興基金 理事長
枝川 眞弓〈司会〉 (一財)建設業振興基金 構造改善センター研究部長 〈敬称略〉

4月1日に国の認可を受け、「一般財団法人建設業振興基金」として新たなスタートを切りました。新法人移行を機に、顧客である建設企業、団体などの視点に立った「お役立ち度」を向上させるための各種事業の見直しや具体的方策、これを実現するための組織基盤の強化に取り組んでいます。
平成24年度は、①企業経営改善の視点、②人材確保・育成の視点、③震災復興支援の視点、この3つの視点を「重点的取組事項」として業務を進めていきたいと考えています。 そこで今回は、2つ目の「人材確保・育成の視点」をテーマに座談会を開催しました。

大きな成果を上げた
地域産業の担い手育成プロジェクト

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――本日の座談会は、特に「建設技能者の確保・育成」に関してご専門の皆様にお集まりいただきました。ぜひ活発な意見交換をお願いしたいと思います。では最初に、内田理事長から当基金の「人材確保・育成」についての考え方、本年度の取り組みについての紹介をお願い致します。

内田 私たち建設業振興基金は、創設から37年目を迎えていますが、この辺でもう一度我々の使命、存在意義を見直そうと取り組んでいます。建設産業の現状を見ていて、昨年の原発事故で起こった“ メルトダウン”にも似た状況ではないかと感じています。炉心が融解して発電という本来の機能は全く発揮できなくなっているわけですが、ものづくり産業としての炉心に当たる技能労働の再生産ができなくなりつつある今の建設産業は、放置しておくと同じ状況に陥ってしまうのではないかと危惧しています。そういった中で当基金がどうお手伝いできるのか、そんな視点で、この問題に取り組んでいきたいと思っています。

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 今年度の当基金の取り組みは大きく3 つあります。1 つ目は、工業高校などに入って建設業を目指す若者達をしっかり受け入れていくための環境作りです。人材確保育成推進協議会の事務局として、建設業界の仕事を解説した冊子を作成し、全国約900 の高校・専門 学校に配布することにしています。さらに、キャリアレッスンの支援事業もあります。2 つ目は、建設業界に入った後の処遇の改善の推進です。例えば、登録基幹技能者制度の普及を後押しするためにデータベースの構築やこれを活用した情報提供を行っています。そして、3 つ目は、国民に建設産業にもっと関心を持ってもらうための広報活動です。

――ありがとうございます。では、建設産業の就業者予備軍の教育に携わっておられる石井先生にお聞きします。石井先生は前橋工業高等学校で、建設業人材確保・育成モデル事として「建築」に特化して、環境や構造特性、耐震技法や耐震診断を総合的に学習できるプログラムを展開されています。工業高校の生徒の就職先等進路及び就職後のキャリアアップなどの現状、工業高校の生徒が優秀な建設技術者・技能者にするための現在の取り組みはいかがでしょうか。

石井 建設業界をピラミッドと例えると、工業高校とは、その底辺に位置する存在でしょうか。底辺がしっかりしないと組織として回っていかないと常日頃感じています。そんな工業高校ですが、平成20年度から22年度までは、前橋工業高校では、国土交通省と文部科学省の支援を受けて「地域産業の担い手育成プロジェクト」に取り組みました。これは、ご周知の通り、工業高校などの専門高校と地域産業界が連携して、地域のものづくり産業を担う人材を育成するための事業です。さらに23年度は群馬県の支援を受けて「次代を担う職業人材育成事業」にも取り組みました。この結果として、本校の卒業生の就職者の10名中8名が建設業界に、進学者28名中20名が建設関連の学科に進みました。
 具体的なカリキュラムは、現場などに出向いての見学や実習でしたが、一定の成果を上げることができたと思います。長期の実習に参加し、そのまま就職が決まったケースもありました。さらに設計士や大工の棟梁など、現場で働くさまざまな人たちの体験談や実演、実技指導などを受講し、生徒たちには有意義な経験だったと思います。

――技能五輪でも大きな成果を挙げたと聞いております。

石井 ええ、プロジェクトに参加した当校の生徒が、平成22年度の「技能五輪全国大会」建築大工部門で銅賞を受賞することができました。これは高校生初の快挙になります。
 また、全国の工業高校では、その学校の実状に即した指導を実践し成果を上げています。
さらに加えると、東日本建築教育研究会でも、生徒の学習環境向上のためのさまざまな活動を実施しています。

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