人材確保・育成

技能の継承を考える(技能五輪全国大会編)|技術継承事例

苦手なところや弱点を探り出し、その部分を重点的に指導 | 向井建設株式会社

 「技能五輪全国大会」(昨年11月22~25日開催)の出場に向け選手を育成する企業の教育者として、向井建設株式会社 国重 徳美氏に「技能の継承」についてお話を伺いました。

苦手なところや弱点を探り出し、その部分を重点的に指導

向井建設株式会社 国重 徳美氏

 明治41年創業以来「とびの向井」として知られる向井建設。その中で長年とび職人として現場の最前線に立ち、現在は、労務安全部安全指導課で指導役として若手技術者の指導・育成に従事するのが、国重徳美さんです。これまで全国大会で2年連続の金メダリストを育成した経験もある訓練のスペシャリストです。

向井建設株式会社 国重 徳美氏

 


 

 技能五輪全国大会にとびの部門ができて5年になりますが、弊社は5年連続で出場しています。2012年は3名でしたが、今回は1名(橋本聖矢さん)です。私はその指導役として、大会前の1カ月間ほど彼の指導を担当しました。
 課題の発表は8月の末頃だったと思います。5時間以内に432ピースの材料(単管パイプなど)を使って小屋組を組み立てるという内容で、時間内に完成させられなかった場合は審査の対象外というルールです。ポイントは、いかに正確に、安全に、迅速に、そして美しく組み立てられるか。課題を時間内に完成させるためには、使用する材料の種類と長さ、数を覚えて、組み立てる手順を熟知する必要があります。さらに5時間という長丁場で、登ったり下りたり担いだり動き続ける体力も欠かせません。後半戦になると握力が落ち、腕や肩がパンパンに張り、作業のスピードも鈍ります。
 練習では、私が組み立てる順番とペース配分表を作成し、それに合わせるように組み立てるという作業を繰り返し行いました。4時間半ですべてを完了できるように「○○分経過した時点でどこのセクションまで終えるか」などと具体的な目標を設定し、ストップウォッチで計って苦手なところや弱点を探り出し、その部分を重点的に指導しました。432ピースですから、1ピース当たりに割ける時間はたったの35秒しかないわけです。それを考えると、今回の課題の大変さが分かると思います。技能五輪にとびが加えられて今回で5回目ですが、これまでの課題のなかでも最難関かもしれません。熟練のとび職人でも苦労するんじゃないでしょうか。
 練習すればするほど熟練することは間違いありませんが、1日に1回組み立てるのが限界ですから、それほど回数を重ねられないのが実状です。それでも大会前までに15日間(15回)ほど練習に費やしましたが、本音を言えば、もう少し回数を重ねたかったですね。

 

練習はすごく勉強になりました

とび職種/橋本 聖矢選手 (21歳)

とび職種/橋本 聖矢選手 (21歳)

 とび職歴は今年で3年目です。この仕事を選んだ最大のポイントは、「地図に残る仕事」だったから。地元は九州ですが、学校の先生に「東京でとび職やってみないか?」と勧められて「あ、行きます!」って。軽いノリで入社しましたが、とびは自分に合っているみたいですね。
 今回、技能五輪全国大会に出場するに当たって大先輩の国重さんに指導してもらいましたが、今まで気づかなかったことも多くすごく勉強になりました。素晴らしい経験で会社と国重さんに感謝の気持ちで一杯です。

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