広報

建設産業における戦略的広報の推進

「一人ひとりが広報パーソン」みんなで広げていく姿勢が大事

公益社団法人土木学会 100周年事業推進室 高橋 薫氏
(建設産業戦略的広報推進協議会 アドバイザー)

公益社団法人土木学会は今年11月24日、創立100周年を迎える。同会の100周年事業推進室の高橋氏は、広報全般のスペシャリストとして本協議会のアドバイザーを兼務しています。その高橋氏に、「建設産業における広報」についてお聞きしました。


発足から間もなく1年 協議会活動を振り返って

──これまでの協議会の活動を振り返っていかがでしたか。

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 協議会では、各団体を統合して建設産業の魅力を発信しようという目的に向かって、何度も顔を合わせて議論を重ねてきました。各団体が肝入りのコンテンツを出し合って、ホームページというカタチで1つの発信基地をつくることができたのです。また、それぞれがコンテンツの企画目的にあった見出しをつけて誘導するという視点で再構築したことも大きな成果だと思います。

──今後どのような展開を期待できますか。

 ワーキンググループなどで個別アクションプランを組んだ運営が期待できます。2 月17 日に協議会の活動を示すキャッチコピー「未来をつくる君たちへ」をデザインしたロゴマークが決定したので、このロゴマークを活用したリーフレットやステッカーを作れば、各協会さんも使ってくれると思います。ロゴマークを入れて、みんなが使いたくなるグッズを作るといいと思います。

──山口県庁職員の方から、建設業の広報をやっていく上で、このロゴマークを名刺に入れたいという話がありました。

 この活動が注目されているということですね。自由に使っていただくことで思わぬ広がりも期待できます。


志のある人たちが出会って、手を取り合って始まったら最高

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──土木学会100 周年記念事業について教えてください。

 記念事業の選定は、各地で開催されていた160以上の事業を集めカテゴリに分け、また、継続が期待できる事業を新規募集して、「社会安全」「社会貢献」「市民交流」「国際貢献」からなる30の事業が記念事業と決定されました。

 そして、まずは100周年特設ホームページを開設し、スペシャルコンテンツを作りました。土木学会初代会長・古市公威を紹介するコンテンツ、パソコンのカレンダー壁紙として写真家・大村拓也氏の作品がダウンロードできます。
 ぜひ、特設ホームページにも『建設現場へGO!』をリンクさせていただきたいです。
 『建設現場へGO!』は、子どもたちが見ても面白く、「職業選択」の際にも参考になるようなコンテンツも多いです。将来的にはナビゲーションをつけてもっと見やすく、親御さんや学校の先生も見てくださるようになると良いと思います。そこから興味を持った子どもや学生たちが、土木を仕事に選んでくれればうれしいですね。

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──「市民交流」では、どのようなことをされたのですか?

 市民交流事業では、土木が果たしてきた社会的、歴史的役割や土木の仕事の魅力、面白さを知っていただくために、近代日本を築いた構造物の貴重な手書きの図面や資料をパネルで展示公開する「土木コレクション」、商業施設などで土木実験やクイズラリーなど親子で楽しめるイベント「土木ふれあいフェスタ」、文化としてのドボクに興味ある若者と日常にさりげなく現れる土木に関する広い話題を提供する「どぼくカフェ」、各支部でのオリジナル企画などを組み合わせて企画しています。
1405_04_tokusyu_09.jpg 各地の会場ごとにワーキンググループを結成し、地元の建設に関わる団体の皆様にも協力を依頼しました。皆さん「この日のこの時間は私どもがこういう実験セットで受け持ちますよ」などと申し出てくださって、タイムスケジュールを組むことができました。
 一団体では限界がありますが、共感して協力してくれる人たちにこの機会に出会って、仲間となって継続できたら最高ですね。せっかく100年に一度のチャンスに生きて関わらせていただいているのですから。
 今はSNSなど個人でも情報の拡散が期待できるので、元となる情報を正しく整理して、ホームページや雑誌などの媒体を使って戦略的に広報していくことに力を入れていきます。

土木学会Facebook

ワンアクションが入るだけで楽しくなってくる!

──土木学会では創立100 周年記念事業でロゴマークを作って展開を図っていますが、どのように広めたのですか。

 最初に事務局で作ったのは小さいシールでした。当初は発表会などに来場いただいた方にシールを渡して「襟元に貼ってくださいね」などとお願いしたりしましたが、すぐに剥がれてしまうこともあり幹事会でピンバッジを作ることに決定しました。その後の展開では、唯一全会員の手元に届く土木学会誌(月刊)にピンバッジとクリアファイルを同封して郵送しました。
 ロゴマークは「ご自由に活用ください」と、誰でもダウンロードできるようにしています。目につく機会を増やしたいですからね。
 土木コレクションの展示会場では、アンケートに答えると「バッジかクリアファイルのどちらか」をもらえる仕組みです。画一的に配るよりも、「選ぶ」という、ワンアクションが入るだけで楽しくなってくるでしょ?
 主催する側も楽しめるようなものを仕掛けていけるといいですね。


創立100周年を記念したピンバッジ  100周年記念事業のクリアファイル
創立100周年を記念したピンバッジ  100周年記念事業のクリアファイル

情報を欲している人に届くような伝え方を考える

──建設業界の広報活動に対して、何かアドバイスをお願いします。

 “他の人からも見えるように”でしょうか。内部向け資料ではなく、媒体に取り上げてもらうにはどうすればいいのかという意識。東日本大震災の復興事業や東京オリンピックの開催に伴う建設工事、全国各地で大雨や土砂崩れといった災害が発生した場合の復旧工事など、さまざまな理由から、重機、人手が不足している建設業界の現状があります。
 世間に「建設業界の仕事の一部」が認知されてきましたが、その一方で、お子さんが「建設業で働きたい」と言っても、不安に思う親御さんもいるでしょう? しかし、災害現場などで具体的に貢献している仕事内容を知っていただければ見方も変わってくるはずです。

──高橋さんが考える広報のあるべき姿をお聞かせください。

 地道にやっていること、真面目な内容でも、その情報を求めている人に届くような方法、切り口を変えるとか、数字で表すなど、それができれば広がり方が違うと思うのです。
 もうひとつ大切なことは、業界に携わっている方々の意識。「一人ひとりが広報パーソン」だと思って、みんなが広報担当、みんなで口にだして広げていく姿勢が大事だと思います。

──最後に、若い人たちがこの業界を目指すようになるには、どうすればいいでしょう。

 実際に活動している姿を見てもらえる機会をつくることでしょうか。「人の役に立つ仕事に就きたい」と思っている学生は大勢いますから、「国や地域に貢献できる」というアプローチの仕方なら受けるイメージも変わると思いますよ。

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