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カンタン解説 建設業者のための建設工事請負関係判例

第9回 追加工事に関して生じる紛争には気をつけたい!

(財)建設業適正取引推進機構

建設工事請負契約は有償契約であり、しかも、予め請負金額を定めて書面による契約を行うことが、建設業法では要請されている(建設業法19条)。本件は、一定額の報酬を約定する請負工事契約がなされていたが、その他に報酬額を定めないで行われた部分があり、その部分が追加工事になるかどうかが争われたという事例である。
本件は、仕事の内容、慣行から別の請負契約に基づく工事と認定され、その金額も工事内容からして合理的な報酬額として支払うことが契約者の意思に合致すると判示された事例であるが、このような紛争の発生を防止するためにも、工事着手する前に契約内容を十分に検討した上で、必要項目を全て盛り込んだ書面により、建設工事請負契約を締結することが必要である。

事件の概要

  被控訴人㈱Y工務店が行った追加工事の一部(脱衣室及び廊下の床面及び建具等の美装並びに洗面所及び便所の壁塗り替え工事等)が、当初の請負工事(建物の各種補修工事)に含まれるか、別途の報酬額の定めのない請負契約に基づく追加工事であるかが争われた。

 

 

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控訴人の主張

㈱Y工務店が行った本件追加工事は、そもそも本工事に含まれる。また、本工事に含まれないとしても、㈱Y工務店は本件追加工事を無償で引き受けた。

■被控訴人の主張

X㈱の申出により、追加工事契約として承諾を得たものであり、別途請負契約が成立する。

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 本件追加工事は、本工事には含まれない。被控訴人(㈱Y工務店)が、本件追加工事を無償で引き受けたと認めることは無理である。

 本件のように報酬を定めない請負契約においては、当該請負工事の内容に照応する合理的な金額を報酬として支払うというのが契約当事者の通常の意思に適合すると解される。

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