
2012.11.20
第12回 付随的債務の不履行により、請負契約が解除されることに気を付けたい!
(財)建設業適正取引推進機構
本件は、一括賃借条件付きの賃貸店舗及び共同住宅の建設工事請負契約について、法令上の制限等に関する調査不足や施主に無断で行った設計変更等を原因とした契約の解除を認めた事例である。民法は、債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができるとしている(民法415条)が、法令上の制限等に関する調査不足等を付随的債務の不履行としながらも、原被告間の信頼関係は破壊され、施主の意向に沿った建物を建築するという契約の目的の達成自体にも重大な影響を与えているとして、契約の解除を認めたものであり、建設工事請負契約に関して債務不履行とされる範囲について、参考となる事例である。
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[経営に活かす管理会計]
2017.03.14
経営に活かす管理会計 第10回|管理会計の利用と人材育成の方法を変える
中小企業診断士・社会保険労務士 手島伸夫
競争の時代には、戦略的に№1になることが重要になります。市場では、価格と品質が良い1社しか受注できないからです。したがって、自社の「強いところ」をさらに強くして№1になるように経営資源を重点的に投下する「選択と集中」が重要になります。...続きを読む
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[経営に活かす管理会計]
2017.02.22
四国大学経営情報学部教授/㈱みどり合同経営取締役 藤井一郎
資金管理とは具体的にどのような活動なのでしょうか。『ファイナンス戦略』などと言われる資金調達手法の検討、投資効果の話を聞く機会が多いかもしれません。もちろん、それも正しい考え方の一つですが、...続きを読む
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[巻頭特集]
2017.02.17
金融支援事業のメニューである「下請セーフティネット債務保証事業」「地域建設業経営強化融資制度」などは、それぞれに利用メリット等の特徴があります。本頁では、制度をご利用いただいている企業および団体に制度利用の背景などについてお話を伺いました。...続きを読む
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[経営に活かす管理会計]
2017.01.30
経営に活かす管理会計 第8回|マネジメント・コントロール ―部門業績と組織業績の斉合性―
慶應義塾大学商学部教授 横田絵理
大規模な組織になり、その中の組織単位(部門)に大きな権限委譲がなされればなされるほど、組織全体の目標と組織内組織の目標を同じ方向にすることが難しくなります。...続きを読む


Xは、1階を賃貸店舗、2階及び3階を共同住宅とする3階建て建物の設計及び施工を、代金1億3,923万円でYに請け負わせた。この契約の前提として、Yが完成した建物を一括して賃借しYの名で賃貸事業を行い、Xが安定した家賃収入を確保することが合意されていた。
Yは、本件のような借上事業の一環として締結される建物建築工事契約については、施主側からの契約解除理由は制限的に解されるべきである、けだし、借上事業は、施主のみではなく施工業者にも利益をもたらすものであって、一般の住宅建築のように施主の意思のみを遵守することはできず、施工業者が将来得るであろう利益についてもこれを保護する要請が強く働くからであると主張した。
まず、裁判所は、Yが借上事業では契約解除事由は制限的にすべきであると主張した点については到底採用できないとし、前述の①から③についての事実を認定した上で、次のとおり判示した。
なお、併せて裁判所は、解除の範囲について、建物の建築工事請負契約につき、工事全体が未完成の間に注文者が請負人の債務不履行を理由に同契約を解除する場合において、工事内容が可分であり、しかも当事者が既施行部分の給付に関し利益を有するときは、特段の事情のない限り、既施工部分については契約を解除することができず、ただ未施工部分について契約の一部を解除することができるに過ぎないと解されるところ(最判昭和56年2月17日)、本件建物の工事は、杭工事が終了し、コンクリート工事に着手された程度であり、解除後も右既施工部分が利用されることはなく、本件土地も第三者に売却されたこと、また、同工事は法令上の制限について事実を誤認したまま設計がされ、原告の同意なく基礎の工法も変更されたものであることの事情からすると、本件請負契約の施主である原告Xが、本件建物の既工事部分の給付に関し利益を有するということはできず、かかる解除は本件請負契約の全部に及ぶものと解するのが相当であると判示した。




