お役立ち・支援

カンタン解説 建設業者のための建設工事請負関係判例

第10回 建設共同企業体が締結する契約は、構成員が連帯債務を負うことに気をつけたい!

(財)建設業適正取引推進機構

建設業における建設共同企業体は、多くの場合大規模な工事を共同連帯して施工するため複数の単独企業により結成されるものであり、このような建設共同企業体から発注を受け、その工事現場に建設資材を納入する販売業者としては、特段の事情がない限り、個々の構成員よりは建設共同企業体としての経済的信用をより重視し、これを前提として取引を行うのが通例であると考えられる。
本判決は、この認識を前提にして、公営住宅の建設工事請負契約に関し、破産した構成員が負担すべき建設共同企業体の債務につき他の組合員に連帯責任を認めた事例である。
その実質的理由として、組合員に分割責任の原則を徹底することは取引の安全を害することになりかねないと判示しており、建設共同企業体の構成員になる時には、知っておきたい判例である。

事件の概要

 被告Y建設㈱は、訴外A建設㈱と建設共同企業体(出資割合A建設㈱60%、Y建設㈱40%)を結成し、公営住宅工事を受注した。原告X商会㈱は本件建設共同企業体に建設資材を売り、売買代金残債権として141万円の債権を有していた。
 その後、A㈱が破産宣告を受けたので、X商会㈱は債権の届出をしたが一部しか配当を受けられなかったので、Y建設㈱に対し残代金を請求した。

1205_18_hanrei_title_b.jpg

1209_18_hanrei_1.jpg原告の主張

 X商会㈱との間で売買契約を締結する行為は、本件建設共同企業体の商行為であり、本件代金債務は商法511条1項により、構成員たるY建設㈱が連帯債務を負担する。

■被告の主張

 本件建設共同企業体は民法上の組合であるから、Y建設㈱は民法675条に基づき分割責任を負うにすぎない。

1205_18_hanrei_title_c.jpg

 建設共同企業体は、商法502条にいう「他人の為にする加工に関する行為」を営業として行うことを目的とし、両会社をその構成員として結成したものであるから、商行為を営業として行うことを目的とする民法上の組合であり、その組合員がいずれも商人資格を有することは明らかである。そして、本件建設共同企業体が原告との間で売買契約を締結して目的商品の納入を受ける行為は、同組合の営業のためにする附属的商行為にほかならない。

1209_18_hanrei_2.jpg

 

 商行為を営業として行うことを目的とする組合が商行為によって債務を負担し、各組合員も商人の資格を有する本件のような場合には、商法511条1項の適用を肯定すべきであるから、Y建設㈱及びA建設㈱は、各自本件代金について連帯債務を負担したものというべきである。

ページトップ

最新記事

  • 経営に活かす管理会計 第10回|管理会計の利用と人材育成の方法を変える

    経営に活かす管理会計 第10回|管理会計の利用と人材育成の方法を変える

    中小企業診断士・社会保険労務士 手島伸夫

    競争の時代には、戦略的に№1になることが重要になります。市場では、価格と品質が良い1社しか受注できないからです。したがって、自社の「強いところ」をさらに強くして№1になるように経営資源を重点的に投下する「選択と集中」が重要になります。...続きを読む

  • 経営に活かす管理会計 第9回|建設企業の資金管理

    経営に活かす管理会計 第9回|建設企業の資金管理

    四国大学経営情報学部教授/㈱みどり合同経営取締役 藤井一郎

    資金管理とは具体的にどのような活動なのでしょうか。『ファイナンス戦略』などと言われる資金調達手法の検討、投資効果の話を聞く機会が多いかもしれません。もちろん、それも正しい考え方の一つですが、...続きを読む

  • 金融支援事業の利用事例

    金融支援事業の利用事例

    金融支援事業のメニューである「下請セーフティネット債務保証事業」「地域建設業経営強化融資制度」などは、それぞれに利用メリット等の特徴があります。本頁では、制度をご利用いただいている企業および団体に制度利用の背景などについてお話を伺いました。...続きを読む

  • 金融支援事業

    金融支援事業

    国土交通省 土地・建設産業局 建設市場整備課 建設市場整備推進官 後藤 史一氏
    聞き手:建設業しんこう編集部

    建設業振興基金は、昭和50年、中小建設業者の金融の円滑化や、経営の近代化、合理化を推進し、建設産業の振興を図る組織として設立され金融支援事業の一つである債務保証事業はこの時スタートしました。...続きを読む

  • 経営に活かす管理会計 第8回|マネジメント・コントロール ―部門業績と組織業績の斉合性―

    経営に活かす管理会計 第8回|マネジメント・コントロール ―部門業績と組織業績の斉合性―

    慶應義塾大学商学部教授 横田絵理

    大規模な組織になり、その中の組織単位(部門)に大きな権限委譲がなされればなされるほど、組織全体の目標と組織内組織の目標を同じ方向にすることが難しくなります。...続きを読む

最新記事一覧へ