建設業特有のコスト管理や会計処理を理解し実践できる資格として、多くの建設企業が推奨しているのが「建設業経理検定」です。同検定は誰でも受験可能で、取得すると公共工事の入札などで経営事項審査の評価対象となるなど多くのメリットがあり、企業からの評価も高く利益管理のできる有能なスタッフの育成にもつながります。本特集では建設業経理検定の概要を紹介します。
制度概要
建設業経理検定試験とは何か
建設企業は品質の優れた建物や道路などを造ることが最も大切な仕事ですが、工事ごとにコスト管理をしっかりと行い、一定の利益を上げなければ会社は存続できません。こうした建設業特有のコスト管理、会計処理等を理解し実践するためのスキルを持つ資格として、注目されているのが建設業経理検定です。建設業経理検定試験は1級から4級まであり、合格級によって称号が異なります。
建設業経理検定試験が注目される理由
国土交通省の「建設業の構造分析(平成24年)」によると、建設企業の経営上の課題で最も多かった回答は受注競争の激化による利益率の低下(86.2%)です。そのため、施工計画書等の作成と併せて実行予算書の作成、工事の進捗に合わせた実際発生原価と目標原価との比較・改善等を行う必要があります。このような専門スキルを発揮し、工事原価の把握・管理を通じた経営改善を担うのが建設業経理士です。
評価が高まる資格取得者
当財団が建設業経理士取得者に対して行った調査によると「所属する建設企業から資格手当もしくは資格取得一時金が支給されている」と回答した人は60%にも上っています。1級・2級は経営事項審査の評価項目となっていることから、建設企業は積極的に取得を推奨しています。
経営事項審査
経営規模、経営状況、技術力、社会性等の4分野が総合的に評価され、審査対象企業に対して点数が付されます。建設業経理士は次の2つの審査項目で加点されます。
1.公認会計士等数
1級または2級建設業経理士の資格を有する役員・従業員の数により加点評価。
2.監査の受審状況
建設企業に所属する1級建設業経理士の資格を有した役職員が決算書に誤りがないことを確認し、署名捺印することにより加点評価。
3級・4級は加点対象ではありませんが、就職活動に有利になり、就職後に上位級を目指すためにも在学中に取得しておくことはたいへん有益です。また(公社)全国工業高等学校長協会のジュニアマイスター顕彰制度の得点対象になっています(3級:4点、4級:1点)。
資格を取得するには
資格を取得するには、次の2つの方法があります。
❶ 自分で学習(1級から4級)
全国で開催している「検定試験」に合格する
▶︎ 詳しくは 資格を取得するには...① 検定試験 受験の手引き「1・2・3・4級(自分で学習)」
❷ 特別研修に参加(3級・4級)
全国で開催している「特別研修(企業・学校に向けた出前講座も実施します)」に参加し、最終日の試験に合格する
▶︎ 詳しくは 資格を取得するには...② 検定試験 受験の手引き「特別研修(3・4級)」
実施状況
受験者・合格者数
アンケート結果(1級・2級)■実施日:2016年2月11日 ■対象者:1級または2級資格取得者 97名
合格者の声
有識者からのメッセージ
南 武博 氏 (南 武博 会計事務所 税理士 兼 大阪経済法科大学 講師 )
建設業経理士(1級・2級)を取得すると......公共工事の入札資格となる経営事項審査の点数に加点されます。そのため、多くの建設会社では、資格手当を支給しているようです。会社にとっても、資格を取った人にとっても、メリットになるのではないでしょうか?
経理や現場事務に携わる人にとっては、取引の流れや工事原価管理など、実際の仕事に役立ちます。建設業経理知識の習得により、儲けやキャッシュ・フローが理解でき、今後の経営のあり方や進むべき経営の方針等を決めることが可能となります。決算書の財務データを分析し、自社の財務状況を把握し、それを経営に活かすという意味で、特に経理担当者にとって不可欠な知識だと思います。
また、経理以外の分野の人にとっては、財務・会計といった視点を養うことにより、自分自身のスキルアップにもつながるだけでなく、仕事の幅が広がっていきます。実際、経営者や経理以外の管理職、就職活動を控えた学生さんも意欲的に学習しています。