取組み事例報告
マンション計画修繕施工協会の取り組み
(一社)マンション計画修繕施工協会
常務理事兼事務局長
中野谷 昌司 氏
当協会は、平成20(2008)年にマンションの計画修繕に特化した中小の建設業者の団体として設立され、平成26年6月に建設業振興基金が創設した「
建築施工管理CPD制度
」を活用しています。今回は、当協会における「CPD制度活用の経緯」と「今後進めていこうと考えている取り組み」についてお話しします。
公平性の担保に「建築施工管理CPD制度」を活用したい
現在、マンションのストック数は全国に610万戸以上あるといわれています。国土交通省は昨年、社会的なメンテナンスニーズの増大を受け、業者の水準を保つ目的で「住宅リフォーム事業者団体登録制度」を告示し、当協会も第1号団体として参画しました。その中で、登録事業者団体が会員に対し教育研修を行うこと、およびその報告書の提出が義務化され、教育研修実績の見える化を図りたいと考えました。その時に建設業振興基金の「建築施工管理CPD制度」を知り、「第三者性及び公平性を担保したい」という観点からCPD制度の導入を決めたわけです。
また、マンションの修繕には、改修工事に必要な知識はもちろんのこと、その物件が建てられた当時に用いられた法規、工法、基準、外壁材料など、幅広い知識が必要なのです。幅広い知識が求められますが、公に修得する場が少ないのが現状です。そうした知識を積極的に取り入れる場として、受講意欲の向上にも、CPD制度を活用したいと考えました。
「ヴィンテージマンションプロジェクト」を開始
第1回マンションクリエイティブリフォーム賞特別賞受賞作品:㈱青木茂建築工房
【マンションクリエイティブリフォーム賞】 平成23年から同協会が実施する表彰制度。分譲マンションの計画修繕工事において、創意工夫がなされ、人に、建物に優しく、誠実に行われた工事の施工者、現場担当者、設計監理者、管理組合を表彰し、より良いマンションストックの形成に寄与することを目的としたもの。
次に、これから進めていこうと考えている取り組みについて述べます。その1つが、この業界を魅力ある業界にするための新プロジェクト「ヴィンテージマンションプロジェクト」です。これまで「修繕」といえば、単に「直す」ものでしたが、「ただ直すだけ」でなく新たな価値を付加することで「古くても魅力あるもの=ヴィンテージ」という発想の転換で生まれたのが、このプロジェクトです。業界内に「クリエイティブリフォーム賞」という表彰制度があります。例えば、築40年のマンションでも新築並みにきれいにできます。これから実施していく継続教育では、古くてもいいものにしていくためのデザインセンスなど、自己研鑽のための教育手段としてCPDを活用していきます。
こうした取り組みを通じて、この業界に若年者層や女性の入職が増えることも期待しています。特にリフォームでは、お客様にとって、同じ目線で見られる女性がいるというのは大変心強いことです。まだまだやらなければならない課題は山積みですが、この継続教育を活用して改修業界の確立と発展につなげていきたいと思います。
開会挨拶
建設系CPD協議会
会長 岩崎 和己 氏
同協議会は2003年、建設系分野に係わる技術者の能力の維持・向上を支援するため、関係学会および協会間でのCPDの推進に係わる連絡や調整を図るために設立された。「各分野の技術者が自ら資質の向上を図り、社会基盤や地域資源を守り、後世に伝えていくことが重要」
【取組み事例報告】プログラム提供者の立場から
継続教育への取り組みに関する現状・課題そして今後の方向性
(公社)日本都市計画学会
事務局長代理 吉田 充 氏
認定プログラム数は毎年140前後で推移。国立大学などの教育機関をはじめ、より市民に近い「まちづくりNPO」など業界関係機関以外からも提供を受けている。今後の課題は、関東に偏りがちな認定プログラムの開催地を全国均等にしていくこと、講習会・論文発表以外のプログラムのさらなる充実。
【取組み事例報告】プログラム提供者の立場から
良質な講習会の開催のために
(一社)全国土木施工管理技士会連合会
専務理事 猪熊 明 氏
同会が運営する「CPDS」は、「講師のデータベース化」と「講習会レビュー(評価)システム」により、質の高い講師・講習会の提供を目指している。これらのデータを蓄積・活用し、講師の質の向上を図ることで、利用者にとってより使い勝手の良いシステムを構築することが今後の目標。
【取組み事例報告】プログラム利用者の立場から
鹿島建設におけるCPDへの取組
鹿島建設㈱
土木管理本部土木企画部経営基盤グループ長 保田 祐司 氏
同社では土木学会のCPD制度を推奨。総合職社員の土木学会入会率が85%と高く、学会の活動がCPDポイントとして認められるなど使い勝手が良いため。全国会議や研修時にCPDの登録方法を実演し、各支店にCPD担当者を配置するなど社員への利用促進を図っている。
【取組み事例報告】プログラム利用者の立場から
取組み事例 プログラム利用者の立場から
八千代エンジニヤリング㈱
技術推進本部技術管理部技術管理課長 佐々木 克尚 氏
建設コンサルタンツ協会のCPD制度を推奨。企業内研修を受講できなかった社員への対応として、認定プログラムのビデオ撮影を義務化し、YouTubeにアップロード、後日、ビデオによる受講者からの連絡によりCPD参加証を送付するという対策を取っている。
【取組み事例報告】プログラム利用者の立場から
建築士会CPD制度
㈱山下設計
企画営業部門主管 三宅 信夫 氏
2010年から社内研修型CPDへの取組みを開始。設計担当者がCPDに登録し、同社にとって必要な技術的分野などを考案、企画本部が企画・運営を担当し、月2回程講習会を開催。当日は関係者へメール連絡、社内放送にて通達、また遠隔地へはTV会議システムで対応。
パネルディスカッション
建設系CPD協議会の岩崎会長を司会に、国交省・富山氏と、取組み事例報告者(6名)によるパネルディスカッションを開催。「CPD単位を取得したところで、直接個人が評価されるような制度にはなっておらず、目先のモチベーションになりづらい」(保田氏)、「大学のカリキュラムのように、レベル・ニーズに合った教育システムを体系化することでより信頼性の高いシステムになる」(富山氏)といった意見が出た。
閉会挨拶
建設系CPD協議会
副会長 高木 譲一 氏
「近年頻発する自然災害の現場に行くと、人間を守るのはモノであり、モノをつくるのは人間ということが分かる。モノと人間は車輪の両輪であり、その技術を維持し高める仕組みとしてCPDは重要で、その認知と普及が不可欠。関係各位の一層の尽力をお願いしたい」