一昨年8月に国土交通省及び建設業5団体(※1)では、『女性技術者・技能者の5年以内の倍増』を官民挙げた目標として掲げ、「もっと女性が活躍できる建設業行動計画」を策定しました。女性が働きやすい現場や業界にしていくことは、男女問わず誰もが働きやすい環境づくりに繋がります。更には、建設業が性別・世代を問わずより魅力的な産業となり、担い手確保に向けた原動力となることが期待されます。こうした好循環を業界全体で生み出していくためにも、計画ではさまざまな戦略が盛り込まれています。
※1 (一社)日本建設業連合会、 (一社)全国建設業協会
(一社)全国中小建設業協会、 (一社)建設産業専門団体連合会
(一社)全国建設産業団体連合会
女性活躍推進のために効果的と思われる取組とは
昨年、国土交通省からの委託により本財団では、建設業5団体等(※2)を通じて、会員企業等へ「建設業における女性の活躍推進に関する取組実態調査(※3)」を行いました。
女性の活躍支援のため効果的と思われる取組として、トップに挙がったのが「家庭との両立を配慮した労働時間の見直し」(56.7%)。以下「女性に適したハード環境整備の導入」(49.0%)、「家庭との両立を配慮した休暇取得制度の整備」(43.0%)となっています。
従業員規模別では300人未満の企業は全体と同じ傾向ですが、300人以上の企業では「将来が描けるロールモデルづくり」(51.5%)、「経営者や男性上司向け研修」(43.9%)が挙げられています。
※2 (一社)日本建設業連合会、 (一社)全国建設業協会、 (一社)全国中小建設業協会
(一社)建設産業専門団体連合会、 (一社)全国建設産業団体連合会、 (一社)住宅生産団体連合会
(一社)JBNジャパン・ビルダーズ・ネットワーク、 全国建設労働組合総連合
※3「建設業における女性の活躍推進に関する取組実態調査」調査結果
http://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo13_hh_000381.html
効果的だと思う取組(全体)
応援メッセージ
PROFILE
建設業をはじめ企業法人に向けた女性活躍推進に関するコンサルティング、教育研修を提供。自治体や大学での講演多数。著書「輝く会社のための女性活躍推進ハンドブック」Discover21
もっと女性が活躍できる"ハズ"の建設業 〜登用促進に向けた取り組みとは〜
清水 レナ
女性活躍推進コンサルタント 株式会社CHANCE for ONE 代表取締役社長
建設業で女性の管理職登用が必要な理由
日本国内のあらゆる企業は、超高齢社会と働き手の減少に伴い、「働き手が確保出来ない」という課題に直面しつつあります。働き手の確保ができなければ、企業はその活動を続けることができません。企業の生き残りのためにも、今こそ女性の活躍が必要なのです。
一方、これまで建設業は、男性主体で成り立ってきました。企業規模に関わらず、管理職のほぼ全員を男性が占めているのが現状です。
もっと女性が就業し、 定着し、活躍できる建設業になるためにも、管理職に女性が登用されることが必要です。なぜならば、管理職に登用された女性たちが、男性主体の企業環境を変えていき、その結果、全ての女性の活躍が推進されることが期待できるからです。
登用を目指す上で押さえておくべきポイントを ❶制度支援 ❷機会創出 ❸女性自身の意識醸成、の3つの領域に分けて提言します。
❶ 制度支援 定着のための定着から、登用に向けた定着へ
近年、建設会社においても女性活躍推進という名目のもと、育児休業制度の充実や時短勤務期間の延長等「時間的制約条件がある女性でも働きやすい環境作り」が積極的に行われてきました。その結果、辞める女性は少なくなったが「細く働く」という女性社員を増やすことを後押ししている側面もあります。
女性管理職率を高めていくためには、「時間的制約条件がある女性でも働きやすい制度や環境作り」だけではなく、「時間的制約条件がある女性でもキャリア志向を維持しながら働き続けられる制度や環境作り」といった視点での取組を行い、結果、あらゆる価値観を持った女性たちが活躍できる組織作りを目指すことが必要です。
また、現状、多くの企業では、「時間的な制約条件がない」ことを前提とした管理職登用の制度を敷いています。一方で、家事労働や育児の負担が女性に偏っており、仕事への意欲が高くても限られた時間でしか働けないのが日本の女性の現状です。これから、女性管理職率を高めるためには「長時間労働を厭わない」という管理職登用の前提を覆す考え方も必要ではないでしょうか。
❷ 機会創出 女性にもチャンスを与えて鍛える
女性部下に不慣れな上司の「女性には難しすぎるであろう」「女性には無理ではないか」という"配慮"の結果、女性には難易度の高い仕事へのチャレンジの機会が与えられていない職場も多くあります。入社時に優秀さと意欲を見込まれて入社した女性社員が、最も成長できる時期に経験が積めておらず、結果、管理職適正年齢に管理職に必要な経験が足りていない、ということが起きているのです。
女性が管理職に登用されない理由に「管理職に相応しい人材がいない」ことを挙げる企業は多いのですが、「管理職に相応しい人材に育つためのチャレンジの機会」を女性に与えているか、という視点についても見直す必要があります。
そのためにも、女性部下を育成する立場にある上司を対象にした周知啓発セミナーやマネジメント力強化のトレーニング等も行う必要があるでしょう。
❸ 女性自身の意識醸成 経験差が埋まるまでは特別な支援を行う
女性活躍の取り組みとして、女性のための設備や備品の拡充だけを重点的に行なっている企業も見受けられます。確かに、女性を受け入れるインフラ整備という意味では効果がありますが、取り組みがこれらに限定していては女性管理職は増えません。
また、これまでの背景もあり、「自分は期待されていない」「能力がない」と思い込んでいる女性も多くいます。実際、同世代の男性社員に比べて経験が足りていない場合もあります。
女性管理職率を高めていくために、経験不足やスキル不足が埋まるまでの間は、女性向けのリーダーシップ教育や育成の仕組み作り等、特別な支援を行うことも必要です。