基金の活動

地域建設産業の現状[中部・北陸地区]

地域建設産業の現状[中部・北陸地区]

(社)岐阜県建設業協会 会長 小川 弘
(社)富山県建設業協会 会長 近藤 駿明
(一財)建設業振興基金 理事長 内田 俊一

 日本各地の建設産業の現状を取材し、お伝えする「地域建設産業の現状」シリーズ。3回目の今回は、中部・北陸地区を取り上げます。巻頭インタビューでは、岐阜県建設業協会の小川会長、富山県建設業協会の近藤会長のお二人に、地域の建設業者の現状や抱えている課題などについてお聞きしました。

 

 

建設業の担い手の育成をどうするべきか?


担い手育成の取り組み

内田 これは広報としてはちょっと外れるのかもしれないのですが、工業高校の先生たちとの意見交換はどうでしょう?
小川 あります。高専や工業高校の先生たちとの打ち合わせは積極的に行っています。
内田 それはどういったテーマで?
小川 生徒数が増えないとか、土木や建築の実態を知ってもらうための現場見学会とか、あるいは講習会を開いてみてはどうか……など、いろいろですね。我々も名古屋や国立の専門高校へ講師として行きますが、先生の授業より役に立つ、といった声もあります。
内田 それは毎年やっておられるのですか?
小川 1年毎の契約でやっています。
内田 建設産業の担い手育成のために、業界全体でどう取り組んでいけばいいとお考えですか? 昔はベテランに若い人をつけて、現場で教えていましたが、今は建設業界の人が減ったために現場で教える余裕がなくなったという状況でしょうか。
小川 わたしが20代で現場で働いていた頃は、役所の設計者が頻繁に現場を訪れていました。指示も細かく出して。
内田 内容の悪い設計はどうされているのですか?
小川 悪いと伝えるのですが、直してもらえないこともあります。以前は県も、必ず若い人が現場に付いていました。だから2~3年後その人たちが設計をやったときに、現場を知っていたのです。今は1度も現場を見に来ないのに設計をしているような状況です。
内田 現場で鍛えられていないのですね。
小川 そうです。それに加え、必要な資格が多い。
内田 会長の会社では、若い技術社員の育成をどうされていますか。
小川 資格取得のための勉強会と、現場に優秀な人材を配置することですね。大変なので3カ月で辞めてしまう人もいます。昔は一通り教え込まれたものですが、今は型枠・堀り方・鉄筋など分業になってしまっているので、これは問題だと思います。

 

正会員は12地区協会すべて社団法人化に


小川会長

内田 岐阜県建設業協会は、他の都道府県とは少々異なる体制ですね。
小川 12地区協会すべて一般社団法人になっています。
内田 支部ではなくて?
小川 地区協会という呼び方をしておりまして、一般社団法人化しております。総会イコール理事会です。各地区協会に所属している会員は皆さん協会員としては認めていますが、実際の権限があるのは一般社団法人だけなので、正会員は12です。理事会をやっていて総会に切り替わることもよくありますね。決議事項はたくさんありますから。
内田 どういった理由で?
小川 もし正会員が何百人ともなると、「総会が大変だ」「まとまるものもまとまらない」といった意見があり、正会員は12地区協会の一般社団法人にしました。しかし、この十数年は大変でしたね。会員は皆さん、生きていくのがやっとという感じで。ただ、建設業者というのは非常にあっけらかんとしていますね。言い方は悪いですが、お金を貯めることを知らない。賢い団体は、お金を貯めて銀行まで作ったところもある。我々は、助けが必要なら身銭を切ってでも助けようとして、結局、自分たちは何も残っていない。建設業者がもう少しきちっとしていたら建設銀行といったものができたと思いますよ。
内田 そうかもしれませんね。

 

社員に思いやりのある会社を目指したい


若い技術者

内田 今、会長の会社は土日が休みですか。
小川 できるかぎり休むような運動をしています。私のひとつの目標は、土日・祭日は休みを取ることですね。その実現にはどうすればいいか、社員全員で真剣に考えようとしています。また、当社は生計手当てを出していて、子どもが生まれた時、幼稚園・小・中・高等学校に行った時などに支給しています。建設業では珍しいと思います。それから女性社員が出産した場合、産休後の復職を認めているのですが、それでも女性が育たないのです。
内田 女性の管理職は?
小川 女性の管理職は今一人しかいません。建設業を変えるために、女性を増やさなければならないと考え、4~5年前から高等学校、短大や女子大に赴いて女性確保に取り組んでいます。建設業の雰囲気を変えたいのです。これに加え、役所並みに土日・祭日は休んで、平日だけで自分の仕事を消化するかというテーマを掲げています。また、残業をなくすような仕組みも作ろうとしていますよ。
内田 どのような会社づくりを目指していますか。
小川 社員が自分の子どもや身内をわが社に入れるような会社づくりを目指しています。若い人に思いやりのある、風通しの良い職場作りをすることがわたしの主義です。それから社訓も簡単に直しました。『汗出せ、知恵出せ、真面目に働け』です。難しいことを書いたところで頭に入らなかったら意味がありませんから。
内田 そうですね。
小川 先輩後輩で教え合うことを推奨していますが、これは社員の友情を深めるための方針です。最後にどうしても言っておきたいのは、建設産業における資格について。一級土木を取ろうが一級建築を取ろうが、それに終わらずに、いろいろな資格が必要とされているでしょう? でも、資格尊重はどうかと思います。多くの資格を必要とするのは、即刻やめるべきだと思います。
内田 分かりました。本日は長時間、ありがとうございました。

 

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