基金の活動

地域建設産業の現状[中部・北陸地区]

地域建設産業の現状[中部・北陸地区]

(社)岐阜県建設業協会 会長 小川 弘
(社)富山県建設業協会 会長 近藤 駿明
(一財)建設業振興基金 理事長 内田 俊一

 日本各地の建設産業の現状を取材し、お伝えする「地域建設産業の現状」シリーズ。3回目の今回は、中部・北陸地区を取り上げます。巻頭インタビューでは、岐阜県建設業協会の小川会長、富山県建設業協会の近藤会長のお二人に、地域の建設業者の現状や抱えている課題などについてお聞きしました。

 

 

企業にとって負担が多い除雪作業

内田 除雪作業はどうでしょうか。
近藤 早朝、人々が動き出す前に行われているので住民にはなかなか苦労を分かって頂きにくいですね。確かに行政からお金をもらってやっていますが、実際には採算がとれないことも多く、苦労しています。
内田 マスコミの方々を現場に連れていって見てもらうような工夫が必要かもしれませんね。
近藤 昔は雪が降ると、自宅の前は自分で除雪するというのが当たり前でした。それが機械や融雪装置の導入に伴い、行政や建設業者などに依存するようになってしまった。やってもらって当然という風潮です。
内田 除雪の現状はどうなっているのでしょうか。
近藤 除雪機械は稼動しなくても、固定費として車検や保険で何十万もかかってしまいます。除雪機械の維持には負担が多く、またオペレーターの高齢化等もあり企業は除雪を続けて行くことが限界にきています。県では、平成19年から機械管理費として固定費が支払われるようになりました。しかし、それでも足りません。というのも、運転経費は実際に除雪出動した分しか支払われません。また除雪の必要性を判断するため、情報連絡業務が必要となりますが、これにかかる費用については出動した場合支払われませんでした。
内田 厳しいですね。
近藤 しかし、これについても支払われるようになるなど、県において制度の見直しに取組んでいただいていますが、それでも赤字のところはあります。黒字になるのは、かなりの頻度で恒常的に出動要請がある県内の山間部だけです。安定した除雪体制の維持には、除雪業務だけでも利益がでる制度が必要不可欠です。
内田 県民市民を巻き込む形で何かできればいいですね。
近藤 以前除雪作業は、地域の方から感謝されましが、昨今は苦情やクレームが多く寄せられるようになり、残念ながら除雪に対する地域住民の認識が大きく変化しています。除雪への理解を求めるには、我々業界だけでは限界があると感じており、官民挙げた戦略的な啓発活動の取組みが必要だと考えています。

建設業の人材確保・育成をどのようにするべきか?

内田 続いて技術者についてお聞きします。ゼネコンとかコンサル業界にいた30代前半ぐらいの働き盛りの技術者が、安定性を求めて、公務員試験を受けて行政に行ってしまったという話をよく聞きます。
近藤 当社でもあります。
内田 会長の会社では、技術者はどちらから採用されますか。
近藤 高等学校や高等専門学校、大学の場合、富山大学に工学部はありますが土木科も建築科もありません。ですから、土木は新潟大、金沢大などから。建築ですと福井大などですね。
内田 富山は砂防や河川工事が盛んですが、なぜないのでしょうか。
近藤 県も富山大学に粘り強く土木や建築の学科の設置について要請してくれたのですが、結局実現しませんでした。

内田 建設業界は男社会と言われる古い体質がありますが、今後は女性の力を借りていくこともお考えですか。
近藤 ええ、もちろんです。むしろ女性のほうが辛抱強く、意欲的な人が多い。初めて採用する時は、女性でも大丈夫かと思ったのですが、徐々に逞しくなってきており、当社では女性も技術者として現場に出ていますし、社内では積算担当者もいます。
内田 女性も含めて、建設業界に若い人たちを取り込むためには、明るい未来を感じさせる業界にする必要があるでしょうね。業界が一致団結して頑張りましょう。本日はありがとうございました。

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