基金の活動

地域建設産業の現状[中部・北陸地区]

地域建設産業の現状[中部・北陸地区]

(社)岐阜県建設業協会 会長 小川 弘
(社)富山県建設業協会 会長 近藤 駿明
(一財)建設業振興基金 理事長 内田 俊一

 日本各地の建設産業の現状を取材し、お伝えする「地域建設産業の現状」シリーズ。3回目の今回は、中部・北陸地区を取り上げます。巻頭インタビューでは、岐阜県建設業協会の小川会長、富山県建設業協会の近藤会長のお二人に、地域の建設業者の現状や抱えている課題などについてお聞きしました。

 

先進的な「緊急防災」と地道な広報活動に取り組む

「緊急防災隊」を立ち上げ東海4県での連携体制を確立

緊急防災隊

緊急防災隊

内田 岐阜県といえば木曽三川をすぐ思い浮かべます。古くから災害への意識は高いように思いますが、建設業協会の緊急災害時における対応はどうでしょうか?
小川 実は、日本で最初に「緊急防災隊」を立ち上げたのは岐阜県なんです。緊急防災隊は12の地区協会に支部があり、県内災害の際にはお互いにサポートし合う仕組みです。阪神淡路大震災の時には、我々が日本で最初に援助物資を運びました。「緊急」の旗を立ててトラックに「緊急物資」の文字を入れて、水や毛布を神戸市役所まで運びました。1976(昭和51)年に起こった安八水害で堤防が決壊した際は私が陣頭指揮を取り、4日間で仮堤防を作りました。
内田 緊急防災隊というのは?
小川 もともとは「水防隊」という名称で緊急災害時に出動することを目的に発足しました。しばらくして「緊急防災隊」という名前に変更し、同時に愛知県と三重県に対し、東海三県で災害時における連携を取ろうと働きかけました。その後、東海沖地震の発生に備え、静岡県を加えた4県で再編成したのです。
 例えば、静岡で大災害が発生し、県自身の身動きが取れない場合、海側から三重県が、陸からは岐阜県と愛知県が行くとか、そういった連携体制を4県合同で作ったのです。

 

災害対応

内田 岐阜県の建設業者さんのはどうなっていますか。
小川 小規模の業者が大半で、トンネルやダムといった大きな工事には対応できません。そこで、当時の知事からの要請などもあって、平成8年に「一般社団法人 岐阜県特殊工事技術協会」を立ち上げ、今も私がその会長を務めています。また、岐阜県道路・舗装技術協会についても私が会長を兼務しています。

緊急防災隊 体制図(クリックで拡大)

緊急防災隊 体制図(クリックで拡大)

緊急防災隊 広報冊子(クリックで拡大)

緊急防災隊 広報冊子(クリックで拡大)

会社が少々不景気でも防災活動はきっちりやる!

内田 小川会長は、岐阜県建設業協会の会長職に就かれて7年、その間に協会が直面する問題もいろいろ変わってきたと思いますが。
小川 そうですね。不況下では、決して行政と協会の関係が良好とは言えなかったです。とにかく岐阜県の財政が赤字でしたし、公共工事に大金を出せませんからね。岐阜県の協会員の大半が公共工事で生計を立てていたので、公共工事の急激な減少により、協会員の数は平成14年から10年間で140社くらい減りました。
内田 厳しい現状ですね。
小川 こうした中、県の一般会計当初予算が12年ぶりに対前年を上回り、やっと今年度から予算が増加したので少し安堵しています。
内田 不況が続いて建設業界が疲弊をした結果、地域を守る力が弱くなったのではとよく言われますね。防災隊の現状はどうでしょう?
小川 昔の6割程度の人員で、確かに人数的な弱体化は否めませんが、少しでも何かが起こると支部協会間で連絡を取り合うという体制は、今も崩れていません。警報が発令されると、緊急防災隊は本部(岐阜県建設業協会)に最低でも3~5人は待機します。ただ、大災害となると対応は少し厳しいものがありますね。
内田 重機はどうでしょう?
小川 重機を売って、必要な時だけ重機をリースするという会社が多くなりました。今一番困っているのはトラック。採算が全然合わないのです。しかし、これまでの歴史があり、緊急防災隊で世の中のためになりたいという意識が高く、会社が少々不景気でも防災はきっちりやろうと思っている人が多いのです。

子どもたちを中心に広報活動を展開


子どもけんせつ 110番

内田 小川会長はこれまでいろいろな広報活動に取り組んでこられていますが、一番手ごたえがあったものは何でしょうか?
小川 小中高の子どもたちに道路やトンネルの工事現場、アスファルト、リサイクル工場などを見学させたことですね。子どもたちは非常に興味を持ってくれました。親御さんも、実際に見学することでそれまで持っていた建設業界のイメージと違うことに驚き、認識を改めたようです。また現場事務所では、小・中学生が不審者に遭遇したときに駆け込めるようにステッカーを貼る取り組みも行っています。
内田 「子ども110番の家」のステッカーですね。
小川 そうです。通学路に現場事務所がある場合、「何かあったら駆け込むように」と話をしております。見学会は年に10回ほど開催していますが、地道に我々の活動を広めることが一番だと思いますよ。
内田 そういうときは県や市に話をされるのですか? 学校でしょうか?
小川 学校ですね。あるいは新聞に「今度この地区で現場見学会を開催する」といった情報を載せたり、市の広報で流してもらったり。学校以外でも、うちの会社で「お母さんと一緒に行う見学会」を開催していますが、毎回30~40人集まって盛況ですよ。
内田 素晴らしいですね。
小川 見学会の現場も、大きい現場と普通の現場を選んで、皆さんとクイズをしたりして、なかなか人気ですよ。初めはぎこちなかった社員も、回数を重ねるごとに上達してきて。
内田 地域の方々も、「建設業で働く人は怖い」と思っていた人が、「意外と優しい」とか、そういった効果もあるかもしれませんね。
小川 そうですね。今は、現場が学童の通学路の場合、必ず学校との打ち合わせを設け、「学童が通るときはこうする」「学校が始まるまでは作業に取り掛からない」などの申し合わせをしています。

 
 

高校生向け現場見学会

 

 

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