公共施設をどのような方法で造って維持するか。歴史的には直轄方式、直営方式、設計・施工分離方式、設計・施工方式、PPP方式というように、発注者の内部組織が中核的役割を持った時代を経て、外部組織の活用度を次第に高める方向へ変化してきた。現行法令では、予決令第79条(予定価格の作成)において、仕様書、設計書等によって予定価格を算定することとされ、仕様発注方式をとっている。このため、設計までのプロセスを発注者側で行って仕様書及び設計書を用意し、これをもとに施工を外注する形が基本となっている。施工発注の形は、一式発注と工種別分離発注に分かれるが、一式発注が支配的である。分離発注は設備工事で採られる場合が多い※。
なお、技術提案を求める競争入札方式では仕様が決まらない段階で競争手続に入る場合、予定価格の決定は、技術提案を採択し仕様が固まった段階で行われることになる(図表2)。
※日本では明治以来、一式請負の能力獲得を目指して請負業者が発展してきた。日本、英国、米国では一式請負が一般的である。一方、ドイツ、フランスなどでは工種別分離発注が一般的である。歴史的に工種ごとの職人組織が強い力を保ってきたことが背景をなしている。ビル工事では200を超える工種別請負契約になり発注者の負担が大きい。
会計法及び地方自治法は、「公告して入札に付する」として一般競争入札を原則としており、指名競争入札と随意契約はあくまでも例外であって、政令又は施行規則で定める次のいずれかの場合に使うことができる。法令では工事の調達に関して、この3方式以外を認めていない。
指定競争入札
①競争参加者が少数で一般競争に付する必要がない場合
②一般競争入札に付することが不利と認められる場合
③予定価格が500万円以下
随意契約
①契約の性質又は目的が競争を許さない場合
②緊急の必要により競争に付することができない場合
③競争に付することが不利と認められる場合
④国の行為を秘密にする必要があるとき
⑤予定価格が250万円以下
会計法、地方自治法が定める落札基準は図表1の通りであるが、例外措置として低価格入札に対処する低入札価格調査・最低制限価格の制度と、品質確保のために総合評価方式として広く採用されるに至った価格その他の条件による落札が実務的には大きな意味を持っている。
国の低入札価格調査基準価格は、平成25年5月の改定により、予定価格算出の基礎となった次の①から④の合計額とされている。ただし、合計額が予定価格の9/10を超える場合は9/10、また、7/10に満たない場合は7/10となる。
①直接工事費に10分の9.5を乗じた額
②共通仮設費に10分の9を乗じた額
③現場管理費に10分の8を乗じた額
④一般管理費に10分の5.5を乗じた額
地方公共団体では、低価格入札に対しては、低入札価格調査による採否決定のほか最低制限価格を設定することができる。
総合評価落札方式
総合評価落札方式の具体的内容は、予決令第91条の規定により各省各庁の長が財務大臣と協議して定めることとされている。2001(平成13)年3月に各省庁と大蔵省(当時)の包括協議が整い、対象工事の範囲、落札方式、総合評価の方法などを定めた。包括協議では、落札者決定基準として、下記の3条件を満たす者の内、最も評価値が高い者とすることとしている。
①入札価格が予定価格の制限の範囲内である
②価格以外の提案が全ての評価項目に関する最低限の要求を満たしている
③評価値が基準評価値を下回っていない
2005(平成17)年に公共工事品質確保法が施行され、価格と品質の総合的な評価が調達の基本理念とされたことから、総合評価一般競争方式が標準的な調達方式として定着していくこととなった。
今国会で成立した公共工事品質確保法(公共工事の品質確保の促進に関する法律)の改正においては、将来にわたる工事品質の担い手育成と品質確保を目的として、多様な入札・契約方法から適宜選択できるようにするために、次の方式を規定した。
段階選抜方式
競争参加者が多数と見込まれる場合に、一定の技術水準に達した者を選抜した上で技術審査(書類審査・ヒアリングなど)によりさらに絞り込んで入札に付する。
技術提案・交渉方式
工事の仕様の確定が困難な場合、技術提案を公募の上、選定した者(交渉権者)と工法、価格などの交渉を行って仕様を確定した上で予定価格を設定し、見積り合わせによって受注者を決める。
この改正は、明治会計法制定以来の入札契約制度の枠組みを広げる重要な意味を持つ。交渉方式などかつては現行会計法のもとでは実施不可能と考えられていたが、競争入札方式の扱いにくさ(ダンピングに陥り易く、対抗上、談合を誘発し易い)を経験したうえで、立法措置により実施可能となった。この場合、制度の信頼性を保つうえで、技術提案の選定や工法・価格などの交渉が公正に行われることが必須の条件である。このため改正法では、学術経験者の意見聴取および審査過程等の概要の公表を発注者に義務づけている。