【パネリスト】
安達 功 氏 日経BP社インフラ総合研究所上席研究員、建設局プロデューサー
小坂田 英明 氏 (株)小坂田建設 代表取締役
永濱 健 氏 ラナベイク(株) 代表取締役
相馬 康穫 氏 プロジェクトおおわに事業協同組合 副理事長
山田 昌喜 氏 NPO法人リニューアル技術開発協会 理事
藤原 一夫 氏 藤原コンサルティング代表、中小企業診断士、建設企業のための経営戦略アドバイザリー事業 南関東ブロック・エリア統括マネージャー
(司会進行:建設業振興基金)
―――最初に、小坂田社長にお伺いします。建設サービス業について、中間山地という限られた市場の中で採算がとれるものなのでしょうか。都市に比べて市場規模が小さい上、案件も小口なものが多いようで、売上、収益につながっていないのではないでしょうか。
小坂田氏 私の会社は58年目になりますが、58年で得た地域の信頼によっていただく仕事が非常に多く、あえて言えば武器ではないかと考えてやっております。
確かに、我々の会社は地域2300戸、人口6000人ほどの小さなまちが地元です。ただし、建設業という括りを出て、お客さんに何かを提供して対価をいただくというサービス業の仕事をしていますと、こうした場所でも10万円以下の仕事を年100件近くも頂戴します。
(また、その仕事で作った関係は)、年間7,000万ぐらいの工事にもつながっておりますので、結果的に採算が取れる形になっています。
必ずしも限られたエリアだから市場が無いわけではなく、見方を変えれば色々なチャンスがあります。そのニーズを汲み取れば、自分たちだけが提示できるサービスになると思っています。
―――先ほどの安達講師の講演でも、ニーズの多様化という話を伺いました。建設サービス業に取り組まれて、地域住民がこんなことに困っていたのかという新しい気付きはありましたか。
小坂田氏 私どもは、自社イベントを年二回、ならびに毎月PRチラシの作成を行っております。イベントの中で地域のお客さんにお話を伺うと、たとえば家の雨戸の具合が悪いのだけれど、どこに修繕を頼めばいいのかわからないという話を頂戴したりします。これは従前、我々には来なかった悩みです。
今、中山間地域では、建築屋さん、瓦屋さん、植木屋さんなどが、どんどん廃業して無くなっています。そうした中、(植栽・修理の問題などに)、お客さんは日々悩まれています。(こうした悩みに向き合い)、建設サービス業をしていると、色々なニーズが見えてきています。
―――永濱社長にお伺いします。ラナベイクさんは、電気工事業者のネットワークを作って、チェーンストア向けの電気工事というニッチな市場を捉えることに成功されています。そうした中、一店舗あたりでいうと、金額にしてどのくらいのメンテナンス工事が発生するものなのでしょうか。また、24時間365日体制の全国ネットワークを構築されていますが、そのポイントと言うのはどういったところにあるのでしょうか。
永濱氏 弊社の業務は緊急メンテナンスで呼ばれるものだけに限定しております。以降、特段の断りがない限り、これを前提にお聴きいただけると幸いです。
店舗の建った年数や規模にもよるのですが、店舗当たりでいえば年間10万円以下になろうかと思います。
緊急対応のニーズは大変多いと体感していたので、ビジネスチャンスがあると確信していました。しかし、私は電気工事の資格を有していないことから、直接工事を手掛けることができませんので、これをどう解決するかを考え、電気工事業者さんのネットワーク化を先行して進めていきました。ただ、スタート当初は目論見とは異なり、緊急メンテナンスは単価が安いことや一定の工事量が確保できていなかったこともあって事業開始から容易に立ち上がらなかったことは事実です。
ルールとして、例えば照明の安定器交換工事、コンセント工事など、工事毎に単価を決めています。全国同じ単価で仕事をしておりますので、協力業者さんがこの仕事をメインでやってもいいかなと思えるよう、仕事量の確保には心を砕いています。
―――建設業の目線で行くと、全国一律価格というのはよく維持出来るなという思いがあります。なぜ全国一律価格で事業展開していらっしゃるのでしょうか。
永濱氏 これは私が考えたものではなく、お客様に求められたという側面がございます。顧客であるチェーンストアさんは全国展開をされていますので、地域によって同じ種類の工事でも金額が違うということを、コスト管理にシビアな会社様には大変嫌われます。よって、お客様から項目毎に単価を決めてほしいという強い要請がありました。
加えて、店舗数が多いと案件の数があまりにも多くなり、円滑な運営を行うために、ルールを決めたいという私達の希望もあって、全国一律の単価での運用を決めたという経緯がございます。
こうした運用のメリットとして、お客様あたりの売上げがほとんどブレない事があげられます。ここ数年で、5%ずれた年が一回あるかないかというほど決まった定量の仕事が来ます。これをデータベース化していくとビジネスチャンスが一段と広がるので、私は最近よく、メンテナンスは科学だと言っています。