人材確保・育成

建設業の海外展開 ベトナム編

建設業の海外展開 ベトナム編

国土交通省総合政策局国際政策課 国際市場整備推進官 中井 倫太郎
国際協力機構(JICA)
一般社団法人 海外建設協会 総務部長 松井 波夫
向井建設株式会社
柏倉建設株式会社

 建設産業においては、アジアをはじめとする諸外国の市場に進出し、その成長を取り込むことが重要な課題となっています。東南アジアの新興国では、空港や原子力・水力発電所、高速鉄道、地下鉄などの受注合戦が活発になっていますが、国土交通省では、中でもベトナム建設市場に日本式の施工方法を熟知する技能者を増やすため、業界横断でベトナムからの研修生の育成・指導に注力しています。そして、こうした有能な人材を、会員企業が参画する現地プロジェクトで円滑に活用できる環境の整備を進めていくために「ベトナム建設人材育成推進協議会」が設立されました。
 本号では同協議会の取り組みを踏まえ、当基金が監理団体を担当する「外国人技能実習制度」について紹介します。

 

ベトナム建設人材育成推進協議会について

始めに

【写真1】 設立総会

 我が国建設企業が海外で事業を展開するためには、日本式の優れた施工、品質確保などの相手国への技術移転によるコスト競争力強化を図る観点から、外国人技能実習制度を通じて日本式の施工を理解した現地技能労働者を育成するとともに、帰国後の技能実習生を我が国建設企業が相手国で活用しうる仕組みを検討する必要があります【表1】
 上記の現地人材育成・活用策の必要性を踏まえ、特にインフラ需要が見込まれるベトナムで官民一体となった現地建設技能者等の育成を推進するため、関係建設企業・団体などの参加を得て「ベトナム建設人材育成推進協議会」が本年2月26日に設立されました【写真1】

【表1】 ベトナムにおける優良な建設人材育成への日越協力

目的

 ベトナムで活動を行う日本の建設企業相互の情報交換を行い、同国の建設工事の現場でリーダークラスとなり得るベトナム人の建設関係の人材を育成するとともに、日本側が同国の事情への理解を深めることを通じて、同国の建設業の発展に寄与するとともに、日本及び同国の建設企業の競争力の強化を図ります。

組織体制等(組織名は五十音順)

【写真2】 日越建設会議における覚書調印式

会長:尾形悟 大成建設(株)取締役副社長執行役員国際支店長
事務局:(一財)建設業振興基金・(一社)海外建設協会
加盟企業・団体:(株)IHIインフラシステム、(株)大林組、鹿島建設(株)、(一社)建設産業専門団体連合会、五洋建設(株)、清水建設(株)、大成建設(株)、鉄建建設(株)、戸田建設(株)、(一社)日本機械土工協会、丸泰土木(株)、三井住友建設(株)、ミヤマエ(株)、向井建設(株)、ヤマコン(株)、(株)橫河ブリッジ、りんかい日産建設(株)
オブザーバー:国土交通省、厚生労働省、(公財)国際研修協力機構、(一社)日本建設業連合会

 なお、ベトナム側でも本件建設人材育成に賛同する同国建設企業6社により「ベトナム建設技能及び技術向上協会(代表:LICOGI社 Vu Tien Giao社長)」が設立され、さらに本年3月7日の第4回日越建設会議(於ハノイ)で日越両協議会間の協力覚書が締結されました【写真2】

本協議会を通じた建設人材育成に係る取組の意義

 本協議会に係る建設人材育成は外国人技能実習制度の活用を念頭に置いているところ、従来、建設分野における技能実習は専門工事業者を中心に実施されてきた経緯があります。それに対し、今回の取り組みでは専門工事業者に加え、本協議会加盟の総合工事業者の理解及び支援の下、官民一体でベトナム人技能労働者等の人材育成を推進することに意義があります。

当面の重点的取組事項~モデル現場事業

 技能実習生は日本人と比べ日本語能力や建設技能の面でしばしば劣位にあるため、特に安全管理上の課題により、従来総合工事業者の大規模建設現場での積極的受け入れは難しい状況にありました。一方、技能実習生に日本式の施工、品質管理などを習得させるためには、これら大規模建設現場での経験が不可欠との意見も根強いようです。この点、本協議会では、総合建設企業の建設工事現場でベトナム人技能実習生をより実践的に学ばせる取り組み(モデル現場事業)を行うことで意見が一致しました。当面、本協議会では加盟社・団体の実務担当者からなるワーキンググループ(事務局:(一社)建設業振興基金)を組成した上、総合工事業者の協力の下で当該事業を実施し、技能実習生がこれら大規模建設現場で実践的に学ぶ場合の安全管理などに係る課題の抽出、改善の検討や、技能向上に係る検証を重点的に進める予定です。

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