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2 元請企業における「登録基幹技能者制度」活用事例

 
2 元請企業における「登録基幹技能者制度」活用事例
 

 

 (一社)日本建設業連合会では、平成26年4月に発表した「建設技能労働者の人材確保・育成に関する提言」の一つとして、「建設技能労働者の賃金改善」を掲げ、その中で「優良技能者認定制度」の普及を推進することとしています。これを受け大手元請企業を中心に「優良技能者認定制度」を導入し、認定にあたって「登録基幹技能者」を対象としている企業が増加しています。生産工程に大きく関与する優秀な技能者として登録基幹技能者の評価と活用が図られています。

 
(一社)日本建設業連合会会員企業における登録基幹技能者の評価状況
 
会社名
導入開始日
制度名
主な認定基準
支給額
戸田建設
H22.6~
  優良技能者制度 〔優良技能者〕日額3,000円
〔準優良技能者B〕日額2,000円
〔準優良技能者C〕日額1,000円
職長会会員のうち登録基幹技能者または同等の技能を有する者
〔優良技能者〕(TODA Meister)登録基幹技能者
〔準優良技能者B〕登録基幹技能者の対象外職種で優秀と認定された者
〔準優良技能者C〕登録基幹技能者の未取得、職長活動が顕著と認められる者
ピーエス三菱
H22.9~
  PC工事基幹技能者報奨制度 月額1万円
※平成27年度改訂予定
協力会会員のPC工事基幹技能者のうち無事故かつ品質優良に貢献した者
大林組
H23.4~
  大林組認定基幹職長(通称:スーパー職長) 〔レギュラークラス〕日額2,500円
〔マイスタークラス〕日額4,000円
〔レギュラークラス〕職長、かつ登録基幹技能者のうち、優秀で自社現場に職長として7年以上(東京・大阪・名古屋以外の地域は3年以上)従事している者
〔マイスタークラス〕職長、かつ登録基幹技能者のうち、優秀で自社現場に職長として16年以上従事している者
西松建設
H23.7~
  上級職長制度及び西松マイスター制度(優良技能者制度) 〔上級職長〕日額2,000円(年額48万円)
〔西松マイスター〕日額3,000円(年額72万円)
〔登録基幹技能者資格取得支援制度〕1回2万円
〔上級職長〕登録基幹技能者、優良技能者表彰または自社安全表彰の受賞者、原則30歳以上65歳未満の優秀な者
〔西松マイスター〕上級職長のうち、特に優秀な者
竹中工務店
H24.1~
  竹中優良職長制度 〔マイスター〕最高日額2,500円
〔シニアマイスター〕最高日額4,000円
〔マイスター〕登録基幹技能者、1級技能士、竹中職長登録、直近1年の稼働120日以上(一部地域を除く)、評価点が平均点以上、協力会社・所長推薦を受けた優秀な者
〔シニアマイスター〕マイスターとして3年間、顕著な貢献をした者
三井住友建設
H24.3~
  コンストラクション・マイスター制度 日額2,000円
※平成28年度より運用
統率能力に秀でた者、現職種経験10年以上、自社現場経験3年以上、職長経験1年以上、登録基幹技能者他の資格保有者、自社安全表彰受賞経歴等のある優秀な者、またこれらと同等の能力を有していると思われる者
鴻池組
H24.4~
  職長マスター認定制度 「優良会社」所属の職長マスター:
日額2,000円
⑴コスト低減に向けた活動を積極的に実践できる
⑵工程管理に優れ、強力なリーダーシップを現場で発揮できる
⑶品質管理能力に優れている
⑷安全環境面で災害発生を未然に発生防止対策が打てる
⑸登録基幹技能者講習修了者 以上のうち⑴を含む3つ以上の要件を満たすと認められる職長
大成建設
H25.1~
  大成優良技能者認定制度
・建築:特級職長制度 ・土木:土木優良技能者報奨制度
〔建築:特級職長〕日額3,000円
〔土木〕日額2,000円
〔建築:特級職長〕一級職長経験2年以上、登録基幹技能者、当社能力評価基準を満たす者
〔土木〕所属企業勤務5年以上、登録基幹技能者もしくは建設工事に係る資格の修了者、職長教育受講済者で、一定の評価と専属率を満たした者
奥村組
H25.4~
  奥村組優良職長(マイスター)制度 日額2,000円
現場経験7年以上、自社に1年以上従事、協力会正会員またはその再下請業者の職長、登録基幹技能者または同等以上の資格、または当社安全衛生表彰規程により表彰を受けた者
熊谷組
H25.4~
  熊谷マイスター制度 日額1,000円
・登録基幹技能者または建設マスターかつ自社職長選定基準の1級職長で協力会等会員
・その再下請業者の職長
ナカノフドー建設
H25.4~
  優良職長制度 日額500円
登録基幹技能者、職長・安全衛生責任者教育講習修了、上級職長教育講習修了、過去5年以内に自社安全表彰等の受賞等により優秀な者
大鉄工業
H26.4~
  職長認定制度
・大鉄優良職長 ・大鉄マイスター職長
〔大鉄優良職長〕認定時50,000円
〔大鉄マイスター職長〕 月額50,000円
〔大鉄優良職長〕主要な協力会社の職長のうち、自社現場で顕著な貢献が認められ、登録基幹技能者・1級技能士と同等の優れた技術を持ち、他の模範となる者
〔大鉄マイスター職長〕大鉄優良職長として経験3年以上、特に優秀で、自社現場で多大な貢献が認められた者
日本国土開発
H26.6~
  国土優良職長認定制度 従事日数9日まで(日数による):日額1,000円
従事日数10日以上(一律):月額1万円
基幹技能士、1級技能士等の資格または同等の技能、経験を有する者
飛島建設
H27.1~
  とびしまマイスター制度 日額1,000円
職長教育修了者で、登録基幹技能者、1級・2級技能士、1級・2級土木・建築・造園施工管理技士、1級・2級建設機械施工技士のいずれかの資格を有し、作業指揮等の能力が高く総合的に優秀な者
鹿島建設
H27.4~
  優良登録職長手当「鹿島マイスター」制度
  優良技能者報奨金「新E賞」
〔マイスター〕日額1,000円
〔スーパーマイスター〕日額3,000円
〔新E賞〕年額10万円
主要な協力会社を中心に、当社の現場で働く技術者と施工のキーマンである職長の中で、登録基幹技能者等の保有資格を考慮し、特に優秀な者
清水建設
H27.4~
  職長手当支給制度
・日額2,000円

・登録基幹技能者、建設マスター登録者、現代の名工表彰者、技能五輪入賞者、技能グランプリ受賞者のいずれかに該当する場合 日額2,500円
・支店毎の支給額については各支店の支給基準に基づく
・全社共通で、職長会活動等、作業所運営全般への寄与・貢献が大きいことで創立記念日に優秀職長として社長表彰された職長
・各支店毎に独自の支給基準により選ばれた職長
安藤・間
H27.5~
  上級職長制度 日額2,000円
主要な協力会社の優秀な職長で、職長経験が5年以上の登録基幹技能者と同等の技能を持つ者
村本建設
H27.6~
  村本マイスター ・日額1,500円
・認定時に奨励金30,000円
・技術・技能が優秀で工事施工の合理化、後進の指導育成、安全・衛生の向上等に貢献し、他の建設現場従業者の模範となっている職長
・登録基幹技能者であるか、1級技能士の資格を保有していることがのぞましい
五洋建設
H27.10~
  五洋建設優良職長制度
・日額2,000円

・プラス年間就労日数が100日を超えたものには、日額1,000円の上乗せ金額を期末に一括して支給
登録基幹技能者等の保有資格、各種表彰実績、事故・トラブルの有無などにより優秀な者
大日本土木
H28.4~
  優良技能者認定制度 日額2,000円
当社作業所で3年以上の勤務経験を持ち、職長・安全衛生責任者教育を修了した65歳未満の者で、登録基幹技能者、1・2級技能士、1・2級施工管理技士、職長表彰受賞者等のうちいずれかに該当する者
※(一社)日本建設業連合会「日建連会員企業における優良技能者認定制度(手当等あり)について」(平成28年6月22日現在)より作成

 
  INTERVIEW
 

 
元請技術者の声
 
戸田建設株式会社 所長 丸山 達也

 現場の技能者が減少していることはここ数年大いに実感しています。優秀な職人を評価するには「いい仕事をしているね」と言葉を掛けるだけでは、職人にやる気を出してもらうことはできません。モチベーションを維持してもらうためには、手当てという目に見える形での評価は欠かせないと思います。当社の「優良職長制度」により、我が社の仕事を長く担当してもらえるようにしたいと思っています。
 一般の技能者と登録基幹技能者の違いは、やはり、安全・品質などの管理をより効果的に実行できること、そして資格によりその能力が保証されていることです。登録基幹技能者が担う役割である「施工方法の提案、調整」など、この資格を持っている人は、我々と目指すものへの理解や品質への意識が近いため、非常に仕事がやりやすいです。



登録基幹技能者の声
 
向井建設株式会社 職長 宮澤 典雅

 当社の職人は全員、登録基幹技能者の資格を目指すのが当たり前になっており、特に声をかけたり勧めたりしなくても、皆、資格を取得しています。若手に対しては、日々の仕事の中で安全や品質などへの目配りを心掛けていけば、必ず登録基幹技能者の資格は取れると話しています。
 私自身は、登録基幹技能者の資格の重みを、これから先ますます身に染みて実感するのだろうと思います。元請さんから評価され、仕事の面では現場を見る視野が広がる。積み上げてきたキャリアが資格という目に見える形で保証されることになるので、大きな自信に繋がります。ただ、資格は通過点であってゴールではありません。自分が自信を持って仕事をするために、また若手の職人だけでなく、元請の技術者からも信頼を得るためには、資格という保証を持ちながら、技術や知識を磨いていかなければならないと思っています。

 
 
 

 

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