企業経営改善

建設産業の電子商取引

建設産業の電子商取引

株式会社 本間組 安全品質環境部ISO室 渋井室長
株式会社 本間組 管理本部経営企画部 情報システム課 吉川課長
株式会社 土屋ホールディングス 総合企画部次長 兼システム課 柴田課長
安藤建設 株式会社 社長室情報企画部 森田部長
安藤建設 株式会社 社長室情報企画部 西村副部長
鹿島建設 株式会社 建築管理本部 建築調達部 平野部長
鹿島建設 株式会社 建築管理本部ITソリューションフ部 渡辺部長

 我が国の建設産業は、建設投資の低迷、建設業者数と建設投資のバランスの崩壊など、市場の大きな構造変化の中で、受注の減少、利益率の低下などにより、従来にも増して厳しい経営環境に直面しています。特に地域の中小・中堅建設業においては、コスト管理などを十分に行わないまま収益性が低下している企業が少なくないため、建設工事の現場を含めて、コスト管理の徹底と経営効率化の推進を図る必要があり、ITの活用による工程管理の徹底、元請・下請間を含めた企業間取引のIT化など、経営効率化に向けた取り組みの推進が急務となっています。
 「CI-NET」は、建設産業全体の生産性向上を図るため、建設生産に関わるさまざまな企業間の情報を、ネットワークを利用して交換するための仕組み(取り決め)です。建設産業における企業間の商取引には、見積依頼などの商談から注文、請求、決済までいくつもの段階があり、その都度伝票などの情報のやり取りが行われています。CI-NETでは、これらの各段階で生じる情報を電子的に交換するため、建設業に最適な交換手段を業界標準として設定したものです。

 

1207_06_tokusyu_title.jpg地域のゼネコン3社で導入を検討
今夏に運用開始へ

株式会社 本間組 本社新潟県新潟市、創業1934(昭和9)年、本間達郎社長、従業員数 550名(2012年7月現在)
http://www.honmagumi.co.jp/

CI-NET導入の検討

1207_06_tokusyu_1.jpg 新潟市に本拠を置く中堅ゼネコンの本間組が地元中堅ゼネコン数社と「CI-NET導入」について協議・検討を始めたのは数年前にさかのぼる。CI-NET は、国土交通省が建設業の商取引を電子化する際の標準的な仕組みを定めたものであり、業界全体の生産性向上を目指して推進している取り組み。「参加企業が 多ければ多いほど、そのメリットを業界として享受できる」と考え、CI-NETがスタートした当初から興味があったそうだ。より大きなメリットを得るため には「新潟地区として1社単独ではなく、より多くの業者がCI-NETに参加し、標準化を進めることが必要」と捉え、ゼネコン数社で振興基金・ベンダーを 含めた勉強会を定期的に開催。各社における導入メリットを協議し、綿密なシミュレーションを重ねてきたそうだ。そして、ようやく今夏(8月)、3社合同 (本間組、他2社)での運用開始にこぎ着けたのである。

CI-NET導入の経緯

1207_06_tokusyu_3.jpg 検討スタート時から担当であった渋井鉄司氏(現 本間組安全品質環境部ISO室長)は、これまでの導入の経緯について次のように語る。
 「スーパーゼネコンさんのような大規模な投資は難しく、背伸びはせずに、まずはASPを活用し、できる範囲からスタートしようと考えました。最初に手を つけたのが、協力業者(初期導入時の対象は約50社)と取り交わす注文書と注文請書を電子化することです。これによって負担する印紙税の免除及び郵送費・ 移動経費の削減など目に見える効果のほか、業務の効率化など元請・協力業者双方にとってメリットが見込まれます」

期待される効果と今後の展望

1207_06_tokusyu_2.jpg 今後は、順次、取引企業の拡大及び電子化の範囲を拡大し、電子データの有効活用・業務の効率化を追求していく意向だ。
 「段階的に試行錯誤を繰り返しながら、ようやく運用にこぎ着けました。今後は、各社それぞれのペースで運用していく計画です。社会全般に迫り来る電子化 の大きな波に対応するためには、業界の標準を導入するのが最善の方法です。効果やメリットを享受するためにもCI-NETを早く使いこなしたいと思いま す」
(本間組管理本部経営企画部情報システム課長 吉川直明氏)
 新潟の中堅ゼネコン3社と協力業者各社の今後の取り組みを見守りたいものである。

 

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