企業経営改善

建設産業の電子商取引

建設産業の電子商取引

株式会社 本間組 安全品質環境部ISO室 渋井室長
株式会社 本間組 管理本部経営企画部 情報システム課 吉川課長
株式会社 土屋ホールディングス 総合企画部次長 兼システム課 柴田課長
安藤建設 株式会社 社長室情報企画部 森田部長
安藤建設 株式会社 社長室情報企画部 西村副部長
鹿島建設 株式会社 建築管理本部 建築調達部 平野部長
鹿島建設 株式会社 建築管理本部ITソリューションフ部 渡辺部長

 我が国の建設産業は、建設投資の低迷、建設業者数と建設投資のバランスの崩壊など、市場の大きな構造変化の中で、受注の減少、利益率の低下などにより、従来にも増して厳しい経営環境に直面しています。特に地域の中小・中堅建設業においては、コスト管理などを十分に行わないまま収益性が低下している企業が少なくないため、建設工事の現場を含めて、コスト管理の徹底と経営効率化の推進を図る必要があり、ITの活用による工程管理の徹底、元請・下請間を含めた企業間取引のIT化など、経営効率化に向けた取り組みの推進が急務となっています。
 「CI-NET」は、建設産業全体の生産性向上を図るため、建設生産に関わるさまざまな企業間の情報を、ネットワークを利用して交換するための仕組み(取り決め)です。建設産業における企業間の商取引には、見積依頼などの商談から注文、請求、決済までいくつもの段階があり、その都度伝票などの情報のやり取りが行われています。CI-NETでは、これらの各段階で生じる情報を電子的に交換するため、建設業に最適な交換手段を業界標準として設定したものです。

 

 

1207_08_tokusyu_title.jpg作業の“見える化”により
社内の業務改善が進み、評価軸の構築へ

安藤建設株式会社 本社東京都港区、創業1873(明治6)年、野村俊明社長、従業員数1,393名(平成24年3月末現在)
http://www.ando-corp.co.jp/

CI-NET導入の経緯

1207_08_tokusyu_1.jpg 安藤建設が、国交省により実施された首都圏の大手ゼネコンを中心としたCI-NET普及促進事業(購買見積EDI実証実験)に参加したのは1999年のこと。当時同社ではIT化による業務改革活動を進めていたが、これにEDIシステムを付加させ、さらなる改善へ向けて本格的な展開を開始した。現在は、社内の業務改善にとどまらず、業界全体の生産性向上を目指す活動にも積極的に参加している。
 CI-NET導入の経緯について、社長室情報企画部長の森田雅支氏はこう振り返る。
 「最大の狙いは業務の合理化・効率化と単価データの蓄積です。そのデータベースを蓄積し、社内的にスピーディーに活用していく。購買が取決めした直近の契約単価を積算ベースや工事部門で使用でき、契約から精算業務まで一連のデータを使うことも可能になります。将来的に同業他社と共通利用ができ、協力会社さんの負担が少なく有効性が高いことも考えて、CI-NET導入を決めました」

導入効果とメリット

 具体的な導入効果はどうだろう。紙とEDIの注文業務での比較を見ると「注文伝票受付」から「見積依頼」、「契約情報の入力」、「注文書の印刷」など、EDIの方が「1件当たり22分短縮」になる。同社では2009年の電子商取引数は6,896件に上ったので、「6,896件×22分=2,528時間」、つまり316日間という時間面の短縮が図られたことになる。これに伴ってペーパーレスも進み、コスト面でも大幅な削減効果が得られた。さらに大きなメリットとして「業務の“見える化”の実現」が挙げられる。
 現在、同社では下の図のように、会計から営業、人事・給与、物件管理、原価予測、利益管理、購買管理まで、あらゆる業務がシステム化され、それぞれの連携が図られている。中でも自社開発の「原価予測システム」は、原価一貫管理、調達コスト、発生元入力会計連携の横軸に関わりがあり、現場レベルでの取り組みが不可欠だった。

1207_08_tokusyu_3.jpg

評価軸を構築し予想外の付加価値を生んだ

1207_08_tokusyu_2.jpg 全社的にCI-NETを浸透させる際には、これまでは1式いくらで管理していたレベルを、明細レベルまで“見える化”を求めたことで、「とても一筋縄には行かなかった」(情報企画部副部長の西村高志氏)そうだ。
 「現場に700人、800人の従業員がいて、200ほどの現場が同時進行しています。この現場はうまく行っても、こっちは行ってない……そんな話は日常茶飯事でした。ただ、現場では大半のことが所長の裁量で決まります。その仕事ぶりが“見える化”されることによって、全社的に『この所長はすごいな!』といった評価につながりました。この評価軸の構築は、想定外の付加価値だと思います」
まだCI-NETを導入していない協力会社に対して、森田部長にアドバイスを伺った。
 「いきなり大掛かりにやるのではなく、最初はWEBCONなどのASPサービスを導入するだけでもいい。できることから始めるのがポイントです。将来のことを考えれば、できるだけ早めに取り組むことをお勧めしたいですね」

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