企業経営改善

建設産業の電子商取引

建設産業の電子商取引

株式会社 本間組 安全品質環境部ISO室 渋井室長
株式会社 本間組 管理本部経営企画部 情報システム課 吉川課長
株式会社 土屋ホールディングス 総合企画部次長 兼システム課 柴田課長
安藤建設 株式会社 社長室情報企画部 森田部長
安藤建設 株式会社 社長室情報企画部 西村副部長
鹿島建設 株式会社 建築管理本部 建築調達部 平野部長
鹿島建設 株式会社 建築管理本部ITソリューションフ部 渡辺部長

 我が国の建設産業は、建設投資の低迷、建設業者数と建設投資のバランスの崩壊など、市場の大きな構造変化の中で、受注の減少、利益率の低下などにより、従来にも増して厳しい経営環境に直面しています。特に地域の中小・中堅建設業においては、コスト管理などを十分に行わないまま収益性が低下している企業が少なくないため、建設工事の現場を含めて、コスト管理の徹底と経営効率化の推進を図る必要があり、ITの活用による工程管理の徹底、元請・下請間を含めた企業間取引のIT化など、経営効率化に向けた取り組みの推進が急務となっています。
 「CI-NET」は、建設産業全体の生産性向上を図るため、建設生産に関わるさまざまな企業間の情報を、ネットワークを利用して交換するための仕組み(取り決め)です。建設産業における企業間の商取引には、見積依頼などの商談から注文、請求、決済までいくつもの段階があり、その都度伝票などの情報のやり取りが行われています。CI-NETでは、これらの各段階で生じる情報を電子的に交換するため、建設業に最適な交換手段を業界標準として設定したものです。

 

1207_07_tokusyu_title.jpg着実に“道内CI-NET化”が浸透
発注側・受注側がともに恩恵を享受

株式会社 土屋ホールディングス 本社北海道札幌市、設立1976(昭和51)年、土屋昌三社長、従業員数26名(グループ連結788名)
http://www.tsuchiya.co.jp/

CI-NET導入の経緯

1207_07_tokusyu_1.jpg 北海道地盤の中堅ゼネコンとして、道内で行われる建築・建設工事の多くに関与する土屋ホールディングス。住宅関連では取引が28業種に及び、道内の建設 分野の売上の約7割を占めるという。1つの現場当たり常時50社ほどと受発注があり、非常に細かい管理が必要になる。そのために「早い時期からCI- NET導入に前向きに取り組んだ」そうだ。総合企画部次長兼システム課長の柴田雅晴氏はこう振り返る。
 「発注業者として、元請けとしての責任がありますので、確実に取引の受発注に関する前段からの履歴としてシステム上で管理をしたいという思いがありまし た。現在、道内に限ると、CI-NETは着実に浸透してきました。近い将来、この業界のスタンダードになることは間違いないと思います」

CI-NET導入の経緯

1207_07_tokusyu_2.jpg CI-NET導入に際して、同社が享受するメリットはもちろん、取引相手も計り知れない恩恵を受けていると、柴田課長は指摘する。
「通常の取引では、印紙代、紙代、郵送料、それに関わる人的作業など、目に見えない労力が発生しています。紙の書類でやり取りすれば、それを計算して送り返す作業などがあり、それらの作業が減っただけでも、双方の省力化は相当のものだと思います」
印紙代だけを見ても、同社では400万~500万円の節約できている計算になるそうだ。もちろんIT化を推進するための設備投資は必要だが、本来受発注が増えるとこれらの処理を担当する人員を増やすが、CI-NETでは増員の必要性はゼロである。
 ただし注意すべき点もある。
「現場管理者の作業量を減らし、余裕ができた分、仕事の品質を上げることを主眼に取り組んでいますが、紙でのやり取りが無くなると、自分が発注した意識が 低下する傾向があり、意識面でないがしろになってしまう人もいるようです。そこは会社として留意すべき点だと思います。それから、IT化を進めると必然的 に電子商取引が有効になってきますが、ITの仕組みに慣れていない下請けの業者の中には3年の更新手続きを忘れてしまうケースもありました」
こういったケアレスミスについては、発注元である同社が協力会社をチェックしている現状もあるそうだ。

CI-NET普及のために基金の支援に期待したい

1207_07_tokusyu_3.jpg 柴田課長に今後の展望をお聞きした。
 「今後、被災地での建設や土木工事の再計画や再取得といったことが多くなると思います。短期間の間にかなりの受発注が行われるでしょう。CI-NET は、それらをスムーズに行うために必要なシステムになるはず。助成や技術支援なども含めて被災地復興のための整備として、振興基金が中心となってもっと もっとCI-NETを広めてくれると、私たちも道内から進出しやすくなります。ぜひとも振興基金のサポートをお願いしたいです」

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