企業経営改善

建設産業の魅力を発信するためのアクションプラン

建設産業の魅力を発信するためのアクションプラン

国土交通省 土地・建設産業局建設市場整備課
日経コンストラクション編集部 記者 木村 駿
公益社団法人 土木学会 調査役 高橋 薫
NPO法人 建設経営者倶楽部 / KKC理事長(ハタ コンサルタント株式会社 代表取締役)降籏 達生
一般社団法人 全国中小建設業協会 専門役 岩崎 好美
一般社団法人 日本建設業連合会 広報部 主事 白井 宏和
一般社団法人 全国建設業協会 関澤 健太郎
一般財団法人建設業振興基金 建設産業情報化推進センター 濵崎 貴司
東日本建設業保証株式会社 課長代理 村井 順

 昨年度「建設産業の魅力を発信するための戦略的広報検討会」が開催され「建設産業の魅力を発信するためのアクションプラン」が取りまとめられました。本号では、その概要を紹介するとともに、業界に携わる方々のそれぞれの立場から建設産業の魅力について語っていただきました。

 

 

バッシングより恐いパッシング

「自衛隊に“完敗”した建設業界」

 これは、日経コンストラクション2012年3月26日号の特集「伝わらなかった被災地支援」を担当した際に、記事に付けた見出しです。一般の方々へのアンケートの結果、建設産業界による東日本大震災の被災地支援が、自衛隊に比べるとあまり伝わっていないことが判明した、という内容に対して、読者の皆様からは良くも悪くも大きな反響を頂きました。
 「建設産業に対する世間の風当たりは依然として厳しい」、「マスコミの過度なバッシング(批判)が、負のイメージを植え付けている」。特集では建設産業に関わる方々にも調査を実施したのですが、このような声が数多く上がりました。日経コンストラクションが毎号実施している読者アンケートには、同様の訴えが今も寄せられ続けています。  マスメディアが批判的な報道ばかりするから、世間は建設産業に悪いイメージを抱いており、実情や魅力が伝わらない。その影響で、入職者が減っている。業界はもっと魅力を世間にPRし、イメージアップに取り組むべきだ――。取材や一連のアンケートからは、こうした思いを抱いている方が、かなり多いことが分かります。
 確かに一理ある。ですが、どこかしっくりこないとも思います。
 私は、父が建設会社に勤めていたこともあり、大学で建築学を専攻しました。出版社である日経BP社に就職してすぐに建築専門誌の日経アーキテクチュアに配属され、現在は日経コンストラクションで記者をしています。妻は一級建築士で、建設産業に携わる友人も多い。ですから、何をしていても業界の情報が気になりますし、いやでも耳に入ってきます。建設産業で働く方々なら、なおさらでしょう。
 翻って、一般の人はどうか。そもそも、世間は建設産業に関心があるのでしょうか。業界で働く方々が思っているように、世間が業界に批判的であるならまだマシで、最近はむしろ「何とも思っていない」という人が増えているように思えてなりません。バッシングではなく、「パッシング」(無視、無関心)に近いのではないでしょうか。
クリックで拡大 負のイメージが拭えないからというより、建設産業から先進的なイメージが薄れてしまったことが一因だと思います。革新が起こり、活気あふれる産業には、イメージの良し悪しに関係なく注目が集まる。マスメディアも、業界の動向を逐一伝えます。結果、腕試しをしたいと考える優秀な若者が入職してくる。「新しいことに挑戦している」、「前に進んでいる」という姿勢が、世間から見た産業の魅力の一つなのです。
 建設産業の魅力を世間に伝えたいのであれば、まずはプレーヤーである企業が新しいことに挑戦し、成果を自ら発信していくことが必要です。そういう意味で、従来の価値観に囚われない若手の経営者や技術者に期待しています。今年、取材でお会いした30歳代のある建設会社社長は、最新の情報化施工技術を取り入れて現場の生産性を高めようと苦心する「変革者」でした。自分たちが公共事業に革新をもたらしていると実感できれば、社員のやる気は高まるし、建設会社のイメージも良くなると熱く語っていました。
 ちなみに、彼は尊敬する経営者として、建設機械大手・コマツを世界的企業に押し上げた坂根正弘相談役を挙げました。当社が発行する経営誌「日経ビジネス」の4月30日号では、上場企業を中心とした約3600社の社長を対象に「社長の発信力ランキング」と題した特集記事を組んでいましたが、ゼネコンの社長は一人も100位以内にランクインしていません。建設産業界の重鎮と呼ばれる経営者の方々にも、若手の「お手本」として名前が挙がるような、憧れの存在であってほしいと思います。

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