企業経営改善

建設産業の魅力を発信するためのアクションプラン

建設産業の魅力を発信するためのアクションプラン

国土交通省 土地・建設産業局建設市場整備課
日経コンストラクション編集部 記者 木村 駿
公益社団法人 土木学会 調査役 高橋 薫
NPO法人 建設経営者倶楽部 / KKC理事長(ハタ コンサルタント株式会社 代表取締役)降籏 達生
一般社団法人 全国中小建設業協会 専門役 岩崎 好美
一般社団法人 日本建設業連合会 広報部 主事 白井 宏和
一般社団法人 全国建設業協会 関澤 健太郎
一般財団法人建設業振興基金 建設産業情報化推進センター 濵崎 貴司
東日本建設業保証株式会社 課長代理 村井 順

 昨年度「建設産業の魅力を発信するための戦略的広報検討会」が開催され「建設産業の魅力を発信するためのアクションプラン」が取りまとめられました。本号では、その概要を紹介するとともに、業界に携わる方々のそれぞれの立場から建設産業の魅力について語っていただきました。

 

 

「ものづくり」って、一人ではできない

 中小企業でも若い人の採用が少しづつ増えてきました。夢をもって入ってくる子たちに、現場を知っている人たちは絶対に育てなきゃいけないと、ピリピリしています。しかし、せっかく育てても4年位すると転職してしまいます。やはり中小の仕事は、何からなにまでやらなければいけないので、キツいのです。
 その中でも会社に残る人は、全部できることを「自信」にしてどんどん現場に出て行くんです。自信があるから自分の立ち位置だから自身で築いて、居場所を作れるんだと思います。キラキラしてますよ。ガタイも良くなって、イイ男になってくるんです。同時に人を采配するチカラも20〜30歳位で出てきます。チャラチャラした子でも上からも、職人さんからも叩かれて、上下関係も身について、横柄な態度もとらなくなる。だから皆に大切にしてもらえ、それがやりがいに繋がっていくんだと思うんです。
 「ものづくり」ってキレイな響きだけれど、結局は現場って泥臭いんです。自分たちだけでは作れないものが多い。現場での繋がり、人と接することで、それが支えになっていく。人と関われることが、中小の魅力だと考えます。
 この仕事をしているとたくさんの中小建設企業の方と関わりを持ちます。中小の方々は地元のために一生懸命です。でも口ベタで、伝わりにくく、また発言する場もありません。地元にとって大切な役割を担っています。だからこそ、長期にわたって安定した仕事が欲しいと願っています。
 台風で大きな被害が出ていることを知った時のことです。会員の皆さんの無事を確認するために電話をしました。当然ですが、すでに災害対応に向かっていました。地元を守るために一生懸命になれる。中小建設企業のそういうところを魅力として思ってくれる人がいるといいですね。

建設業ならではの多様な魅力の発信

 施工現場の見学会等を通じ、現役の土木系・建築系の学生たちと接する機会があるが、その度に“建設会社は施工だけをやっている”といったイメージを持つ学生が少なくはないことを実感している。
 学生の建設業に対する興味や関心を喚起するためには、まず基本である施工現場の見学をしてもらうことが最良の方法だと考え実施をしているが、かえってそのイメージに拍車をかけてしまったのではないかと反省している。
 確かに、建設業の魅力の大部分は施工現場やそこで用いられる技術に凝縮されていると言っても過言ではないだろう。しかし、日本の建設業が施工以外にもさまざまな顔を持った「多様性」のある産業だということも早い段階で学生に理解してもらう必要があるのではないか。
 例えば、日本の建設業は、マネジメントと施工が完全に分離している欧米のそれとは違い、企画提案、計画、設計、施工、維持管理まで一括して行っている。そのため、日本の建設会社には、多種多様な職種や仕事がある。さらに、自身が携わったプロジェクトやそこで得た知識や経験によってさまざまな活躍できるフィールドがあることから、技術者の数だけのキャリアパスがあると言ってもいいだろう。
 土木・建築を学んだ学生が建設業を志望せず、他産業へ活躍の場を求めるなど、学生の就職や仕事に対する考え方にも変化が見られている。明日の建設業を担う人材の確保・育成の観点から、私たちは建設業が持つ多様な魅力を再確認し、学生に向けた効果的な情報発信を検討していく必要があるだろう。

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