企業経営改善

建設産業の魅力を発信するためのアクションプラン

建設産業の魅力を発信するためのアクションプラン

国土交通省 土地・建設産業局建設市場整備課
日経コンストラクション編集部 記者 木村 駿
公益社団法人 土木学会 調査役 高橋 薫
NPO法人 建設経営者倶楽部 / KKC理事長(ハタ コンサルタント株式会社 代表取締役)降籏 達生
一般社団法人 全国中小建設業協会 専門役 岩崎 好美
一般社団法人 日本建設業連合会 広報部 主事 白井 宏和
一般社団法人 全国建設業協会 関澤 健太郎
一般財団法人建設業振興基金 建設産業情報化推進センター 濵崎 貴司
東日本建設業保証株式会社 課長代理 村井 順

 昨年度「建設産業の魅力を発信するための戦略的広報検討会」が開催され「建設産業の魅力を発信するためのアクションプラン」が取りまとめられました。本号では、その概要を紹介するとともに、業界に携わる方々のそれぞれの立場から建設産業の魅力について語っていただきました。

 

 

建設産業の本当の魅力を伝えたい

 私の祖父が建設業に従事しており、田舎に遊びに行くと、作業服に黄色いヘルメットをかぶった祖父の姿はよく目にしていました。真っ黒に日焼けした祖父はかっこよかったことを覚えています。バスで大きな橋を渡るたびに、「こんなの作っちゃうなんて、おじいちゃんすごい!」と、少し自慢でもありました。
 その祖父はもういませんが、田舎に行けば祖父が作った橋や公園、舗装した道路があります。私にとってそれらは、確かにそこで祖父が生きていたという証しです。普段、当たり前のように歩く道路や橋に対して、それを建設業のお陰だとはなかなか思いません。しかし、その道路や橋のお陰で人々の暮らしが豊かになり、救われる命があるのです。
 人々のためにモノをつくり、それを後世に残す。後世の人々はそれらを利用し、維持・管理・更新してまたそれを後世に残していく。決して目立ちませんが、やりがいがあり、人の役に立つ、なくてはならない産業だと思います。
 近年、建設業のイメージアップや広報活動が重要視されています。一部の業者による不正によって業界全体のイメージが悪くなっていることや、“3K”といわれる厳しい労働条件により、若者の建設業離れが深刻な問題となっています。建設業界として解決しなければならない課題は多々ありますが、悪い評判が先に立ってしまい、建設業の本当に良い部分、魅力が隠されてしまっているような気もします。
 世間の皆さんに建設業を正しく理解してもらえる、そんな広報活動は、業界全体が一つになって取り組むべきだと思います。

 当基金に入社後、私は主に2つの業務に関わってきました。一つは、国土交通省の助成事業の管理・運営。もう一つは、CI-NETの普及に関する業務です。今回、私なりに感じている建設業の魅力についてお話したいと思います。
 就職活動するに当たって、私は衣食住に関係する業界を志望しました。その上で「自分はどのようなモノ・サービスを世の中に提供したいか」を考えました。言うまでもなく建設産業は、人々の生活基盤というべきインフラの建設・整備・補修を担う、衣食住の“根幹”を成す存在です。建設工事ができなければ、電気も水も使えません。病院を建てられなければ、治療も入院もできません。道路がなければ、車があっても走れません。まさに“根幹”を担うわけで、これこそが建設業の大きな魅力の一つであると考えます。
 もう一つの魅力は、建築物という“モノづくり”によって多くの人たちの感動を生むことにあります。発注者(施主)の大切な資金や想いのもとに多くの職人さんが技術・技能を発揮し、世の中で唯一無二のモノをつくり、無事に引き渡すまでの流れの中で感動が増幅していくのです。
 現職に就くまで、各地で災害が起きた際に、誰が緊急時の対応しているのか知りませんでした。しかし、仕事をする中で、建設業の皆さんが災害対応の前面に立っていることを知りました。担当者の想いに接し、建設産業が社会的責任を持って地域貢献に尽力し、“地域と生きている”ことを実感しました。「縁の下の力持ち」― 建設産業を一言で表すとすれば、この言葉が一番ぴったりくると思っております。(平成25年9月30日)

建設業界への期待 東日本建設業保証株式会社 課長代理 村井 順

 建設産業は、近代産業として成立後、国家建設に伴うインフラ整備、戦後の復興、高度成長、高速交通施設などを担ってきたというマクロ的視点のダイナミズムと、建設技術者・技能労働者が保持・継承する伝統技術・高度技術のすばらしさ即ち個人にかかる資質というミクロ的視点のクラフツマンシップ(職人芸/職人的技能・技巧)の両面が協働しながら発展してきたところに魅力を感じたことが建設産業に関わったきっかけです。

 東日本大震災により、社会資本整備の重要性と防災・減災のための国土づくりの必要性が国民の間で改めて認識されておりますが、建設産業は、基幹産業であり、国民生活の安全・安心を確保し、快適で豊かな社会を実現するために欠かせない社会資本の充実に関して大変重要な役割を果たしていることが、建設産業の魅力ではないでしょうか。

 建設産業の期待と役割がこれまで以上に高まっている中で、建設業界のみならず、広く社会一般、とりわけこれから社会、国家を担う若者に向けて、あらゆる媒体を通じて、その魅力をあますところなく発信していただきたいと思っております。建設産業への若年者の入職促進は喫緊の課題ですが、拙速に陥ることなく、建設業界が一丸となって衆知を結集し、情報提供に工夫を重ねていくことが肝要で、そうすることで成果が着実に上がることを願ってやみません。

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