人材確保・育成

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実施事業|地域ブロックで共有する協議会ネットワーク|東北6県の建設産業と地方整備局・県との連携で担い手を確保・育成する

(一財)みやぎ建設総合センター 事務局長 八木橋 雄介
(一社)福島県建設業協会 専務理事 鈴木 武男
聞き手:建設産業担い手確保・育成コンソーシアム 事務局次長 枝川 眞弓

 
 実施事業
東北ブロックの取組 【青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島】
 
 
東北6県の要となる協議会

枝川 東北ブロックでは,協議会を設置するということですが、この協議会が目指す役割についてお話しください。
八木橋 東北ブロックの協議会は、東北6県が持つ訓練校やこれから作る訓練プログラムを相互補完的に活用できるよう、各県協議会と連携していくことを大きな目標にしています。効果的な取り組み事例を共有し、広報することも目的の一つです。

東北地方整備局の技術事務所を利用した技術者教育

枝川 教育訓練ですが、対象、使用する施設や訓練内容については、どのようにお考えですか。
八木橋  東北地方整備局の東北技術事務所 を利用して、主に技術者の教育訓練を行います。体験型土木構造物実習施設があり、コンクリート打設の失敗事例を実物大で見て学べるのです。テキストと講師は整備局のものと人を活用します。本年8月に、 宮城県建設業協会 の会員企業3社に所属する13名が新人研修を受けました。土木を学んできた若手にとっても大変、勉強になったようです。
枝川 技術者不足は建設業界の大きな課題です。会員企業の経営者の反響はどうでしたか。
八木橋 非常に良かったという声をいただいています。今後は維持管理も増えるため、コンクリートについて幅広く理解しておくべきという認識は共通です。研修の流れはシステム化できているので、打設から補修までトータルで学べるようにする必要があります。
枝川 研修についての検討課題は。
八木橋 コンクリート打設などの実践や中堅技術者の学び直しの研修プログラムも必要です。これは東北地方整備局と一緒に考えていきたい。他県からの意見も取り入れ、研修を発展させていきたいと思っています。
枝川 福島県では、平成14年度まで技術者の教育訓練を行う施設があったと伺いました。現在の各企業における教育訓練の実施状況を教えてください。また、東北技術事務所を使った研修についてはどうお考えですか。
八木橋 富士教育訓練センターを利用する会社もありますが、教育訓練施設は近くにあるほうが良い。 東北技術事務所 で基礎的な技術者育成の教育訓練プログラムが充実すれば東北各県の企業は非常に助かります。福島県も東北ブロックの協議会に参加したいと考えています。

東北地方整備局と連携して、受発注者間の対話を進めたい

枝川 受発注者合同で、技術者による技術課題の検討会を行うことも考えていらっしゃるようですが。
八木橋 この検討会の目的の一つは、研修についての検討。もう一つは研修を受けた技術者が発注者側の技術者と意見交換することです。受発注者それぞれに課題があり、互いに聞きたいこともある。その機会を作りたいと考えています。


 
(一財)みやぎ建設総合センター
事務局長 八木橋 雄介
 実施事業
宮城県の取組



枝川 宮城県に協議会を設置するとのことですが、協議会の役割をお話しください。
八木橋 宮城県は 地域連携ネットワーク だけでなく、緊急雇用事業と就業機会確保事業にも取り組んでいます。その結果や課題をまとめてフィードバックすること、東北ブロックや他県の協議会と情報交換し連携することを目指しています。
枝川 技能者の教育訓練はどのような施設、内容で行うのですか。
八木橋 技能者の教育訓練は、 ポリテクセンター宮城 の多賀城実習場を利用する予定です。研修内容を、技能の資格取得に特化するか、身につけておくべきスキルを再確認するものとするかはまだ検討の段階。講師は現役の技能者にお願いする予定で、既に型枠と鉄筋の講師は確保しています。今後は鳶も考えていますが、講師の育成は重要な課題です。
 また ポリテクセンター宮城 は、 東北技術事務所 と、重機類の講習が受けられる 日立建機教習センタ が産業道路に面して隣接しています。一帯を研修ユニットとして活用することも考えています。

 
(一社)福島県建設業協会
専務理事 鈴木 武男
 実施事業
福島県の取組



枝川 福島県内の建設産業の現状についてお聞かせください。
鈴木 平成23(2011)年は、3月に東日本大震災と原発事故、7月末~8月頭には新潟福島豪雨と台風15号による被害も受けました。これまで建設業界が一丸となって復興に取り組み、旧警戒区域以外の部分はインフラの復旧なども順調に進んでいます。発災前、県内建設企業の体力は相当弱っていましたが、震災を契機に経営状況や利益率はだいぶ改善しました。しかし、あと4、5年で復興関連事業は収束するでしょう。今後の公共事業がどうなるのかも見据えながら業界自体の在り方を考えていかなければなりません。
枝川 福島県の建設業界では、教育訓練の必要性についてどのように認識されていますか。
鈴木 教育訓練の必要性は皆さん認識していると思いますが、規模の小さい会社にはその余裕がありません。職場環境の改善についても、経営者の考えによるところが大きいと思います。
枝川 福島県において協議会を設置するということですが、協議会が担う役割はどのようなことでしょうか。
鈴木 技能者の育成を中心に据えたいと考えています。福島大学の先生に座長をお願いし、専門工事業団体や教育訓練機関、行政などで構成する協議会を設置します。そこで問題点を洗い出し、人を集めて教育訓練をするためのスキームを作って推進します。一度実施してみて、さらなる課題や解決法を見出し、改善を図っていきたい。対象は、新卒者はもちろんですが、専門工事業者に見習いで入っている若手も考えています。それぞれのセクションが独自に頑張ってきた担い手の確保・育成の取り組みを、協議会でネットワーク化していくつもりです。
枝川 利用する訓練施設や内容について教えてください。
鈴木  福島県立テクノアカデミー が協議会の構成員に入っており、受講者が集まれば専用のカリキュラムを作ってくれるとのこと。特別な講習・訓練は テクノアカデミー の講師に頼むこともできます。

 
東北技術事務所 の東北技術事務所に設置された体験型土木構造物実習施設(多賀城市): 東北技術事務所は、技術支援、災害支援、人材育成支援で、東北地方の社会資本の整備を支えている。人材育成のために設置された体験型土木構造物実習施設では、橋梁下部工、函渠工、防護柵工などの構造物を実物大で見ながら、コンクリートの施工不良や施工手順について学習できる。各種技術に関するテキストも制作。国土交通省の施設だが、東北地方整備局や地方公共団体の職員の研修がない時には民間企業なども研修を受けることができる。

 
ポリテクセンター宮城 (宮城職業能力開発促進センター内)多賀城実習場: 東日本大震災で被災した同実習場は平成27(2015)年2月に復旧、訓練を再開。求職者向けの職業訓練や、在職者の知識・技能・技術向上のための職業訓練を行う。
福島県立テクノアカデミー 同アカデミーは、福島県が設置する公共の職業能力開発施設。高等学校を卒業した人が対象で、2年間の専門的カリキュラムにより人材育成を行っている。郡山市・喜多方市・南相馬市の3市に施設がある。
 
(建設業しんこう2015年10月号掲載)
 
 

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