取組事例
(職)広島建設アカデミーの取組
(職)広島建設アカデミー 理事⻑
福井建設㈱ 代表取締役社⻑ 福井 正⼈
有木 広島県では、 (一社)広島県建設工業協会 が、「 地域連携ネットワーク築支援事業 」の事業管理者として、県内の専門工事業団体に対し、職業訓練に関する調査などを実施しています。広島建設アカデミーは、広島県内で技能労働者の職業訓練について先進的な取り組みをされてきました。この連携ネットワークへの期待をお聞かせください。
福井 広島建設アカデミー は、建築躯体系技能工の育成を目的に、職業能力開発促進法による広島県の認定を受け、躯体系専門工事業者が共同して設立し、低コストで、会員企業に就職した新入社員を対象に二カ月間の職業訓練を実施してきました。地域連携ネットワークの活動を通じて、当アカデミーの仕組みをご理解いただき、地域の専門工事業の方々に普及を図っていただきたいと考えています。そして、当アカデミーのように継続的な仕組みにするための応援をしていきたいと思います。
有木 広島建設アカデミーは、新卒者の教育訓練を実施してきましたが、中途採用者の訓練についてはどうお考えですか。
福井 会員企業からの要望があれば、検討することになると思います。確かに、新規学卒者が採用しにくくなっています。人材の確保が重要であることから、当アカデミーでも、工業高校等に出前講座を実施していますが、他産業との取り合いになっています。当アカデミーとして、中途採用者の訓練を検討することになれば、講師、カリキュラムだけでなく、宿泊施設の検討などもしなければならないと考えます。
有木 行政との連携については如何ですか。
福井 地域連携ネットワーク を通じて、広島県や中国地方整備局と意見交換をし、地域のニーズに応えられる体制で進めることが重要だと考えます。
(職)広島建設アカデミー での研修:中小企業の多くは、新入社員の採用頻度が少なく、大規模な新人研修を実施することが難しい。同アカデミーでは、複数企業がそれぞれに採用した新入社員に合同で研修を行う。座学は県内の公共職業訓練センターを、実技は福井建設の加工場を利用し、専用の訓練施設を持たない運営で各企業負担を軽減している。
広島建設アカデミーの新入社員研修に派遣した経営者の声
㈱谷組 代表取締役
(職)広島建設アカデミー 副理事長 谷 勝美
当社の新入社員研修については、アカデミー創設時から会員企業として利用しています。広島県内でも担い手不足は深刻な問題ですから、近年は工業高校だけでなく普通科や農業高校からも若者を採用しています。工業高校でも、座学中心で実技は未経験というケースは珍しくなく、基礎的な知識のない新入社員の教育指導では、職業訓練は必要不可欠です。
職業訓練の効果について
訓練を終えた新入社員からは「現場ですぐに役立つことをたくさん学べた」「いきなり現場に行かせられたらかなり不安に感じたと思う。本当に助かった」といった声が聞かれます。そして何より、複数企業が集まると、他の会員企業の同期とも絆ができ、訓練修了後も情報交換できるような副次効果も生まれるのです。実際、定着にもつながっていると思います。ここで教えを受けた若者が成長し、技能を身に付けると、今度は教える側に回ります。アカデミーでは会員企業のベテラン職員が訓練生の指導にあたるのです。指導員を経験すると、現場管理能力の向上も期待できますし、社員教育の一環になるというメリットもあります。募集から若手が活躍できるまでの循環を、専門工事業者が1社でつくることは非常に難しいことです。アカデミーの様に、採用があった会員企業が合同で新入社員研修をするという仕組みは、我々のような企業体にとって非常に効率的なのです。
費用面に不安を感じる経営者も多いと思いますが、アカデミーでは新入社員を送り出す企業に対して、「 キャリア形成促進助成金 」「 建設労働者確保育成助成金 」の申請・受給のサポート体制をとっています。助成金を活用すれば、派遣元企業は1名あたり実質5万円程度(平成26年度実績)で約2カ月間の教育訓練を受講させることができるのです。
今後期待すること
広島建設アカデミー に対しては、新入社員研修のみならず、今後は中堅社員等に対する研修もお願いしたいと思います。キャリアパスに応じた教育訓練や取得する資格等の評価が必要と感じています。入職した若者が将来への展望が描けることで離職防止に繋がるのではないでしょうか。
受講者の声
元々県外での就職を希望していたのですが、先生の勧めもあり今春から福井建設に入社しました。充実した教育訓練体制があることは大きな魅力のひとつでもありました。
約3カ月の研修を終え、今は現場に出ています。やはり研修はあった方が良いと改めて感じています。現場の先輩も「今、型枠大工は不足していて、現場でみっちり指導してもらうのは難しい」と言っていました。せめて基礎だけでも知識と技能を備えておけば、後で困らないと思います。実際、アカデミーで学んだことは現場で生きています。
今は型枠大工として岩国の現場に出張中。大きな現場なので、色々な場所から多様な技を持った職人が集結しています。大きい現場ゆえの苦労もありますが、その分大勢の方から学ぶことも多く、成長を実感する日々です。現場には僕と1歳しか違わないような先輩がいて、本当によく動けるので尊敬しています。来年には僕も後輩ができます。早く仕事を覚えて、指導まではできなくても、示しのつく格好いい先輩になっていたい。
福井建設㈱ 堀 雄大(ほり ゆうだい)さん
平成27年入社。同年4~6月訓練。
⾼校時代は山口県立萩商工高等学校の野球部でレフトとして活躍。
昨年の山口大会ではベスト4 の成績を収めた。
訓練生が入校後最初に行う江田島研修: 3泊4日で集団生活の基礎的なマナーを習得する。今年は11名が参加し、ボート漕ぎにもチャレンジした。
加工場(福井建設内)での実習: アカデミーでの新人研修では、2人1組で足場組立2級の課題に挑戦。「完成品に上って、達成感を実感した」と堀さん。
(建設業しんこう2015年10月号掲載)
建設産業担い手確保・育成コンソーシアム地域連携ネットワーク構築支援
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