人材確保・育成

建設産業担い手確保・育成コンソ ーシアム

ハードとソフトの両面充実で人が育つ環境整備へ

板金技能訓練センター(株式会社 テクノアウター)

 専門工事業界から独自に教育訓練センターを立ち上げ、昨今にわかに注目を集めている企業がある。群馬県沼田市で板金業を営む㈱テクノアウターだ。海外からも積極的に研修生を受け入れ、いま人を育てるには「本気で教える覚悟が必要」と語る同社の桑原敏彦社長にお話を伺った。

 


㈱テクノアウター 「板金技能訓練センター」

 訓練センターの開設は2010年。当時先行きの不透明な少子高齢化、建設業界の高齢化問題に危機感を募らせた桑原社長が、10年、20年先を見据えて独自に立ち上げた。「すべての資機材は当社の手作り。単管や廃材を利用してこの訓練センターを造った。全部新規に購入すれば、年間の施設運営費はおそらく400万円を超える」。決してお金があるわけではない。それでも人が育つならと採算度外視で続けている。

同業他社や海外からの受け入れも

 今年の訓練生は、同社から新入社員5名、他社から2名、インドネシアからの研修生3名、計10名。彼らの1日は「基礎訓練」から始まる。指差し呼称、鉄筋上の歩行、ビス打ちといった板金工の基礎的な技能だ。これを終えて、溶接や板金工作など、「本訓練」というより高度な訓練に移る。


「屋根伏せ訓練」は2人1組で行う

 一方、座学では月に2度のテストも欠かさない。各教科とも桑原社長の作成したテストで、90点以上が合格ライン。合格するまで何度も繰り返すことで、確実な知識習得につながる。
 訓練・座学で使用する教材は共通。『公共建築工事標準仕様書』(国土交通省)、『建築板金施工法』(全日本板金工業組合連合会)の2冊だ。
 三重県にある㈲伊藤鈑金工作所の後継者として、「一回り大きくなってこい」と送り出されたという研修生の伊藤さんは、3カ月の訓練を振り返りこう話す。「お客さまの商品で失敗は許されない。事前に失敗を経験できるのは心強い」。群馬と三重、離れてはいるが、同じ板金業界に働く者として今後は一緒に盛り上げていきたいという頼もしい言葉だった。

複合的観点から人を育てる


今年7月14日には、国土交通省の幹部らが視察に訪問

 これまで自社1社で訓練センターを運営してきた桑原社長に、今後の訓練センターの在り方について伺った。
「他業種とうまく連携すべき。板金は、基礎、内装、外装と併せて最低でも4業種、協同で1つの施設を立ち上げたい。全国的にも訓練センターの拠点は増えるはず」。
 訓練センター開設は廃校の小中学校校舎を転用すれば可能だと、視察に訪れた行政関係者にも貸出を要請していた。
 ただし、教育体制の整備に加えて労働時間をはじめとする労働条件の見直し、機械導入による省力化も併せて進めなければ、今後も続く人材確保難には対処できないともいう。来年から現場は隔週休2日制になる予定だ。
 昨年、同社では若手の定着率が最も悪く、4人中3人が現場に出て間もなく退職してしまった。夏の暑さが原因という。「屋根上は50〜60度を超すこともあり、昔とは暑さが全然違う」(桑原社長)。対策として、8月の2週間だけは完全に現場作業を中止できるよう、体制を整備したいと話す。また、省力化対策として、2004年には屋根材を無人で持ち上げて運ぶ「テクノケーブルクレーン」を開発した。「複合的な観点から人が育ち、働きやすい環境を整備すれば、研修にも人が訪れ町の活性化にもつながる」と桑原社長は締めくくった。

 



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