人材確保・育成

建設産業における労働者賃金の現状

技能労働者の賃金適正化を実現するためにやるべきことは?

全国建設労働組合総連合 中央執行委員長 三浦 一男

 全産業労働者の平均年収が約530万円といわれる中、建設産業における技能労働者の賃金の実態は、非常に厳しいものとなっています。そして、それが本産業への若者の就労意識を減退、あるいは喪失させているといっても過言ではありません。そこで今回の特集では、本産業に関係が深い有識者、団体幹部の方などに、技能労働者の賃金の現状と課題、今後の展望などを伺いました。

現状と課題4|労働組合|技能労働者の賃金適正化を実現するためにやるべきことは?


大工職の全現場での平均賃金は1万4,723円


三浦委員長

三浦委員長

 2014年5月~14年7月を調査期間とした全建総連賃金実態調査は、37県連・組合から11万2,700人(2013年10万9,592人)のデータ(エクセル形式)提供をいただき、集計結果をまとめることができました。
 大工職と各職で分類し、「町場・工務店現場」「地元住販・不動産会社などの建売現場」「大手プレハブ、住宅会社の現場」「ゼネコンの野丁場の現場」の4つの現場形態で、就労日数、労働時間、賃金、2013年の年収などの平均をとり、過年度と対比などしました。
 2013年の賃金調査では、1日の賃金平均はほぼ同額、あるいは減少という結果で、2年連続で引き上げられた設計労務単価も技能労働者不足の状況も、仲間の賃金にほとんど反映していない実態が明らかになりました。こうした状況を打開するため、全建総連は全国で賃金引き上げの集会や行動に取り組み、また消費税引き上げのなかで、2014年こそ「大幅引き上げ」が期待されていました。
 今回の調査では、大工職(一人親方)で全ての丁場で上昇、大工職(常用・手間請)も野丁場の現場で上昇が見られました。その一方で、各職(常用・手間請)で減少に、各職(一人親方)も建売りの現場で減少という結果になりました。
 見習工や高齢の組合員のデータを除く、25歳から64歳までのデータを集計したところ、大工職(常用・手間請)の全現場での平均賃金は1万4,723円で、2013年の1万4,517円より206円(1.42%)の微増ですが、「ゼネコンの野丁場の現場」に限れば、2013年の1万4,507円から1万5,354円に、847円(5.84%)上昇しています。

「型枠大工」は首都圏で1,207円増「鉄筋工」は同1,321円増


 また、大工職(一人親方)では、「大手プレハブ、住宅会社の現場」で1万5,087円から1万5,985円に898円(5.95%)上昇、「ゼネコンの野丁場の現場」では1万4,273円から1万5,701円に1,428円(10.00%)と大きく上昇しています。「今年に入って賃金額を上げた」と回答した事業主(大工・工務店)も2013年の408人(有効回答中14.20%)から736人(同21.08%)に増加しています。
 一方、各職(常用・手間請)の賃金では、「型枠大工」は首都圏で1,207円増、首都圏以外で502円増、「鉄筋工」は首都圏で1,321円増、「鳶・解体・基礎・杭打」は首都圏以外で462円増となりました。事業主(各職)の回答では、2,883人(27.83%)が「今年に入って賃金額を上げた」としており、2013年の1,418人(20.10%)より増え、事業主(大工・工務店)を上回っています。
 業界団体で社会保険未加入対策や技能労働者育成に取り組んでいる職種で、設計労務単価引き上げの影響が出始めていると考えています。しかし、子供を育てている40‐44歳の各職の賃金を見ますと、首都圏で17,055円(185円増)、首都圏以外で14,553円(637円増)であり、若年層が建設産業に入りたいという賃金とはいえません。技能労働者の賃金を適正にしていくためには、今後も国が設計労務単価の引き上げ、業界団体や全建総連による建設技能労働者の賃金引き上げの取り組みが必要です。




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