基金の活動

特集 建築施工管理CPD制度

建築施工管理CPD制度|建築施工管理CPD制度の今後の展開

建築施工管理CPD制度 運営委員会 委員長
東洋大学工学部建築学科 教授 浦江 真人 氏

 建設業界の人材育成は、これまでOJT(現場経験を通じた習得訓練)を中心に各社が時間をかけて実施してきました。しかし、この10年ほどの厳しい経営環境にあって、人材育成にコストや時間をかける余裕がなく、また若手とベテランの年齢差も大きく離れ、技術の伝承が難しい状況にあります。こうした中、建築施工管理CPD制度に注目が集まっています。

 

建築施工管理CPD制度の今後の展開



いかにプログラムの質を高めていくかがポイント

浦江氏

浦江氏

 他産業との若手就業者の争奪戦が激化しつつあり、採用できたとしても、今度は若手技術者をどう育て定着させるか―これが、業界全体が抱えている喫緊の課題です。こうした中、建築施工管理技術者等を対象としたCPD制度の運用開始は非常に意義があります。
 CPD制度において重要なのは、プログラムの質だと思います。いかにプログラムを充実させていくか。多くの優秀なプロバイダー(講習実施者・教材提供者)に、より良いプログラムづくりを働きかけていく必要があります。ただし、施工管理技術者に求められるスキルの範囲は広いので、その分プログラムづくりも工夫が求められます。施工技術や品質管理などに関することはもちろんですが、コミュニケーション能力や人間力といったジャンルまで認定するのか、その点は意見の分かれるところです。
 また、研修では指導する側に経験と高い能力が必要です。講師については、ベテランやOBが登録された人材バンクを作り、研修に応じて派遣するのも一つの方法でしょう。建設業界には、富士教育訓練センターがあります。そのような施設を利用した実践型の研修もプログラムとして提供できるといいでしょう。


受講する側の利便性を考えた分野別・クラス分けも必要

 もう一つ重要なことは、受講者のその後のフォローです。例えば、満足度調査のようなものをぜひ実施したい。受講した成果や評価などの生の声を集めて、それをホームページ上などでオープンにしていけば、プロバイダーがより良いものを作るための参考にもなります。人気ランキングでもいいし、受講者数を公表してもいいでしょう。利用者のニーズを汲み取って、プロバイダーにフィードバックし、プログラムに反映させていく。それが仕組みとしてできれば理想的です。
 プログラムの提供に際しては、実務経験の階層ごとにプログラムの整理が必要です。初級・中級・上級などにクラス分けや難易度分けをして、さらに分野別に細分化されていると、受講する側の利便性が高まります。「キャリアアップ」や「キャリアパス」をサポートするような仕組みもあればいいと思います。
 CPDの単位については、単なるビジネス上の利点だけでなく、技術者個人の現状のスキルや能力レベルを受講履歴によって「第三者的に評価」する仕組みも検討していきたいです。


人材育成の中核的な役割

 この制度が若年者の入職促進にも利用されるといいですね。建設業に入ってもすぐ離職する人が多くいます。業界に入る前に仕事の内容を知り、興味を持つきっかけにもなり、入職後のスキルアップを図ることができれば、結果として定着率アップにつながっていくのではないかと思います。
 このCPD制度により、業界全体で施工管理技術者の技術力が向上することを期待しています。そのためには、ここでお話しした様々な仕組みを含めた人材育成の中核的センターが必要です。CPD制度はその大きな柱として位置づけられるのではないでしょうか。




 




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